美術館堆肥化計画2023 Museum Composting Project 2023
地域と美術館をつなぐ「堆肥化(アート実践)」 それは下北半島に新たな血脈を通し、 やがてくる地域の姿を予祝する-
本事業は青森県立美術館とアーティストが地域と協働することを通じて、地域の魅力を様々に発掘・発信するアートプロジェクトです。そんな美術館発のアート実践を、土壌環境をととのえ作物の成長を支える「堆肥」になぞらえ、プロジェクト名を「美術館堆肥化計画」としました。
下北半島の生を予祝する
第三弾となる2023年度は下北半島域に出張し、地域の「自然」や「生活文化」を取り上げます。太平洋~津軽海峡~陸奥湾に囲まれた「まさかり」「王冠」のような形の下北半島には、1億5000万年前からの日本列島形成の歴史が刻まれています。海と大地の多様なあり方が混ざりあい、渦まくこの地は、そこに住まう人や生きものたちの物心両面に影響し続け、恐山をはじめとした独特の文化や生を育んできました。それらは特に近代以降、「未開の生活」として中央からの偏見を含む視線にさらされ、消費される一面がありました。
しかしそんな視線をも養分として、この地に集い・生きることの意味をアートでもってときほぐし、形にしなおすことはできないか。そうすることで「ここで・あるがまま(自然)に・生きる」感覚を肯定し、下北半島に息づく全てのものたちの、やがてくる生を予祝(よしゅく)すること。そこに「美術館堆肥化計画2023」の目的があります。
下北半島の日常がアートに変わる/美術館の堆肥化を求めて
むつ市のマエダ本店を会場にした美術館プロモーション&事業ビジター展示「旅するケンビ」、参加アーティストらによる下北半島域の様々な場所を会場とした現代アート、写真や描画、手芸作品の展示やワークショップを展開する「耕すケンビ 下北編:脈動する」といったアート実践。下北半島内においては、かつてない規模で行われる今回のアートプロジェクト展開を通して下北半島での日常を変容させ、美術館を、人が生きることをその足元から更新させる経験の枠組みへと堆肥化させようとする「美術館堆肥化計画2023」にご期待ください。
お知らせ
追肥「NUMANの恩がえし ー0円ショップ in 青森県立美術館」のお知らせ
追肥「テラヨンカーズとミニ四駆をつくって走らせよう!」(6月開催分)のお知らせ
追肥「糞土師フン談+映画『うんこと死体の復権』先行上映会」のお知らせ
開催概要
会期(旅するケンビ・耕すケンビ)
2023年9月23日(土祝)-11月3日(金祝)
※会期中無休・観覧無料(全会場ともに)
内容
旅するケンビ〈美術館PR&事業ビジター展示〉
[会 場]マエダ本店
[営業時間] 9:00-21:00(ただし食料品以外は10:00-20:00)
耕すケンビ 下北編:脈動する〈アート展示等〉
(1) アート・ユーザー・カンファレンス(アートコレクティブ)
[会 場]大間鉄道メモリアルロードとその周辺(風間浦村)
(2) 小田 香(フィルムメーカー/アーティスト)
[会 場]①尻屋崎公園ビジターハウス(東通村) ②釜臥山展望台(むつ市)
[営業時間]①9:00-17:00 ②8:30-21:30
(3)イタズラ・ヌーマン(縫いもの集団)
[会 場]①マエダ本店内各所 ②古民家カネシチ+(佐井村)
[営業時間]①9:00-21:00(ただし食料品以外は10:00-20:00) ②9:00-19:00
会期(総合成果展示_仮称)
2024年2月10日(土)-6月23日(日)
内容
総合成果展示(仮称)
[会 場]青森県立美術館
[開館時間]9:30-17:00(入館は16:30まで) [休 館 日]毎月第2、第4月曜日を予定
[観 覧 料]一般510(410)円、高大生300(240)円、小中学生100(80)円
※( )内20名以上の団体料金 ※心身に障がいのある方と付添者1名は無料。
主催
青森県立美術館
お問い合せ
青森県立美術館
〒038-0021 青森市安田近野185
TEL 017-783-3000 FAX 017-783-5244
MAIL bijutsukan@pref.aomori.aomori.lg.jp
各会場アクセス情報
マエダ本店
むつ市小川町2-4-8 / Tel. 0175-22-8333
●JR大湊線「下北駅」から車で約10分
釜臥山展望台
むつ市大平字荒川山2
●JR大湊線「下北駅」から車で約40分
尻屋崎公園ビジターハウス
下北郡東通村尻屋ケシ子山37-20
●JR大湊線「下北駅」から車で約40分
●むつ市内~尻屋をつなぐ予約型タクシーあり(片道1400円程度)。
12:00(14:00)「旧むつバスターミナル」周辺発→12:40(14:40)「尻屋」周辺着
13:00(15:00)「尻屋」周辺発→13:40(15:40)「旧むつバスターミナル」周辺着
※乗車希望の方は乗車予定の前日15時までに電話予約(株式会社尻屋観光 0175-28-5554)
大間鉄道メモリアルロード
下北郡風間浦村下風呂字下風呂41 / Tel. 0175-35-2111 ※風間浦村役場産業建設課
●JR大湊線「下北駅」から車で約50分
●下北交通バス【行き】「下北駅」バス停から佐井車庫行き「下風呂温泉」下車
11:15、12:55(土日祝のみ)、14:30「下北駅」発→12:30、14:00(土日祝のみ)、15:35「下風呂温泉」着
下北交通バス【帰り】「下風呂温泉」バス停から下北行き「下北駅」下車
08:32、10:20、12:37、16:47「下風呂温泉」発→09:45、11:30、13:45、17:55「下北駅」着
※車は近隣の「下風呂温泉 海峡の湯」に駐車してください。
同施設では展示マップを配布予定。施設の営業時間等は下記のとおりです
■下風呂温泉 海峡の湯(下北郡風間浦村下風呂字下風呂71-1)
営業時間=【10/31まで】7:00-20:30 【11/1から】8:00-20:30 定休日=毎月第2・4火曜日
古民家カネシチ+
下北郡佐井村佐井字大佐井40 / Tel. 0175-38-4108 ※株式会社コメイチ
●JR大湊線「下北駅」から車で約75分
●下北交通バス【行き】「下北駅」バス停から佐井車庫行き「佐井」下車(徒歩約1分)
11:15、12:55(土日祝のみ)、14:30「下北駅」発→13:33、15:03(土日祝のみ)、16:38「佐井」着
下北交通バス【帰り】「佐井」バス停から下北行き「下北駅」下車
07:28、09:18、11:33、15:43「佐井」発→09:45、11:30、13:45、17:55「下北駅」着
○公共交通機関の運行時刻は変更となる場合があります。
○公共交通機関で全会場を巡るには2~3日程度かかります。
下北半島内ではレンタカー等での移動をお勧めいたします。
展示内容
まずここへ↓
旅するケンビ〈美術館PR&事業ビジター展示〉
事業を体験されたい方はまずこちらへ。マエダ本店1階のパブリックスペースで事業参加アーティストの下北半島域各エリアでの展開を紹介する展示を行うほか、2階に会場を設けて県立美術館(ケンビ)の建築の一部であるネオンサインや制服、コレクション作品に関する映像や写真を紹介します。
アーティストたちと地域のであい↓
耕すケンビ 下北編:脈動する〈アート展示等〉
参加作家3組が下北半島域を舞台に作品の制作や展示、ワークショップを開催します。地域に息づく自然や生活文化をヒントに、流動化と混迷の一途をたどる今日の世界を力強く生きなおす場を地域に投企することを試みます。
(1) アート・ユーザー・カンファレンス
2021年2022年に引き続き、世界全体をミュージアムとして捉えるプロジェクト「ジェネラル・ミュージアム」の一環として「ジェネラル・ミュージアム|墓」を展開します。むつ市~風間浦村~大間町にまたがる路線として構想され、戦中の工事中断以降、現在まで遺構が残る「大間鉄道」。その遺構を過去の建造物としてだけでなく、過去における未来(未完成)を宿す遺構として注目し、モニュメント(墓)のあり方を問い直します。具体的には風間浦村の大間鉄道メモリアルロードとその周辺に画像生成AIを用いた抽象的なモニュメントのイメージに「Under Construction 工事中」などの言葉を添えた複数種類の看板を設営します。画像を生成させるためのAIへのプログラムをブラックボックスにし抽象的なイメージを生成させることに加え、さらに複数のイメージを生成させ並列させることで、歴史や地域への解釈を単一的に象徴させるモニュメントではなく、永続的な思索と想像へと投げかけられた多様な「未完成」の形を提示していきます。
An Art User Conference=2014年設立。創作や研究、キュレーションやマネジメント、鑑賞といったアートをめぐる様々な関係者、そしてユーザーの声により運営されるアートコレクティブ。作者や鑑賞者、批評家、キュレーターなどと異なる「user(使い手)」という立場から、既存の芸術概念の問い直しに基づくネオ・コンセプチュアルな作品やアートプロジェクトを展開。主なプロジェクトや展覧会として、アースワークの先駆者である故R.スミッソンを「作者」として「架空に使用」し、作品を展開した「宮城でのアース・プロジェクト-Robert Smithson without Robert Smithson」(風の沢ミュージアム, 宮城, 2015)。過去と未来の事物を芸術資源として同等に使用する「未来芸術家列伝」。東京都八王子の住宅街に面した森で新たな公共圏=ミュージアムを構想、実践するべく同時開催されたジェネラル・ミュージアムによるコレクション展「コラージュ、カムフラージュ」+企画展「dis/cover」(2022)等。
(2) 小田香
下北半島の在来馬である寒立馬を主題とした作品制作とその展示「寒立馬 視線の遠近」をとおして、「他者と生きること」を私たちが直接経験しなおすための場所をつくります。具体的には寒立馬の放牧場所にほど近い尻屋崎公園ビジターハウスで小田が撮影した尻屋埼灯台付近の今の風景写真を展示します。また釜臥山展望台では尻屋崎を遠望できるガラス窓に馬の絵を描き展示し、既存のスピーカーシステムを用いて寒立馬の足音を素材とした音の作品を放送します(各日9:00~17:00)。寒立馬の存在に強く惹かれた小田による今回の取り組みは、私たちが300年続く寒立馬の生を尻屋崎という近くから見ること/釜臥山という遠くから想像することの間から、他者とともに今ここを生きるための「距離」を手さぐる方法としてのイメージ実践といえます。
おだ・かおり=イメージと音を介して「人の記憶のありか」「人間とは何か」を探求するフィルムメーカー/アーティスト。1987年大阪府生まれ。米国ホリンズ大学教養学部映画コース修了。2016年映画監督タル・ベーラ指揮によるfilm.factory修了(第1期生)。2015年ボスニアの炭鉱を主題とした映画『鉱ARAGANE』(2015)で山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門特別賞受賞。2019年ユカタン半島の洞窟泉を撮影した映画『セノーテ』で2020年大島渚賞受賞、芸術選奨新人賞受賞。映画制作と並行して、カメラを向けた土地や人とのつながりを保つための絵画をはじめとした作品制作を行う。主な展覧会に「特集 小田香 光をうつして-映画と絵画」(まなびあテラス、フォーラム東根 山形 2021)、「第14回恵比寿映像祭:スペクタクル後 AFTER THE SPECTACLE」(東京都写真美術館 2022)等。
(3) イタズラ・ヌーマン
イタズラ・ヌーマンによる展示とワークショップを、むつ市と佐井村で展開します。役場や地域ゆかりの手芸サークルや作家らとの協働により「タンスの肥やし」になっている古着や布類を収集、それらをリメイクしてできた作品をマエダ本店や古民家カネシチ+既存の要素を組み合わせる形で展示し、作品制作ワークショップを通じて地域に公開・流通させる活動「メダルをサムへ」を展開します。人と人、人と地域社会の関係を結びなおす術や物語を提示しようとするヌーマンの今回の活動は、地域に対する「おせっかい(meddlesome)」じみたものにみえるかもしれません。しかしそんな制作と生活をはみ出し、まぜこぜに縫いあわせようとするパワフルかつ、それでいてひそやかな本活動は、下北半島に血を通わせ、ここで「ともに・生きること」を予祝する場につながることでしょう。
Itazura NUMAN=縫いもの集団。「みんなで集まって、話しながら手を動かせる場所があったらいいなというアイデア」をもとに2017年ごろから活動を行う。アナキズムとDIYを主なテーマとして書籍やzine、グッズを扱うショップ「イレギュラー・リズム・アサイラム」(新宿)に毎週集まり、縫いものをしたりしなかったりしながら活動を継続中。世界のどこかの国々で縫製された安価な衣服が大量に消費廃棄される現状への疑問をもとに、アイデアや方法を集まった人と共有しながら廃棄される寸前の布や服をリメイクしながらファッションを楽しむ活動にも取り組む。主な展示やイベントに「+Itazura NUMAN展」(IRREGULAR RHYTHM ASYLUM, 2018)、「Itazura NUMAN workshop in Studio Parlor !!!」(Studio Parlor, 宮城, 2022)等。
総合成果展示(仮称)
2023年度コレクション展第4期~2024年度コレクション展第1期の中で開催。秋に地域会場で展開されたアーティストによる制作作品や現地で出会った作品や資料、ワークショップの内容などを組み合わせて展示するほか、2021年から続く「美術館堆肥化計画」の今日に至る成果を紹介することで、地域にひらかれ、様々な連なりの中で生きることが形になった場所=堆肥となった県立美術館の姿を展示します。