コレクション展 2019-2

2019年7月13日(土) ━ 8月31日(土)

コレクション展 終了
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コレクション展 2019-2

企画展「子どものための建築と空間展」(7月27日~9月8日)に関連し、「美術の中の子どもたち」と題して美術作品の中にあらわれた子どものイメージを特集して展示いたします。棟方志功展示室では、棟方志功が子ども時代を過ごした善知鳥神社や青森の風景をモチーフにした作品を展示し、志功芸術の原点を探ります。また蔦谷龍岬、高橋竹年、工藤甲人の日本画、阿部合成、田澤八甲、松木満史らの洋画、今純三の版画に描かれた子どものイメージを紹介します。昭和の子どもたちの活き活きとした姿をお楽しみください。
※小島一郎、馬場のぼる、成田亨の作品については、企画展「子どものための建築と空間展」にて展示を行っております。

開催概要

会期

2019年7月13日(土)~9月8日(日)

休館日

7月22日(月)、8月19日(月)

展示内容

【特集展示】美術の中の子どもたち

展示室N:善知鳥うとう(青森)を遊び場に
棟方志功1903年(明治36年)9月5日青森市生まれ。善知鳥神社から徒歩100メートルもない門前に生まれます。「私を育てた時が、所が、何時、何処にあってもあの境内が私の身体に附いている様なものだ。」と記すほど毎日のように境内を遊び場にして育ちました。神社の祭りの際に掲げられる色とりどりの牡丹の花が描かれた大きな灯籠からは、自然とは別な、絵としての自然を生まれさせるという「嘘で表せねば表せない真実」を悟ります。この「花の絵」ではなく「絵の花」を描くという棟方曰く「胸中花(きょうちゅうか)」の世界は、生涯にわたって生き生きと自由闊達に描かれることになります。また、棟方は青森の古名ともされる“善知鳥”について「私は今でも、此の名、善知鳥をそのまゝ善知鳥市でありたかった。」と特別な想いを寄せます。棟方が版画の道を歩み始めた1938年(昭和13年)、青森を舞台にした謡曲「善知鳥」を題材にした《勝鬘譜善知鳥版画曼荼羅(しょうまんふうとうはんがまんだら)》で、版画では官展初の特選を受ける快挙を成し遂げました。
善知鳥、不動尊図、合浦公園、八甲田、神鷹、ねぶた、沢瀉(おもだか)、ゴッホ…72年間の生涯のうち、油絵画家をめざし21歳で上京するまで過ごした青森での少年~青年期におけるこれらのキーワードは、板画家として“世界のムナカタ”となり活躍するようになってからも作品中でたびたび表出します。青森時代の出来事は棟方の創作の柱の一つとなりました。棟方志功を形成した青森の自然や出来事が描かれた作品をご覧ください。
また、このたびの特集に合わせ、棟方志功が描いた“こども”もご紹介いたします。

棟方志功《勝鬘譜善知鳥版画曼荼羅》
1938年
板画無彩色

展示室N,M:美術の中の子どもたち
絵画のなかで子どもは様々な描かれ方をしています。純粋で愛らしい天使のような存在として。画家の大事な家族の一員として。母と子の結びつきの中で。あるいは希望にみちた未来の象徴として。洋の東西問わず、子どもは美術の重要なモチーフの一つです。
このコーナーでは、青森県出身の美術家たちの作品から、「子ども」が描かれている作品を紹介します。洋画からは阿部合成がメキシコで目にした親子の姿にキリスト教の聖母子の姿を重ねた作品や、田澤八甲が身近な子ども達の姿をあたたかく、ユーモラスに描いた作品、松木満史が日常の生活の中にとらえた少年・少女を描いた作品。さらに今純三が昭和初年の青森県を100枚の石版画として描き、印刷して頒布された「青森県画譜』から、当時の子どもの姿がうかがえる考現学的な作品を。日本画からは大志を胸にいざ羽ばたかんとする若者を描いた工藤甲人の「青雲」や、大正~戦前期を中心に活躍した野澤如洋、蔦谷龍岬、高橋竹年が愛らしい子どもや子犬を描いた作品。また、邪気を払う神であり、子どもの守り神として端午の節句に人形が飾られる鍾鬼(鍾馗)や、謡曲に登場する不老不死の水を飲んだ少年(「菊侍童』)など、和漢の画題にあらわれた子どもに関連する主題を描いた作品を展示します。多様な表現を通じ、さまざまな視点から描かれた美術のなかの子どもたちの姿をご覧下さい。

田澤八甲《緑の陰》
制作年不詳
キャンバス・油彩

今純三《青森県画譜48 冬の街頭風俗》
1933-34年
紙・オフセット

蔦谷龍岬《菊慈童》
制作年不詳
絹本着色

通年展示

展示室F、G:奈良美智 《Puff Marshie》《Hula Hula Garden》
国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、170点を超えるそのコレクションの多くは、奈良が1988年から2000年まで滞在したドイツで生み出されたものです。
この展示室では、当館がほこる奈良美智の90年代のコレクションを中心に、《Puff Marshie (パフ・マーシー) 》(2006年)や《Broken Heart Bench (ブロークン・ハート・ベンチ) 》(2008年)など、作家からの寄託作品も展示しています。

アレコホール:マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画
青森県立美術館の中心には、縦・横21m、高さ19m、四層吹き抜けの大空間が設けられています。アレコホールと呼ばれるこの大きなホールには、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。青森県は1994年に、全4作品から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
これらの背景画は、帝政ロシア(現ベラルーシ)のユダヤ人の家庭に生まれたシャガールが、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため亡命していたアメリカで「バレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)」の依頼で制作したものです。大画面の中に「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールの本領が遺憾無く発揮された舞台美術の傑作です。
残る第3幕の背景画《ある夏の午後の麦畑》は、アメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵され、長らく同館の西側エントランスに展示されていましたが、このたび同館の改修工事に伴い、4年間の長期借用が認められることになりました。青森県立美術館での「アレコ」背景画全4作品の展示は、2006年の開館記念で開催された「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」展以来です。背景画全4作品が揃ったこの貴重な機会に、あらためてシャガールの舞台美術作品の魅力をお楽しみください。

 

★フィラデルフィア美術館所蔵の第3幕は、長期の借用となるため、函館税関からアレコホールを保税展示場とする許可をいただいて展示しています。
展示期間:2017年4月25日 – 2021年3月頃(予定)
アレコホールへのご入場には、コレクション展もしくは企画展の入場チケットが必要です。