常設展(11月12日~2月2日)

2013年11月12日(火) ━ 2014年2月2日(日)

コレクション展 終了
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常設展(11月12日~2月2日)

青森県美+弘前市博コレクション 「工藤甲人 春を待つ」、近藤悠三 器を造り、器に描く ほか

開催概要

会期

2013年11月12日~2014年2月2日

展示内容

展示室H |特別展示 寺山修司×横山宏:2人の箱男

「無人島」というコンセプトで寺山修司の演劇に頻繁に登場する「箱」。学生時代に天井桟敷の舞台を手伝い、その後、イラスト+模型によって『マシーネンクリーガー』という独創的な世界観を構築した横山宏がプロデュースするプラモデルの「箱」。本展は「箱」という装置が持つ様々な機能について考察するとともに、『マシーネンクリーガー』のデザイン、造形性の魅力についても紹介します。

 

横山宏トークショー&サイン会
日時:11月16日(土)13:30~15:00
会場:展示室H
参加料:無料(ただし常設展観覧チケットが必要です)

横山宏《ラプター》パッケージ
(WAVE製キット)
2010年
© KOW YOKOYAMA

展示室IJKLM|特集展示1.青森県美+弘前市博コレクション 工藤甲人 春を待つ

北国の長く厳しい冬、深い雪の中で春を待ち、春を恋う想い。そして春の訪れに感じる生命が湧き上がるような喜び。故郷、津軽を創造の源泉として独自の作品世界を築き、日本画に斬新な表現を切り拓いた工藤甲人(1915-2011)は、弘前の農家に生まれ、身近な自然の小さな草花や生き物、或いは家の中の畳の目や壁のシミをじっと見つめて想像の世界に遊び、詩や文学に熱中した少年時代を送りました。やがて画家を目指して上京。働きながら絵を学び、公募展への入選も果たしますが、戦争により招集を受け画業は中断。作品も失われてしまいますが、終戦後、故郷で農作業に従事しながら再出発を期し、後に神奈川県平塚市に居を構えて創作活動を展開していきます。今回は、弘前市立博物館の協力を得て、1950年代から2011年の未完の絶筆まで、「四季」「聖鳥」「春」「生命」などのキーワードとともにその創作の軌跡を辿ります。

工藤甲人
《渇仰(春)》 1975年
紙・着彩

工藤甲人
《休息(冬)》 1975年
紙・着彩

展示室OPQ,N |特集展示2.近藤悠三 器を造り、器に描く

近藤悠三(1902-1985)は京都に生まれ、1977年、染付の技法で無形重要文化財保持者 (人間国宝) の認定を受け、日本の陶芸界に大きな足跡を残しました。その作風は豪放、雄勁で、自然の草木果実や山々などのモチーフを絵画的な筆致と濃淡の諧調によって表現しています。
青森県立美術館は、作家と親交のあった八戸市出身の故中村正信氏から寄贈を受けた近藤悠三の一大コレクションを有しています。作家自身が一番の出来と認めた名品の数々を散逸させることなく未来に伝え、多くの人々に観てもらいたいという中村氏の願いとともに、故郷、青森の美術館に託されたものです。94件(150点)に及ぶ壺、皿、瓢瓶、茶碗、杯など多様な器は、シンプルな形状の中に心地よいのびやかさと美しさを湛え、そこに染付、釉裏紅、赤絵、金彩など多彩な技法によって描かれた梅や葡萄や薊はみずみずしい生命感を、富士や浅間などの名山は雄大さを感じさせます。
近藤は、轆轤(ろくろ)を挽いて器をつくる際、その器にどんな絵を描くかを考えて形を造っていったといいます。成形された器に描かれるモチーフはその形状と絶妙に一体化し、三次元の器と二次元の絵画が見事に融合した造形が生まれるのです。伝統を学び、その技を極めることから、逆に既存の枠にとらわれない自由な発想で新たな境地を切り拓いた近藤の造形世界をご紹介します。

 

県美土曜ゼミ「伝統から生み出す独創-弘前出身の日本画家と京都出身の陶芸家」
11月16日 13:30-15:00
場 所:青森県立美術館内(当日、1 階受付にて会場をご案内します)
参加料:無料(ただし常設展観覧チケットが必要です)

近藤悠三
《山釉裏紅壺(四国屋島五剣山》
1966年 磁器・釉裏紅

近藤悠三
《梅染付金彩大皿》
1976年 磁器・染付、金彩

棟方志功展示室|棟方の妃神図

棟方は人間味あふれる神仏の姿を数多く描いています。神仏は、棟方が最も好み得意としたテーマであり、題材には仏教の経典や詩歌、文学なども取り入れて様々な姿の神仏を描き表しました。
1955年にサンパウロ・ビエンナーレ、翌56年にヴェネツィア・ビエンナーレに出品し、二度の受賞を果たした棟方の代表作《二菩薩釈迦十大弟子》は、興福寺の十大弟子にヒントを得て制作したものですが、この作品について棟方は「仏に近づきつつある人間の姿を描いた」と語り、実に表情豊かに描いています。また、神仏のなかでも棟方が特に好んで描いたのが女性の姿をした菩薩像で、板画《女人観世音板画巻》では岡本かの子の詩を題材に、仏のようにも生身の人間のようにもみえるふくよかな女性像を描いています。
このたびの展示では、女人を描いた四季のシリーズ《女人十二ヶ月板画》などの板画作品のほか、《玄妙図》、《双妃の図》などの鮮やかな肉筆画作品を紹介します。

展示室G|棟方志功 欧米の風景

1959年、棟方志功はアメリカのロックフェラー財団とジャパン・ソサエティの招聘を受けて初めて渡米しました。約9ヶ月間の滞米中、ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、シアトル、サンフランシスコなど各地の大学で板画の講義を行ったり、ニューヨークのギャラリーで個展を開催するなど精力的に活動しました。夏休みにはヨーロッパにも足を延ばし、フランス、オランダ、スイス、イタリア、スペインを訪れ、各地の美術館を見学したり、フランス・オーヴェールにゴッホの墓を訪ねています。その後、1965年、1967年、1974年と生涯で合わせて四度渡米し、日本の木版画の魅力を伝えるとともに、海外で得た感動を自身の作品に昇華しています。
このたびの展示では、板画《巴里セーヌ河の柵》などの風景図や、ルーブル美術館で見たニケ像をモチーフにした板画《賜顔の柵》、アメリカで初めて制作に取り組んだ石版画作品を紹介します。棟方の描いた欧米の風景をご覧ください。

展示室F|奈良美智 インスタレーション『A to Z Memorial Dogマスター型』『ニュー・ソウルハウス』 成田亨 怪獣デザインの美学

奈良美智 インスタレーション『A to Z Memorial Dogマスター型』『ニュー・ソウルハウス』
国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、160点を超えるそのコレクションの多くは、1988年から2000年まで、奈良が滞在したドイツで制作されたものです。
この展示室では、創作ユニット・grafとのコラボレーションにより、2006年に制作した小屋の作品の一つ、《ニュー・ソウルハウス》を中心に、当館のコレクションや作家からの寄託作品を展示しています。

 

成田亨 怪獣デザインの美学
成田亨(1929−2002)は、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」という初期ウルトラシリーズのヒーロー、怪獣、宇宙人、メカをデザインし、日本の戦後文化に大きな影響を与えた彫刻家兼特撮美術監督です。美術家としての高い感性によってデザインされたヒーロー、怪獣は、モダンアートの成果をはじめ、文化遺産や自然界に存在する動植物を引用して生み出される形のおもしろさが特徴です。誰もが見覚えのあるモチーフを引用しつつ、そこから「フォルムの意外性」を打ち出していくというその一貫した手法からは成田の揺らぐことのない芸術的信念が読みとれるでしょう。

アレコホール|マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の背景画

青森県は1994年に、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール (1887-1985) が制作した全4幕から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
ユダヤ人のシャガールは1941年、ナチの迫害から逃れるためにアメリカへ亡命します。バレエ「アレコ」の舞台美術は、画家がこの新大陸の地で手がけた初の大仕事でした。
1942年に初演をむかえたバレエ「アレコ」の振付を担当したのは、ロシア人ダンサーで、バレエ・リュスで活躍したレオニード・マシーン。音楽には、ピョートル・チャイコフスキーによるイ短調ピアノ三重奏曲をオーケストラ用に編曲したものが用いられ、ストーリーはアレクサンドル・プーシキンの叙情詩『ジプシー』を原作としていました。
シャガールは祖国ロシアの文化の粋を結集したこの企画に夢中になり、たくましい想像力と類いまれな色彩感覚によって、魅力あふれる舞台に仕上げたのです。