コレクション展 2018-3

2018年7月14日(土) ━ 10月21日(日)

コレクション展 終了
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コレクション展 2018-3

「わだばゴッホになる」と芸術家を目指し、国際的な評価を得るまでに至った「板画家」・棟方志功、ウルトラシリーズなど特撮美術の分野で活躍した成田亨、多くの人に愛されている『11ぴきのねこ』を生んだ絵本作家・馬場のぼる、ベトナム戦争の報道写真でピュリツァー賞を受賞したカメラマン・澤田教一など、青森県ゆかりの個性的な作家たちによる傑作を展示します
また一部、本展期間内に開催される企画展「めがねと旅する美術展」に関連し、「めがね」というモチーフや「レンズ」を通した視覚に着目した作品も展示されています。

開催概要

会期

2018年7月14日(土)~10月21日(日)

展示内容

展示室L, M, N 棟方志功:こころの中の美を描く棟方志功の眼鏡 [展示作品数32点]

「眼病の棟方志功 目を剥(む)きて 猛然と彫(え)るよ 森羅万象」棟方に小説の挿絵を依頼するなど親交のあった谷崎潤一郎は、棟方の左眼が見えなくなったと聞いて心配しこの歌を届けました。棟方志功は幼い頃から近視のうえに視力が弱く、57歳の時には左眼を失明しています。「目が弱いわたくしは、モデルの身体の線も見えて来ないし、モデルも生涯使わないで行こう。こころの中に美が祭られているのだ。それを描くのだ。」と語り、心の眼で描いた棟方の理想の女性像は“棟方の美人画”として人気を博しました。また棟方は、「わたくしは写生を致しません。」とも語っています。そこには、写生によって自然を自然と同じように描くのではなく、絵の中に改めて生み出そうとする棟方の姿勢を読み取ることができます。合浦公園や八甲田など故郷青森の風景は棟方の心に焼き付けられ、晩年数多く描かれます。写生に頼らず絵としての自然を描き出す、それが棟方の美の表現方法でありました。
★展示室Lでは企画展「めがねと旅する美術展」と関連した小企画「棟方志功の眼鏡」を見ることができます。

棟方志功《御吉祥大辨財天御妃尊像図》
1966年
倭画、彩色・紙

展示室J 馬場のぼるのねこ  [展示作品数18点]

青森県三戸町出身の漫画家、馬場のぼるは、絵本『11ぴきのねこ』(こぐま社)シリーズの作者として広く知られています。一冊目の『11ぴきのねこ』は1967(昭和42)年に出版された作品ですが、誕生以来50年を越えた現在もなお、多くの子どもたちに愛され続けているロングセラー絵本となっています。今回の展示では、「ねこ」を主なテーマとしながらも、漫画や絵本の仕事という枠組みから少し離れて、作家が自由に制作した作品の数々を紹介します。それらの作品には、漫画や絵本に登場する同じ「ねこ」や動物でありながらも、作家自身の思い出になぞらえた情景や、作家が特に好んだモチーフが描かれており、馬場のぼるという作家の人間性をより身近に感じとることができるのではないでしょうか。
対象をじっくりと観察することによってその本質をとらえつつ、あたたかい眼差しとユーモアに満ちた作品世界を生涯描き続けた馬場のぼる。その普遍的な魅力の一端に触れていただければ幸いです。

展示室I 成田亨:特撮/怪獣  [展示作品数21点]

成田亨は、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」という初期ウルトラシリーズのヒーロー、怪獣、宇宙人、メカをデザインし、日本の戦後文化に大きな影響を与えた彫刻家兼特撮美術監督です。武蔵野美術学校研究科に在籍していた1954年、「ゴジラ」の製作に参加、そこで円谷英二と出会い、以降特撮美術の仕事も数多く手がけるようになります。1965年、東宝撮影所で円谷英二と再会し、「怪獣のデザインはすべて自分がやる」という条件のもと「ウルトラQ」の2クールから制作に参加、以降「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」までのシリーズに登場するヒーロー、怪獣、宇宙人、メカニック等のデザインを行いました。空間把握にすぐれた彫刻家としての資質は特撮美術の仕事にも活かされましたが、このコーナーでは成田亨が担当した映画「麻雀放浪記」のオープニングで使用されたセットを、当時のスタッフにより完全再現したものもあわせて展示いたします。ただ単に現実を縮小するのではなく、強い遠近法によるセットを組んだり、時には遠景に写真を配置したりと、映像となった時にもっともリアルに見えるようなアイデアを次々に投入していった成田の仕事は現在活躍している特撮美術家たちにも強い影響を与えています。

成田亨《ジャミラ》
1966年
ペン、水彩・紙

展示室H 澤田教一: 空からの攻撃 [展示作品数37点]

1936(昭和11)年に青森市に生まれた澤田教一は、1965 年、戦火の絶えないインドシナ半島に赴き、カメラマンとして活躍しました。ベトナム戦争が拡大の一途にあった時期、激戦地での撮影を続けた澤田は、34 歳で銃弾に倒れるまでの約5年間に、数々の傑作を生み出します。なかでも、米軍の空爆から逃れようと川を渡る親子を捉えた《安全への逃避》(1965年)を含む写真帳は、報道界の最高栄誉と言われるピュリツァー賞を受賞しています。米軍により軍用ヘリが幅広く使われたベトナム戦争は、しばしば「ヘリコプター戦争」と呼ばれます。また米軍は、地の利を得ていた「共産ゲリラ」との地上戦で苦戦を強いられる中、絨毯爆撃を可能にするB52戦略爆撃機やナパーム弾を搭載したF-4戦闘機の利用など、空からの攻撃を重視していました。アメリカの通信社UPIに所属するカメラマンとして米軍と行動を共にした澤田の残した写真には、上空からの攻撃あるいは上空からの視野を捉えたものが含まれています。それらの写真を中心に、アマチュア時代に三沢空軍基地を撮影した写真や代表作も合わせて展示します。

澤田教一
ケサン,クアンチ省|1967年4月30日
ゼラチン・シルバー・プリント

通年展示 展示室F、G 奈良美智 《Puff Marshie》《Hula Hula Garden》

国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、170点を超えるそのコレクションの多くは、奈良が1988年から2000年まで滞在したドイツで生み出されたものです。
この展示室では、当館がほこる奈良美智の90年代のコレクションを中心に、《Puff Marshie (パフ・マーシー) 》(2006年)や《Broken Heart Bench (ブロークン・ハート・ベンチ) 》(2008年)など、作家からの寄託作品も展示しています。

通年展示 アレコホール マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画

青森県立美術館の中心には、縦・横21m、高さ19m、四層吹き抜けの大空間が設けられています。アレコホールと呼ばれるこの大きなホールには、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。青森県は1994年に、全4作品から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
これらの背景画は、帝政ロシア(現ベラルーシ)のユダヤ人の家庭に生まれたシャガールが、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため亡命していたアメリカで「バレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)」の依頼で制作したものです。大画面の中に「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールの本領が遺憾無く発揮された舞台美術の傑作です。
残る第3幕の背景画《ある夏の午後の麦畑》は、アメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵され、長らく同館の西側エントランスに展示されていましたが、このたび同館の改修工事に伴い、4年間の長期借用が認められることになりました。青森県立美術館での「アレコ」背景画全4作品の展示は、2006年の開館記念で開催された「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」展以来です。背景画全4作品が揃ったこの貴重な機会に、あらためてシャガールの舞台美術作品の魅力をお楽しみください。

 

★フィラデルフィア美術館所蔵の第3幕は、長期の借用となるため、函館税関からアレコホールを保税展示場とする許可をいただいて展示しています。
展示期間:2017年4月25日 – 2021年3月頃(予定)
アレコホールへのご入場には、コレクション展もしくは企画展の入場チケットが必要です。