前回ご紹介いたしました、「芸術の青森」展の併設企画として好評開催中の「青い森に連れてって」ですが、今日は3つ目の展示室、津軽塗インスタレーションのご紹介です!
津軽塗は、漆を塗っては研ぎ、塗っては研ぎ、塗っては・・・・というような工程を40以上も重ねてやっと完成する、堅牢かつ優雅な塗りです。青森ではどの家にも必ずといっていいほど、津軽塗の箸やお椀や座卓などがあるのではないでしょうか?
津軽塗は元々、多種多様な塗模様が魅力でしたが、国の伝統工芸品として、津軽塗の代表的な塗り「唐塗」「ななこ塗」「紋紗塗」「錦塗」が指定されたことから、それ以外の塗りは影を潜め、今では無数の塗模様があったことを知っている人は多くありません。
けれど、青森の風土と職人魂が生んだ塗模様は、強く人を惹き付ける力を持っています。
今回のインスタレーションでは、現代の機能美とそれを支える伝統の技をテーマにしています。
「津軽塗伝統工芸士会」は、現代の津軽塗職人の中でも高い技術をもつ国の伝統工芸士27人による職人集団。名工といわれる方も所属しています。
その彼らと、現代の生活をみつめ、人と暮らし、モノとカタチを熟考してきたインダストリアルデザイナーの曽根眞佐子さんがタッグを組み生まれたのが、展示している「玄関のちょい掛け」です。
現代のマンション等の玄関は段差がほとんどなく、昔は上がり框に座ってしていた靴の着脱も一苦労。ちょいと腰掛ける小椅子があれば、とデザインされた、葉っぱ型の美しいフォルムは、玄関の顔ともなり得る品位を感じます。
昨日、東京から来てくださった曽根さんによると、ご自身のデザインの根幹には、青森県出身の今和次郎(1888-1973)の思想があるとのこと。
今和次郎は、現在の人の暮らし、行動、都市、ファッションなどに目を向け記録をとり続け、「現在」をもっと見つめ考えよと、「考古学」に対して「考現学」を提唱しました。
青森人の思想を基に東京のデザイナーが考え生まれたものが、津軽塗の技を受けて完成し、この青森に巡ってきた。運命的なものを感じてしまいました。
展示室の壁面には、18年前に制作された津軽塗の手板200枚をみることができます。手板は塗りの見本として、江戸時代から使われていたようです。
「板」という単純な形だからこそ、塗りの美しさ、バリエーションの豊富さ、微妙な色合いまで目に飛び込んできます!
一方、開催中の企画展「芸術の青森」では、江戸時代に津軽家が保有していた津軽塗の手板が展示されており、緻密さやモチーフの選び方、技法などの違いを見つけるのも楽しい!地元の方ほど「津軽塗ってこんなことができるんだ!」と舐めるように観ていきます。
「青い森に連れてって」は2月20日(日)まで。
まだご覧になっていない方は、ぜひお越し下さい!必見です!