AOMORI GOKAN アートフェス 2024 後期コレクション展 生誕100年・没後60年 小島一郎 リターンズ Kojima Ichiro Returns

2024年7月6日(土) ━ 9月29日(日)

コレクション展 開催中
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AOMORI GOKAN アートフェス 2024 後期コレクション展 生誕100年・没後60年 小島一郎 リターンズ Kojima Ichiro Returns

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 後期コレクション展 生誕100年・没後60年 小島一郎 リターンズ Kojima Ichiro Returns

1924(大正13)年青森市に生まれ、昭和30年代の津軽や下北を歩き、郷土に生きる人々への深い共感を印象的なモノクロームの世界に焼きつけた写真家・小島一郎(1924-1964)。今年は小島の生誕100年、没後60年にあたる節目の年です。青森県立美術館では、2009年の大規模な個展「小島一郎 北を撮る」以来15年ぶりに、2度目の回顧展を開催いたします。

明暗の豊かな階調の中に浮かび上がる津軽の雪原、緊張感あふれる白黒の形象に切り詰められた下北の漁村。被写体への深い解釈が生み出す独特の表現世界を通じて、小島の写真は観る者の心を強くゆさぶってきます。

また高度経済成長期に活躍した小島の写真には、急激な近代化の最中にある地方の農村・漁村の姿が、写真家の身体感覚とともに鮮烈に刻印されています。あの時代から私たちはいったい何を得て、何を失ったのでしょうか。

ここ青森に生を受けてから100年という時間の厚みの中で、小島一郎と再び出会います。

つがる市稲垣付近 1960年 24.5×16.2cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

つがる市稲垣付近 1960年 24.5×16.2cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

下北郡大間町 1961年頃 24.1×16.3cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

下北郡大間町 1961年頃 24.1×16.3cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

《東京の夕日》 1961-63年 24.2×16.6cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

《東京の夕日》 1961-63年 24.2×16.6cm ゼラチン・シルバー・プリント 青森県立美術館蔵

「宮本常一が見た下北半島」

本展最後の展示室では、AOMORI GOKAN アートフェス 2024のテーマ「かさなりとまじわり」にちなみ、「宮本常一が見た下北半島」を実施します。日本を代表する民俗学者の宮本常一(みやもと・つねいち、1907-1981)は、小島とほぼ同時代に<写真家>とは別の角度から青森の土地にレンズを向けていました。戦前から戦後にかけてたびたび下北半島を訪れていた宮本は、その著書『私の日本地図 3 下北半島』(同友館、1967年)の中で、言葉と写真によって下北の人々の生活を丹念に記録し、地方の暮らしや文化について深い考察を巡らせています。

小島一郎の下北半島と宮本常一の下北半島、同じ昭和30年代後半の同地の写真の「かさなりとまじわり」から、写真の可能性と地方の未来について考えます。

宮本常一撮影「牛滝の若者たち ―祭がすぎたら北海道へ稼ぎにゆくという」1963年 提供: 宮本常一記念館

宮本常一撮影「牛滝の若者たち ―祭がすぎたら北海道へ稼ぎにゆくという」1963年 提供: 宮本常一記念館

【小島一郎 こじま・いちろう】

1924(大正13)年、青森市大町(現本町)6丁目に、県内で最も古い写真材料商を営む家の長男として生まれる。父・平八郎は写真家で、青森県写真材料商組合の初代組合長を務めた県写真界の草分け。1944(昭和19)年、入隊し、中国各地を転戦。二年後に復員し、家業の材料商を継ぐ。1954年、平八郎が創始した写真家のグループ「北陽会」の会員となり、本格的に写真を始める。1956年、この頃日本の報道写真の先駆者・名取洋之助と出会い大きな影響を受ける。1958年、初個展「津軽」(小西六ギャラリー・東京)。1961年に上京し、フリーのカメラマンに。《下北の荒海》で「カメラ芸術」新人賞受賞。1962年、第2回個展「凍ばれる」(富士フォトサロン・東京)。1963年、新潮社から『津軽 ―詩・文・写真集―』(文・石坂洋次郎、詩・高木恭造)が刊行される。年末から翌年にかけての冬季に行なった北海道での撮影旅行中に体調を崩す。1964年7月、青森市内で急逝(没年齢39歳)。

小島一郎

小島一郎

【宮本常一 みやもと・つねいち】

1907(明治40)年、山口県大島郡家室(かむろ)西方(にしがた)村(現周防大島町)に生まれる。1923(大正12)年、大阪逓信講習所入所。1926年に大阪府天王寺師範学校に入学。翌年に卒業し、大阪府下の小学校で教員を務める。その頃雑誌『旅と伝説』を通じて民間伝承に興味を抱く。1934年に柳田国男と、翌年には生涯の師となる渋沢敬三と出会う。1936(昭和14)年、渋沢が主宰するアチック・ミューゼアム(現神奈川大学日本常民文化研究所)の所員となり、57歳で武蔵野美術大学に奉職するまで、在野の民俗学者として、全国の離島や農山漁村などをくまなく歩き、その土地に暮らす民衆の生活を記録した。1966年には日本観光文化研究所を設立、所長に就任し後進の育成に努めた。1967年までに9度にわたり青森県下北半島を訪れており、それらのフィールドワークにもとづく記録や考察は『私の日本地図3 下北半島』(同友館、1967年)にまとめられている。1977年、『宮本常一著作集』第1期25巻(未来社)で今和次郎賞受賞(日本生活学会)。1981年に73歳で逝去。主著に、『忘れられた日本人』(未来社、1960年)、『日本の離島』(未来社、1961年)などがある。宮本が遺した蔵書、ノート、写真等の膨大な資料は、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)が保管している。

下北での宮本常一 提供: 宮本常一記念館

下北での宮本常一 提供: 宮本常一記念館

開催概要

会期

2024年7月6日(土)~9月29日(日)

休館日

毎月第2・第4月曜(この日が祝日の場合はその翌日)

開館時間

9:30 – 17:00 (入館は16:30まで)

★7月27日(土)、8月10日(土)、9月21日(土)はナイトミュージアムにつき20:00まで開館(入館は19:30まで)

会場

青森県立美術館 地下1階展示室

観覧料

一般900(700)円、高大生500(400)円、小中学生100(80)円

※( )は20名以上の団体料金および9/1までのAOMORI GOKAN アートフェス 2024 公式ガイドブック特典「スタンプラリー&パスポート」提示割引料金

※ 心身に障がいのある方と付添者1名は無料

主催

青森県立美術館

協力

小島弘子、青森市教育委員会、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)、みずのわ出版、青森県立郷土館

関連企画

講演会

小島一郎の生前に発行された唯一の写真集『津軽』(新潮社、1963年)には小島の写真だけでなく同郷の小説家・石坂洋次郎による散文、詩人・高木恭造による方言詩も編まれています。『津軽』の写真と言葉に秘められたものとはなにか。日本近代文学がご専門の森岡卓司先生が読み解きます。

 

2024年8月11日(日) 14:00-15:30
「詩・文・写真集『津軽』を読む」
講師: 森岡卓司氏(山形大学人文社会科学部教授)
場所: 青森県立美術館シアター
入場無料・事前申込不要

 

■森岡卓司(もりおか たかし) 山形大学人文社会科学部教授
1972年兵庫県神戸市生まれ。2003年、東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。山形短期大学講師、山形大学人文学部准教授等を経て現職。日本比較文学会理事、日本近代文学会評議員。主たる共編著に、『近代の夢と知性 文学・思想の昭和一〇年前後(1925〜1945)』(翰林書房 2000年10月)、『問題としての「アメリカ」 比較文学・比較文化の視点から』(晃洋書房 2020年8月)等。谷崎潤一郎研究から出発したが、2010年ころから東北を中心にした地方と文学との関わり、1940年
代に地方で展開された文化運動を研究の中心的なテーマにしており、関連の共編著として日本近代文学会東北支部編『東北近代文学事典』(勉誠出版 2013年5月)、『一九四〇年代の〈東北〉表象 文学・文化運動・地方雑誌』(東北大学出版会 2018年10月)など。講演内容に関連する共編著として石澤靖典・森岡卓司編『大正・昭和期における東北の写真文化』(山形大学人文社会科学部叢書13)(山形大学人文社会科学部附属映像文化研究所 2021年3月)。

座談会

「宮本常一の写真が伝えるもの」

開催中の「生誕100年・没後60年 小島一郎 リターンズ」展。本展最後の展示室では、AOMORI GOKAN アートフェス 2024のテーマ「かさなりとまじわり」にちなみ、「宮本常一が見た下北半島」というセクションを設けています。日本を代表する民俗学者の宮本常一(みやもと・つねいち、1907-1981)は、小島とほぼ同時代にいわゆる<写真家>とは別の角度から青森の土地にレンズを向けています。戦前から戦後にかけてたびたび下北半島を訪れていた宮本は、そのフィールドワークの中から、写真と言葉によって下北の人々の生活を丹念に記録しています。

宮本常一の故郷、山口県の周防大島から、宮本常一記念館の学芸員・徳毛敦洋氏、宮本の書籍を多数出版してきた「みずのわ出版」の柳原一徳氏をお招きし、青森県立郷土館で民俗を担当する小山隆秀氏をまじえて、宮本常一の下北半島の写真は、今、私たちに何を伝えているのか、語り合います。

 

2024年9月7日(土)

14:00-15:30 (開場 13:30)

 

参加者:

柳原一徳氏(みずのわ出版)

徳毛敦洋氏(宮本常一記念館学芸員)

小山隆秀氏(青森県立郷土館学芸課副課長・学芸主幹)

高橋しげみ(青森県立美術館学芸主幹)

 

場所: 青森県立美術館 1F スタジオ

★入場無料・事前申込不要

 

【登壇者プロフィール】

 

柳原一徳(やなぎはら・いっとく)

1969年兵庫県神戸市生まれ。1990年日本写真専門学校卒業。奈良新聞と奈良テレビで記者職、主に部落差別、在日韓国朝鮮人、障碍者、労働運動、文化財を取材。解放出版社を経て1997年神戸でみずのわ出版創業。2011年山口県周防大島に移転。「宮本常一離島論集」「宮本常一ふるさと選書」など編集。みかん農家兼業。日本写真協会会員。「本とみかんと子育てと」で第37回農業ジャーナリスト賞特別賞、第35回地方出版文化功労賞奨励賞受賞。

 

徳毛敦洋(とくも・のぶひろ)

1983年広島県広島市生まれ。2009年広島大学大学院文学研究科修了。日本史学専攻で戦後の社会運動を専門とする。呉市史入船山記念館、八幡生涯学習のむら勤務を経て2018年より周防大島文化交流センター勤務。宮本常一、民俗学を担当。企画展「宮本常一、旅と鉄道」などを企画。

 

小山隆秀(おやま・たかひで)

1969年青森県弘前市生まれ。成城大学大学院文学研究科修了後、青森県内の中高教員、青森県史編さん室等を経て、現在、青森県立郷土館学芸課副課長・学芸主幹。研究テーマは、民間信仰、年中行事、妖怪、身体論等。主な論文に2017年「「伝統」の希求と創出」―青森県津軽地方のねぷた喧嘩習俗を事例として―」(『国立歴史民俗博物館研究報告第205集』)、2019年「来訪する神々-青森県内の事例報告-」(『青森県立郷土館研究紀要第43号』)等がある。

 

高橋しげみ(たかはし・しげみ)

1970年青森県大鰐町生まれ。1998年弘前大学大学院人文科学研究科を修了。1999年から青森県立美術館学芸員として戦後美術、写真などを担当。2009年「小島一郎―北を撮る―」、2016年「澤田教一:故郷と戦場」を企画。2017年日本写真協会学芸賞受賞。近年では「奈良美智: The Beginning Place ここから」展(2023-24)、開催中の「小島一郎 リターンズ」展を企画。