詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス

2022年4月23日(土) ━ 6月26日(日)

企画展 終了
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詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス

詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス

詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス 30秒Ver. (ノンテロップフルVer. はページ下の「お知らせ」からご覧ください

青森の自然に魅せられ、北国の光と風が織りなす四季を彩り豊かなガラス作品にうつし取り、ガラス工芸に新たな息吹を吹き込んだ作家、石井康治(いしい・こうじ 1946-1996)の初の本格的な回顧展を開催します。
石井は千葉県に生まれ、1971年に東京芸術大学工芸科を卒業。ガラス壜を製造する東洋ガラス株式会社に就職して製品デザインを担当する一方、自身でもガラス作品の制作を始め、77年からは退社して創作活動に専念します。
制作の場を求めて訪れた青森で、四季のうつろいと共に自然がみせる豊かな色彩と鮮やかな変化に魅了され、1991年には、青森市郊外の三内丸山に念願のアトリエ「石井グラススタジオ青森工房」を開設。青森の四季折々の美しい表情を作品にとどめようと探求を重ね、「彩烈文」(さいれつもん)、「汎状文」(はんじょうもん)、「環象文」(かんしょうもん)、「彩花文」(さいかもん)、「彩硝文」(さいしょうもん)など、独創的な文様技法を次々と考案していきます。
1995年には、自身の創作における一つの到達点と自負する四季の「樹映」(じゅえい)シリーズが生まれますが、翌96年の11月、青森で急逝します。
「色ガラスを用いて自分のイメージを詩のような感じで作りたい」―石井はこう語り、創作のテーマを「詩・季・彩」(し・き・さい)という言葉で表していました。生命の息吹と共に華やぐ春、爽やかな初夏から鮮烈な夏、秋の燦めく彩り、そして冬の雪がみせる様々な表象。残された作品は、今も彼の愛した青森の四季を謳う一編の詩のように私たちに語りかけてきます。
本展では、青森を制作の地に選び、その自然風土を、鮮やかで繊細な色彩と流麗で端正な造形による作品へと昇華させた石井の創作活動の軌跡を紹介します。

 

私達の生きている風土には 美しい自然があり その自然に季節が変化を与え より美しい彩りを見せてくれます。 詩人が 季節の詩(うた)を文字で表すならば 私はガラスをとおして 永遠に凍結したいと願っております。

( 1996年4月 作家の直筆ノートより)

石井グラススタジオ青森工房での石井康治 撮影:大堀一彦

作品スケッチ制作

作品スケッチ制作

環象文の作品制作作業

環象文の作品制作作業

石井康治 略年譜

1946年 千葉県に生まれる
1971年 東京芸術大学美術学部工芸科鍛金専攻卒業。東洋ガラス株式会社入社 制作企画室設立
1972年 日本ガラス工芸協会会員となる
1973年 「日本のガラス展―古代から現代まで」(神奈川県立近代美術館)出品
1976年 ロンドン、ロイヤルカレッジ「Working with Hot Glass」参加
1977年 東洋ガラス株式会社を退社し、ガラス作家として独立
1978年-96年 日本ガラス工芸協会 「日本のガラス展」出品(トリエンナーレ)(新宿・小田急)
1985年 三和酒類株式会社「いいちこ」シルエットボトルをデザイン。ジャパンパッケージデザインコンペティション特別賞受賞
1988年 日本テレビ系列「美の世界」にて「ガラスに描く光と風」放映
1989年 株式会社石井グラススタジオ設立
1990年 「ニューヨーク・アートエクスポ」出品
「’90現代ガラスの造形展」(箱根彫刻の森美術館)出品
1991年 「石井グラススタジオ青森工房」を青森市三内丸山に開設
1994年 「光と風のシンフォニー GLASS 石井康治」(箱根・芦ノ湖 成川美術館)開催
1996年 NHK「土曜 美の朝」にて「詩・季・彩のシンフォニー」放映
「石井康治作品展―グラスワーク20年」(代官山ヒルサイドテラス)開催
11月、青森にて急逝
2001年-02年 「石井康治展―ガラスが魅せる詩・季・彩―」(千葉県立美術館)開催
2004年 「東京藝大のガラス作家たち」(東京藝術大学 大学美術館)出品
2010年-11年 「石井康治ガラスアート展」(岡山・妖精の森ガラス美術館)開催

お知らせ

開催概要

会期

2022年4月23日(土)- 6月26日(日)

休館日

4月25日、5月9日、23日、6月13日 (第2、第4 月曜)

開館時間

9:30 – 17:00 (入館は16:30まで)

会場

青森県立美術館

観覧料

一般 1,500円(1,300円)/高大生 1,000円 (800円)/中学生以下無料

※( )内はウェブチケット料金。ウェブチケットはシステム利用料等別途165円が必要となります。
※心身に障がいがある方と付添者1名は無料

主催

石井康治展実行委員会(青森県立美術館、青森放送、青森県観光連盟)

お問合せ

石井康治展実行委員会
〒038-0021 青森市大字安田字近野185 青森県立美術館内
TEL 017-783-3000  FAX 017-783-5244

チケット販売

総合案内での前売チケット購入

窓口で前売チケットを限定100枚販売します。(一般1,300円のみ)
(注)購入できる期間は新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休館明けから4月17日までです。

※コロナ禍による臨時休館の延長に伴い、前売券販売期間短縮の代替措置として、来館時に受け取れる前売券のお取り置きを電話にて受け付けます。
ご希望される方は、下記までお電話をお願いします。
連絡先 石井康治展実行委員会事務局(青森県立美術館内)017-783-3000
受付日時 3月28日~4月17日(日) 9:30~17:00
(4月2日(土)、3日(日)、9日(土)を除く)

ウェブチケットの購入

(注)購入できる期間は3月7日から2022年6月26日16:30までです。

【チケット販売サイトURL(Gettii Lite)】
《Gettiis 詩・季・彩 ― 石井康治 四季を詩う彩りのガラス》
www.gettiis.jp/event/detail/100007/shikisai22

※ウェブチケットのお支払いはクレジットカード(VISA、Master Card)決済のみとなります。
※ウェブチケットでの観覧料は、一般1,300円、高大生800円となります。
※別途手数料(165円/枚)がお客様負担となります。

展示内容

石井康治は、友人に誘われて訪れた南の島の風景や、創作の地に選んだ青森の四季折々の自然を源泉に、50歳で急逝するまで、新たな造形に挑み続けました。多彩な色合いで、透明なものから不透明なものまで多種多様なガラス、さらに金箔や銀箔なども用いて、20数年の創作活動の中で斬新な作品を数多く生み出しています。

本展では、石井が愛した青森の四季や、空と海と光が織りなす風景をテーマに、100点を超える作品・資料により、石井が創造した豊かな作品世界の魅力をご紹介します。また、貴重な創作関連資料により、これら独創的な造形の制作行程について解説します。

石井が考案した主な文様

彩烈文(さいれつもん)             

線状に配した色ガラスにひねりを加えて文様をつくる。

《彩烈文器-轟音》
1992年 40.0×28.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

汎状文(はんじょうもん)、流文(りゅうもん)  

金箔や銀箔と色ガラスを融合して文様をつくる。作品の口や首部分によく使われている。

《汎状文器-謐》
1993年 44.0×22.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

環象文(かんしょうもん)   

象嵌の技法から着想を得、本体に嵌め込むように文様をつくる。

《環象文器》
1993年 40.5×32.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

彩花文(さいかもん)、彩硝文(さいしょうもん)  

ヴェネチアン・グラスの伝統的な技法の一であるミルフィオリ*を用いて、文様をちりばめてつくる。

*ミルフィオリ(イタリア語で「千の花」という意味)金太郎飴のように棒状のものを平たいボタン状に切断して使用するガラスの素材。“ミルフィオリ”の名の通り花型や星型が多く、断面の模様が彩り豊かで美しい。

《ガラス筥―花筏》
1996年 11.0×23.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《彩花文器-流》
1996年 36.5×30.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《彩花文器》
1995年 40.5×32.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《彩硝文花生》
1995年 22.0×35.0×14.0cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

繰り返し取り組んだモチーフ:樹映(じゅえい)

季節や天候、一日の時刻の中でも様々な表情を見せる木立の風景は、石井が繰り返し取り組んだモチーフです。1995年に生まれた四季の「樹映」シリーズでは、四季折々の光と風が織りなす北国の森が繊細に映し取られ、ガラス工芸の表現に新たな息吹を吹き込む石井の代表作となりました。

《樹映-春の景》
1995年 29.0×35.5×15.0 cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《樹映-夏の景》
1995年 36.5×24.0×14.0 cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《樹映-秋の景》
1995年 27.5×28.5×14.0 cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

《樹映-冬の景》
1996年 26.5×33.0×16.0 cm 青森県立美術館寄託 撮影:大堀一彦

創作関連資料

・工房での作品制作行程を記録した映像

・制作に使用された道具や、多彩な色ガラス、工房で自作していたミルフィオリ等の素材

・石井が残した図案やスケッチ 等 

吹き竿の先に透明なガラスを巻き取り表面に幾重にも色ガラスを重ねる。
透明なガラスを白いキャンバスに見立て、絵を描くようにガラスを造る。下塗りと同じように、ガラスを被せ、想を練った図柄を1つづつ施す。
絵筆代わりに竿の先に色ガラスを巻きとり描き上げる。しかし素材が熱く更に吹いて延ばして仕上げるので、なかなか思うように運ばない。
ガラスが冷めては加熱し、繰り返しているうちに思いもかけぬ美しさに出会う事がある。
それを逃さず瞬時に形にとどめておく。何事にも代えがたい喜びの時でもある。
(1996年7月の個展リーフレット 作家あいさつ文より)