青森県立美術館開館10周年記念「青森EARTH2016 根と路」 Aomori EARTH 2016:Roots and Routes
縄文に創造の原点をたずね、青森の大地に根ざした新たなアートを探求する青森県立美術館の企画シリーズ「青森EARTH」。2012年から行われてきたシリーズの集大成となる今回は、「根(ネ/Roots)」という語に託した文化の土着性と「路(ミチ/Routes)」という語に託した現代アーティストの創造性の交差をもとに、青森発の、未来のための「場所」と成り得る企画展を試みます。青森の自然資料、民俗資料、国内外の現代美術作品の数々を組合せて編まれた本展は、縄文の昔から連綿と続く人の営みと大地の地殻変動を地続きにつなぎ、人と自然が等しく息づく文化生態圏(エコ・イマジネール)を描く試みとなることでしょう。
展示声明
縄文に創造の原点をたずね、青森の大地に根ざした新たなアートを探求する美術館の企画シリーズ「青森EARTH」。今年は「根と路」と題し、三内丸山遺跡の縄文遺物・郷土の探検家・政治家の笹森儀助(1845-1915)の軌跡・現代アーティストの作品を通じて「存在と場所」の関係に迫る展覧会を開催する。
人は大地に「根」を張り生き、旅という「路」を行く。この人の営みに大地の振動を重ねてみる。この人と大地の共振の夢想に現れるのは両者の間を流れる精霊の姿である。
大地を抱き、大地に抱かれながらみる夢の中で私たちは気づくだろう。世界とは人と大地と精霊の交わりからなる「根と路」から生まれる無数の中心そのもの。私たちは世界を形づくる「根と路(=土着と旅)」を見出すことで、どこにでも存在し得ること。そして自らの内に万物と共存し得る未踏の大地を宿していることを。
人と大地の「根と路」をめぐる想像力をもとに「存在と場所」の関係を問う本展は、生と死、夢と現実、記憶と歴史を結び直し、あらゆる他者と存在し続けるための術の可能性を提示する。本展をもって美術館は精霊の棲む洞窟や小屋、「大切なものを貯め置く場所 ‐ ǰakka duxuni(*北方先住民ウィルタ族の言葉)」となるだろう。
見どころ
大地からあらわれる芸術の現在
大地を素材に制作を行う「ランド・アート」の代表的な担い手・ロバート・スミッソンの映像作品始め、国内外で精力的に活動する現代アーティストによる、大地の関わりから生まれた作品たちを展示します。中でも淺井裕介氏と延べ335名のボランティアにより滞在制作(6月6日‐18日)の形で描かれた巨大絵画(約8m×16m!)は、県立美術館が誇るシャガールの舞台背景画《アレコ》3点とともに展示され、青森の人と大地と美術館をつなぎます。
縄文と現代の今までにないコラボレーション
会場内には「縄文」と「現代」に新たな光をもたらすための、様々な展開をご用意しております。三内丸山遺跡出土の最古の編組製品や謎に満ちた焼成粘土塊の展示がある他、中でも奈良美智氏による三内丸山遺跡を始めとする県内縄文遺跡出土の土器・土偶から着想を得た、新作焼き物作品7 点は必見です。
知られざる郷土の偉才・笹森儀助に注目!
明治の青森に東アジアを股にかけて活躍した探検家・政治家がいました。その名は笹森儀助。国の形が広がろうとしていた時代に「辺境」で、笹森が出逢ったのはどのような人と土地の姿であったのか。愛用の道具や資料の展示を通じて、その活動の現代的な意義の考察を試みます。
*笹森儀助(ささもり・ぎすけ)
1845-1915。県出身の政治家/探検家。千島列島、南西諸島、台湾、朝鮮半島等、当時日本の「辺境」とされた地域を踏査し、「人は各々の土地で生きるべき」とする「天然ノ生理」概念を提唱、土地に住まう人に根付いた政策を提言・実践した。地域調査記録に『貧旅行之記』『千島探験』『南嶋探験』等。中津軽郡長や奄美の島司等を歴任後、2代目の青森市長となる。
アート×文化人類学×地誌学=???
芸術作品、考古遺物、民族資料、自然誌資料を一同に介して展示する本展は、これまでとは異なる形で、アートのための「場所」を問うものとなるでしょう。それは芸術そのものの定義を更新させる試みになる…かもしれません。ご期待ください!
出品作家
淺井裕介(画家)、石川直樹(写真家)、クリスチャン・ヴィウム(写真家/文化人類学者)、アピチャッポン・ウィーラセタクン(映画監督/アーティスト)、エドワード・S・カーティス(写真家)、志賀理江子(写真家)、ロバート・スミッソン(アーティスト)、奈良美智(美術作家)、スーザン・ヒラー(アーティスト)、平田五郎(アーティスト)、三瀬夏之介(画家)、皆川嘉左ヱ門(農民彫刻家)、森永泰弘(サウンドデザイナー)、dot architects(建築ユニット)、矢津吉隆(美術家/kumagusuku代表)、ヨナサス・デ=アンドラーデ(アーティスト)、青森で採集された岩石標本、笹森儀助資料、三内丸山遺跡出土資料
開催概要
会期
2016年7月23日 (土) – 9月25日 (日)
休館日
8月8日(月)、22日(月)、9月12日(月)
開館時間
9:00 – 18:00 (入館は17:30まで)
観覧料
一般1,500(1,300)円、高大生1,000(800)円、小中学生は観覧無料!
※ ( )内は前売および20名以上の団体料金
※ 心身に障がいがある方と付添者1名は無料
※ 小・中・特別支援学校の引率者が、学校教育活動として観覧する場合は無料。
※ 常設展観覧料は含まれません。
主催
青森EARTH2016展実行委員会
(東奥日報社、青森朝日放送、青森県観光連盟、青森県立美術館)
協賛
株式会社ユニバース
協力
青森空港ビル株式会社、株式会社フジドリームエアラインズ、青い森鉄道株式会社、
A-FACTORY、東北大学学際科学フロンティア研究所、東北大学大学院文学研究科、
東北大学総合学術博物館、トモ・スズキ・ジャパン、eitoeiko、ホテル山上
後援
NHK青森放送局、青森ケーブルテレビ、エフエム青森、河北新報社、北海道新聞函館支社、青森県教育委員会
助成
平成28年度文化庁優れた現代美術の海外発信促進事業
チケット販売
前売券発売期間
2016年7月5日(火)-22日(金)
前売券発売場所
青森市:
サンロード青森、成田本店しんまち店、さくら野百貨店青森本店、中三青森本店、県民生協11店舗、県庁生協(県庁舎地下1階)、青森市職員生協(青森市役所、青森市民病院、柳川庁舎)、はまなす会館(青森市勤労者互助会)、青森県観光物産館「アスパム」1階インフォメーション、青森県立美術館ミュージアムショップ、青森県立美術館1階総合案内
弘前市:さくら野百貨店弘前店、紀伊國屋書店弘前店、弘前大学生活協同組合、中三弘前店
五所川原市:ELMの街
つがる市:イオンモールつがる柏
七戸町:鷹山宇一記念美術館
八戸市:さくら野百貨店八戸店、中合三春屋店、ラピア、八戸ポータルミュージアムはっち
展示内容
1 浜辺にて
寄せては還す波の合間に浮かび上がる風景があります。人の移動の営みと大地の地殻変動がつながっていることに気づく時。私たちが生きるべき大地は、至る所にひらかれていることがみえてきます。本章では青森の大地を形成する岩石と、ブラジルのヨナサス・デ=アンドラーデ(アーティスト)による政変と地震災害とを想像力でつなぐ映像作品、矢津吉隆(美術家・kumagusuku代表)による移動する家形の立体作品を展示することで、人と大地の自由なつながりについて考察を加えます。
2 シマ(島)の群像
全ての人と大地が流動する「島」であると想像する。その時世界は必然的に群島的なイメージをもって現れなおすことになります。群島海において相互の交流のもとに紡がれ、生まれ続ける国や個人の無数の肖像。それらは「根と路」の世界を生きるための足がかりの一つです。本章では明治期青森の笹森儀助(政治家・探検家)の業績をもとに三内丸山遺跡出土資料や三瀬夏之介(日本画家)、皆川嘉左ヱ門(農民彫刻家)、エドワード.S.カーティス(写真家)、森永泰弘(音楽家)×dot architects(建築ユニット)、スーザン・ヒラー(アーティスト)の作品を展示し、芸術と土着の「空間」との様々な関係を紹介します。
3 シマ(縞)の群像
「島」の地層。その縞模様は堆積する「時間」の形でもあります。過去と未来をつなぎ、人と大地の起源をうつす時間。時間の堆積の合間に現れる様々なイメージ。それらは過去を未来へと繋ぐ「根と路」の世界のカケラの一つ一つでもあります。本章では奈良美智(アーティスト)による縄文資料とのコラボレーションによる立体作品やランドアートの代表作家・ロバート・スミッソンによる映像作品《Spiral Jetty》(1970)、クリスチャン・ヴィウム(文化人類学者・写真家)による100年前の人類学調査をもとにした写真作品、平田五郎(アーティスト)によるアラスカに取材し、自己の内面の旅をモチーフにした写真・立体作品を展示し、芸術と土着の「時間」の様々な関係を紹介します。
4 宇宙と山の間
本章ではアピチャッポン・ウィーラセタクン(映画監督・美術家)による映像作品や石川直樹(写真家)による写真作品を展示し、宇宙あるいは北極や南極等の人が生活を送る最果ての大地-「極地」を含めた世界中を旅して回るような感覚を現実の空間に落とし込みます。
5 根と路
私たちの世界とは実に、「根と路」の交差の下に現れる「風景」と「記憶」のようなもの。それらは人と大地の間で木霊し続ける唄の一小節にも喩えられます。本章では作品をそんな唄のカケラの一つ一つになぞらえ、人が大地と向き合った時、「根と路」の世界はどこにでもひらかれ得ることを示します。本章では志賀理江子(写真家)による東北に根ざした写真インスタレーションと淺井裕介(画家)による青森の土を画材に青森のボランティアスタッフとともに作り上げた巨大絵画作品を展示し、土着の要素と世界をつなぐ「青森EARTH 根と路」の世界観を、現実世界と接続させる総仕上げとします。
展覧会公式カタログ発売中!
「根と路」の世界観を余すところなくお伝えする展覧会公式カタログが刊行されました。ミュージアムショップ(Tel:017-761-1420/通信販売可)にてご購入いただけます。
●価格:2,800円(税込)
●A5版変型(函入) 約200p
●造本設計・デザイン:大西正一
●寄稿:今福龍太、唄邦弘
○各章の間に今福龍太氏による震える大地、群島、民族、宇宙等テーマにした8つの新作掌編を掲載!
○気鋭の美学者・唄邦弘氏によるバタイユとスミッソンを「洞窟」でつなぐ新作論考を掲載!
○デザイナー・大西正一氏が企画コンセプトをもとにこだわり抜いて制作。薄い縞模様のあるガッチリした函に収まった蛍光色に輝く本書は、青森の地層の間から垣間見ることのできる、人と土地の可能性の塊。ぜひお手元へ!