青森県立美術館開館5周年記念展 芸術の青森
本展概要
当館では開館5周年を迎える今年、「芸術の国」青森を紹介する展覧会を開催します。
縄文土器やこぎん・津軽塗などの生活の中から生まれた工芸から、棟方志功ら近・現代の作家に至るまで、青森県からは風土に密接に結びついて発展した豊かで個性的な芸術が生まれてきました。青森の芸術家たちが生み出してきた作品は、強大な自然と相対して生きる人間の、古代から連綿としてつらなる濃密な生命の力にあふれています。
本展では、青森県の風土に育まれ、青森県人としての強い自意識と鋭い批判精神をそなえた芸術家達が生みだしてきた作品を紹介するとともに、彼らの芸術の精神的な源泉となり、色彩や造形の感覚を養ってきた縄文土器や、生活の中で育まれてきた工芸、ねぷたや凧絵などの絵画に至るまで、北国の自然と生活が生んだ芸術的所産を幅広く紹介していきます。
青森の自然をキーワードに、“青森発”の表現が一堂に会します。
今回の展覧会では、ジャンルや時代区分などを取り払い、青森県の風土が生み出した
“青森発”の表現を、「森」「土」「海」など青森の自然と人間との関わりを一つの切り口にして紹介します。縄文土器からねぷた絵、そして棟方志功まで、この展覧会を通して青森のさまざまな表現をご覧いただくことができます。
開催概要
名称
青森県立美術館開館5周年記念展 芸術の青森
会期
2011年1月22日 (土) -3月21日 (月・祝)
休館日
2月14日 (月) 、2月28日 (月) 、3月14日 (月)
開館時間
9:30-17:00 (入館は16:30まで)
会場
青森県立美術館企画展示室
主催
芸術の青森展実行委員会 (青森県立美術館、東奥日報社、青森県観光連盟)
後援
青森県教育委員会、JR東日本盛岡支社、NHK青森放送局、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、エフエム青森、青森ケーブルテレビ
お問い合わせ先
青森県立美術館
〒038-0021 青森市安田字近野185
Tel 017-783-3000
FAX 017-783-5244
展示内容
第1章 森~板画と民芸
青森県の自然の何よりの特色は豊かな森に覆われていると言うことでしょう。森や木のもつ生命力への畏敬と信頼は、厳しい自然の中に暮らす人々の生活の中に根付き、樹木への信仰にも似た思いは、板の中の生命を彫りだす棟方志功の「板画」のなかに結晶しています。この他にも木や森の産物の味わいをいかした素朴な造形や道具、縄文時代から使われてきた漆をいかした高度な工芸にいたるまで、樹木や植物との生活から生み出されてきた造形を紹介します。
第2章 土~縄文と大地の画家
あらたな生命を生み出すとともに、枯れ果て、死にゆく生物をのみこんでいく大地は、自然と共に生きる人間の生命の故郷でもありました。青森の多くの画家達が農作業や大地の恵み、生命力を主題に作品を描いています。
また、土はさまざまなものを生み出す素材として、太古から用いられてきました。
このコーナーでは縄文土器や土偶の豊かな造形と、大地をテーマにした芸術家達の作品を展示します。
第3章 「顔」と「魂」~自意識と批判精神
縄文の土偶ではさまざまな人間の顔が造形されています。「顔」への関心は、自らをみつめ、周囲のひとびとの性格や精神を写し、その魂を描き出そうとする積極的な「人間」への関心の所産でした。強い自意識と鋭い批判的精神、そこから生まれるユーモアとウィットの感覚は太宰治や寺山修司の文学にもみられますが、青森の美術家達もそうした精神を共有しています。
ここでは、縄文土偶にみる顔の表現から、棟方志功らの強い自意識を感じさせる自画像、そしてユーモアと諷刺を武器に、文章と消しゴム版画でメディアの中で活躍したナンシー関の作品を展示します。
第4章 雪・空・炎~青森の色と光
青森の四季はそれぞれくっきりとした表情を持っていますが、中でも冬の真っ白な雪と青い空のおりなす美しい対比は、青森の画家達に大きな霊感をあたえてきました。
これに対し、夏の火祭りである「ねぷた」の、暗闇に生える鮮やかな朱や、冬の空にあがる津軽凧絵の力強い墨線と色彩は、雄々しく荒々しい精神の躍動を伝えてくれます。
このコーナーでは、北国の光と色の感性を伝える作品を展示します。
第5章 海と生きる~風土と幻想
三方を海に囲まれた青森県では、漁は重要な生活の方法であり、海は生命の故郷であり、北前船が行き来する重要な交通と交易の場でもありました。八戸市の湊中学校の養護学級生徒たちが共同制作として制作した版画「虹の上をとぶ船」は、彼らの生活に密着した場から拡がる豊かな幻想を伝えてくれます。そのうちの一点は、宮崎駿監督がその魅力にひかれ、「魔女の宅急便」の中に登場させたことでも知られています。
最後となるこの章では、この大作を中心に、「海」との関わりを軸とした作品を展示します。