生誕100年 昭和の版画師 関野凖一郎展

2014年10月4日(土) ━ 11月24日(月)

企画展 終了
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生誕100年 昭和の版画師 関野凖一郎展

生誕100年 昭和の版画師 関野凖一郎展

故郷青森をはじめ、日本、そして世界各地を巡り、その風景や人物を描いた作品で親しまれている関野凖一郎。木版画、銅版画、石版画など様々な技法に精通していた関野の多彩な作品の魅力を紹介しながら、版木、スケッチ、創作メモなどの貴重な資料によって、彫りや摺りなどに独自の工夫を凝らした表現技法や創作に込められた想いを解き明かす初の本格的な回顧展です。

展覧会概要・みどころ

大正の初めに生まれ、昭和の終わりに世を去った関野の画業は、江戸時代から続く浮世絵の伝統と、海外からもたらされる新しい技術や知識という、相対する二つの要素と向き合いつつ、時代にふさわしい表現を切り拓いていこうとしたものであり、それはまた、第二次世界大戦後に世界的な評価を確立する日本の近代版画の発展の一翼を担うものであったといえるでしょう。
本展は、生誕 100年を機に、木版画による代表作をはじめ、独自の表現を追求した実験的手法による作品、さらに銅版画や石版画、コラグラフなど多様な技法に精通していた関野の多彩な作品の魅力をあらためて紹介し、60年近くに及ぶ関野の創作の軌跡を辿る、初の本格的な回顧展です。

 

本展のみどころ

  • 作品に加えて版木やスケッチ、蔵書など創作に関わる貴重な資料から、彫りや摺りに工夫を凝らした版画ならではの表現技法の数々、そして関野が作品に込めた想いを解き明かします。

  • 生涯慕い続けた今純三や棟方志功をはじめとする同郷の作家、版画入り絵本制作の道に導いた武井武雄、上京後の恩地孝四郎のもとでの「一木会」や、戦後に東京、高円寺にあった関野の自宅で開催された銅版画研究会(通称「火葬町銅版画研究所」)など、多彩な作家たちとの交流を取り上げ、これら、日本の版画界を代表する関連作家たちの作品も合わせて展示します。

  • 関野が考案した独創的な雪や雨の表現などを、葛飾北斎や歌川広重による浮世絵や川瀬巴水等による古典的名作と比較することで、関野が伝統とどのように向き合ったのかを探ります。

開催概要

会期

2014年10月4日 (土) – 11月24日 (月・祝)

休館日

10月14日 (火)、10月27日 (月)、11月10日 (月)

開館時間

9:30 – 17:00 (入館は16:30まで)

観覧料

一般900円(700円)/ 高大生700円 / 小中生無料

※( )は前売り券及び 20 名以上の団体料金
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料
※常設展観覧料は含まれません

関野展+常設展のセット券

一般1,310円 / 高大生940円 / 小中生無料

主催

関野凖一郎展実行委員会(青森県立美術館、青森市教育委員会、みちのく銀行、青森放送、青森県観光連盟)

協賛

芝管工株式会社、丸大堀内株式会社、ハッピー・ドラッグ、竹中工務店、ヤマトロジスティクス株式会社

後援

朝日新聞青森総局、エフエム青森、河北新報社、産経新聞社青森支局、デーリー東北新聞社、東奥日報社、日本経済新聞社青森支局、NHK 青森放送局、毎日新聞青森支局、陸奥新報社、読売新聞青森支局、青森県教育委員会

助成

公益財団法人ポーラ美術振興財団

お問い合わせ

関野凖一郎展実行委員会事務局 (青森県立美術館内)
青森県立美術館
〒038-0021 青森市安田字近野185
Tel:017-783-3000
FAX:017-783-5244

チケット販売

前売り券発売所

ローソンチケット(Lコード 28511)
チケットぴあ(Pコード 766-376)
ポみっと!チケット

青森市:
サンロード青森、さくら野百貨店青森店、成田本店しんまち店、青森市勤労者互助会、青森県観光物産館「アスパム」1階インフォメーション、県民生協11店舗、県庁生協(県庁舎地下1階)、青森県立美術館ミュージアムショップ、青森県立美術館地下2階総合案内
弘前市:
さくら野百貨店弘前店、紀伊國屋書店弘前店、弘前大学生活協同組合
五所川原市:ELMの街
七戸町:鷹山宇一記念美術館
八戸市:さくら野百貨店八戸店、中合三春屋店、八戸ポータルミュージアムはっち

※発売期間 8月20日-10月4日

展示内容

展示総数300点を超える作品と創作関連資料に基づいて、関野の著作から引用したタイトルによる7つの視点から構成します。

プロローグ:大正の少年 ―青森/青春期― 同好の友と最初の師、今純三

1914 年、青森駅から程近い商店街の肥料問屋に生まれた関野は、長男として家業を継ぐことを期待されて成長しながらも美術への憧れを抱き、旧制青森中学時代には同じ憧れを抱く友たちと交流し、版画同人誌の刊行に参加するなかで、創作の喜びに目覚めます。
中学卒業後も、家業の見習い修業の一方で今純三のアトリエに通い、銅版画、石版画の制作方法を学んで、地元の東奥美術展、さらに日本版画協会展などにも入選を果たし、画家志望の想いを募らせていきます。

《河畔》
1936年 銅版画
町田市立国際版画美術館寄託

第一章:版画を築いた人々 ―青森から東京へ/青年期― 新たな師、恩地孝四郎と個性的な作家たちとの出会い

20代になり、父親が家業を変え、母親が亡くなるなど自身を取り巻く環境が変化する中でも、関野は中学時代の仲間たち等と版画同人誌の刊行や公募展への出品を続け、20代半ばで遂に上京を決行します。
優れた美術本の出版を手がけていたアオイ書房の志茂太郎の紹介で恩地孝四郎を訪ねて以降、東京での師と仰いで直弟子を自認。日本の近代版画を牽引した恩地のもとで多くの個性豊かな作家たちと出会い、刺激を受けながら絵の勉強と制作に励みますが、やがて戦争によって社会は大きく混乱し、青森の同人誌時代からの仲間たち(柿崎卓治、根市良三、松下千春)や、敬愛する今純三、谷中安規ら、師や友をはじめ多くの人の死を体験します。戦後、失われた才能や可能性を悼みながら、駒井哲郎とともに自宅で銅版画研究会(通称:火葬町銅版画研究所)を主宰するなど、志を同じくする仲間たちと創作活動を再開し、新しい時代へと歩み始めます。

《或る追悼》
1954年 銅版画
青森市教育委員会蔵

第二章:木版画の楽しみ ―1950年代~ 60年代前半/模索の時代から― 同時代の美術との対峙と葛藤

関野 1983年の著書、『木版画の楽しみ』のなかで、木版画の歴史に始まり、素材や道具の解説、彫りや摺りの伝統的な技法を紹介した上で、自身の作品制作を詳しく解説しています。そこには関野が彫りや摺に凝らした工夫、さらにコラグラフ、実物版画など、厳密な「木版画」の範疇からははみ出すような技法も紹介されています。これらの多くは、遡って 1950年代から 60年代の初頭、海外美術の動向が日本の美術界に大きな影響を与え、抽象表現をはじめ様々な表現活動が勃興するなかで、関野が自分の表現を求めて模索を続ける中で練り上げられていきました。伝統的な制作技術とともに生涯にわたり創作活動を支えた独自の表現技法の原点となる、関野の探求の軌跡を辿ります。

《梟の森》
1957年 木版画
青森県立美術館蔵

第三章:街道行旅 ―1960年代~/ライフワーク その1― 日本の風景・世界の風景

初の海外滞在から帰国した関野は、1959年から60年にかけて、旅先の風景や人物などをモチーフにした木版画を制作し、そのなかから国際展での受賞作が生まれます。一方で60年には「東海道五十三次」シリーズの最初の数点も発表しており、同時代の風景を描くという関野のライフワークが始まります。50年代の模索と探求、そして海外体験を経て、具象・抽象という形式上のしがらみや時代に取り残される不安から自分を解放し、版画が好きで作品を作りたいという素直な気持ちに立ち返ることで、関野の創作活動は豊かに花開きます。浮世絵以来の伝統的な手法とともに、研究を重ねた独自の手法を随所に採り入れることで、関野の風景は懐かしさを感じさせる穏やかな作風と斬新な造形効果が一体となって見る者の心を惹きつけます。

「陸奥の四季」より 《青森駅》
1980年 木版画
青森県立美術館蔵

第四章:人間を彫る ―1960年代~/ライフワーク その2― 関野の人物像

人物像は、風景とともに関野がライフワークとして取り組んだモチーフですが、大きく二つの傾向に分けられます。まず、特に男性をモデルにした肖像では、親しい人々でも、著名な文人でも、或いは写真を頼りに制作した物故者であっても、それぞれのポーズ、顔や表情からその人物の人間性が滲み出てくるような趣があり、一人の人間としてのモデルに対する関野の深い洞察と共感がうかがえます。一方で、舞妓などの女性像や大相撲の力士を描いた作品では、浮世絵の美人画や役者絵・豪傑像に連なる様式美への意識が強く感じられます。人間という存在に迫り、個人の内面までを描こうとする近代以降の肖像画と、特定の人物を描く場合でも様式美を重視する浮世絵の伝統的人物像という異なる人物表現をそれぞれ追求するなかで、関野は他方の要素をしばしば採り入れながら、独自の存在感のある魅力的な人物像を創り上げています。

《棟方志功像》
1968年 木版画
青森県立美術館蔵

第五章:珍本・奇本・稀覯本 ―関野の本棚―

関野のアトリエに残された蔵書は数千冊に及びます。文筆もよくした自身の著作、生涯愛好し、制作を続けた私刊・限定版の版画絵本、装幀を手がけた単行本や文庫など、本棚から関野のもうひとつの創作活動がうかがえます。

《阿修羅(永井路子「炎環」装幀原画》
1978年 木版画
青森県立美術館蔵

エピローグ:ポプラと校舎 ―青森/わがふるさと―  故郷の人・故郷の風景

関野が20代半ばで上京を決行したとき、応援し送り出してくれたのは、中学の同窓生や地元の郷土史家など、故郷の親しい人々でした。このときから東京で生涯を送った関野ですが、郷里の人々との交流が途絶えることはなく、青森の人と風景は、終生関野のモチーフであり続けました。展覧会の最後に、青森中学時代の「作品」から晩年まで、関野の創作の中に登場する青森を紹介します。

「陸奥の四季」より 《弘前城》
1980年 木版画
青森市教育委員会蔵

関連企画

木版画制作ワークショップ ~多色摺りを体験してみよう~

日時:10月4日(土) 10:00 – 16:30
会場:青森県立美術館ワークショップA及び展示室
講師:関野洋作氏
参加料:無料
対象:小学生以上のお子様と保護者
定員:10組まで
申込:事前申し込みが必要です。(Tel 017-783-3000)

銅版画制作ワークショップ ~銅版画の線を描き出す~

日時:11月8(土)- 9日(日)※2日通しての参加が必要です
講師:戸村茂樹氏
参加料:無料
対象:高校生以上
定員:10名まで
申込:事前申し込みが必要です。(Tel 017-783-3000)

学芸員によるギャラリートーク

日時:11月9日を除く毎週日曜 13:30-
※展覧会チケットが必要です

関連ファイル