小島一郎 – 北を撮る –  戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」

2009年1月10日(土) ━ 3月8日(日)

企画展 終了
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小島一郎 – 北を撮る –  戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」

小島一郎 – 北を撮る –  戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」

青森、昭和30年代、北を撮り続けた写真家の熱く短い生涯

戦後、国産カメラの普及やフォトジャーナリズムの発展を背景にアマチュアの写真熱が高まった写真界において、生まれ故郷、青森を被写体とし、鮮烈な足跡を残した一人の写真家がいました。
小島一郎。大正13 (1924) 年、青森市大町で、玩具と写真材料を扱う商店の長男として生まれた小島は、青森県立商業学校 (現:青森県立青森商業高等学校) を卒業後、出征。戦後の混乱期を経て、昭和29年頃から本格的に写真を始めます。
津軽の農家の庭先や雪原の一本道といった平凡な題材から、日常を超えたイメージを生み出す突出した造形感覚と確かな技巧は、日本の報道写真の先駆者、名取洋之助に見出され、早くから東京で紹介されました。
昭和36年には、プロのカメラマンを目指し上京。同年に発表した『下北の荒海』でカメラ芸術新人賞を受賞し、その後の活躍が期待されます。しかし、郷土を題材とした写真で世に出た小島にとって、住み慣れぬ土地で新境地を切り開くのは、想像以上に難しいことでした。募る焦燥感の中、東京での仕事の不振から脱け出すべく、北海道の四季の撮影を決意。昭和38年冬、現地に赴きますが、撮影は難航します。繰り返される過酷な撮影行に、体調を崩した小島は、期待した成果を得る事なく青森に戻り、体力の回復を待ちながら写真の仕事を続けますが、昭和39年7月、39歳の若さで急逝しました。
津軽の猛烈な地吹雪の中、角巻きをまとい黙々と歩く農婦。寒風吹きすさぶ下北の浜辺で、必死に船を引き揚げる漁師。青森という土地へ生きる人々への深い共感を、覆い焼きや複写の技法を駆使しながら、印画紙に刷り込むようにして力強く焼きつけた写真の数々は、その早すぎる死の後も、展覧会や写真雑誌で取り上げられ、再評価の波は絶えることがありませんでした。
本展では、その濃密な生涯をリアルに立ち上げるさまざまな資料とともに、約200点の珠玉のオリジナルプリントを展示。今なお多くの人をひきつけてやまない小島一郎の強烈な個性に迫る初の大規模な回顧展です。

つがる市 稲垣付近 1960年

つがる市 稲垣付近 1960年

下北郡 大間町 1961年

下北郡 大間町 1961年

五所川原市 十三 1957年

五所川原市 十三 1957年

下北郡 1961年頃

下北郡 1961年頃

つがる市 木造 - 出の里 1960年頃

つがる市 木造 - 出の里 1960年頃

つがる市 木造 1958年

つがる市 木造 1958年

開催概要

名称

小島一郎 – 北を撮る –
KOJIMA Ichiro: A Retrospective

会期

2009年1月10日 (土) – 3月8日 (日) 公開日:55日間

休館日

1月26日 (月)、2月9日 (月)、2月23日 (月)

開館時間

9:30 – 17:00 (入館は16:30まで)

会場

青森県立美術館企画展示室

主催

小島一郎展実行委員会 (青森県立美術館、日本放送協会青森放送局)

協賛

青森銀行、フォト・ギャラリー・インターナショナル、株式会社堀内カラー

助成

財団法人ポーラ美術振興財団、財団法人野村国際文化財団

協力

東奥日報社、青森市教育委員会

後援

青森市、青森県写真連盟、北陽会

特別顧問

小島弘子、鎌田清衛

観覧料

小島一郎展

一般       800円 (700円)
大学生・高校生 400円 (300円)
中学生・小学生 200円 (100円)

 

小島一郎展+常設展

一般      1,200円 (1,000円)
大学生・高校生 600円 (450円)
中学生・小学生 250円 (150円)

※( ) 内は前売り及び20名以上の団体料金
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料 (入館の際に証明できるものをご提示ください。)

お問い合わせ

小島一郎展実行委員会 (青森県立美術館内)
住所 〒038-0021 青森市安田字近野185
Tel 017-783-5241 / 017-783-3000
Fax 017-783-5244

チケット販売

前売券販売期間

2008年11月11日 (火) – 2009年1月9日 (金)

※一部2008年11月8日 (土) より先行発売いたします。

前売券販売所

サークルKサンクス (サークルK:青森・秋田・岩手県内の各店舗、サンクス:東北各県・北海道央・道南地区の各店舗)、ローソンチケット (L29746)、サンロード青森、イトーヨーカドー(青森店・弘前店)、さくら野百貨店 (青森店・弘前店・八戸店)、成田本店しんまち店Pax、紀伊國屋書店弘前店、県庁生協・青森県民生協、弘大生協、青森市文化会館、青森県立美術館ミュージアムショップ

関連企画

特別展示:「小島一郎の北海道」

小島一郎の最期の撮影地となった北海道の、残されていない写真をテーマに、青森県八戸市を拠点にアート活動を展開するグループ「ICANOF (イカノフ) 」の豊島重之が企画・監修し展示を行なう小島一郎展の黙示録的終章。
日時:展覧会会期に同じ
会場:青森県立美術館企画展示室E
※当日有効の本展の観覧券が必要です。

シンポジウム:「小島一郎と北の写真」

パネリスト:露口啓二 (写真家・札幌市在住) 、豊島重之 (ICANOFキュレイター)
モデレーター:高橋しげみ (青森県立美術館学芸員)
日時:2009年1月10日 (土) 13:00 – 14:00
会場:青森県立美術館シアター
定員:200名 (当日先着順)
料金:無料

特別上映会+トーク:「撮る場所、生きる場所」

1970年前後に、カリスマ的な写真表現の旗手として脚光を浴びた中平卓馬の現在を追うドキュメンタリー映画「カメラになった男」の上映会及びその関連トークを行います。
上映作品:「カメラになった男」 [小原真史監督作品] (91分)
パネリスト:小原真史 (映像作家) 、北島敬三 (写真家) 、高橋しげみ (青森県立美術館学芸員)
モデレーター:豊島重之 (ICANOFキュレイター)
日時:2009年1月10日 (土) (上映会) 14:15 – 15:46、 (トーク) 16:00 – 17:00
会場:青森県立美術館シアター
定員:200名 (当日先着順)
料金:無料

シアターイべント:「写真の声」

小島一郎写真のスライドショーに、写真から抽出される「声」をあわせて展開する朗読劇。
企画・監修:長谷川孝治 (青森県立美術館舞台芸術総監督)
日時:2009年2月7日 (土)、2月22日 (日) 両日とも14:00 – (約30分)
会場:青森県立美術館シアター
定員:200名 (当日先着順)
料金:無料

ギャラリートーク

展覧会の見どころを担当学芸員が分かりやすくお話しします。
日時:2009年1月10日 (土)を除く、会期中の毎土曜日、日曜日 13:00 – (約30分)
会場:青森県立美術館企画展示室内
※当日有効の本展の観覧券が必要です。

関連企画出演者等紹介

露口啓治 (つゆぐち・けいじ)
徳島県生まれ。東京の大学を卒業後、札幌に移住し、写真家として活動をはじめる。主な個展に、「触物紀」(1981年、駅裏8号倉庫、札幌)、「A skin flick 」(1995年、INAX ギャラリー、札幌)、「地名」(2002年、LIGHT WORKS、横浜)。2002年、「現代日本写真/Black Out」展で日本を代表する8人の気鋭写真家の一人に選ばれ、2004年には、横浜美術館で開催された「ノンセクト・ラディカル 現代の写真III」に出品。北海道の地名のアイヌ語的起源に着眼し、その根拠となった一つの場所を二度にわたって撮影することで「『風景の亀裂』を誘発する」、『地名』シリーズ、札幌中心部にかつてあった泉地と川の場所をたどる『ミズノチズ』シリーズなどを中心に制作を続けている。現在、『地名』シリーズの一環として下北半島の撮影も計画中。

 

豊島重之 (としま・しげゆき)
八戸市生まれ・在住。市民アートサポートICANOF (イカノフ) キュレイター。モレキュラーシアター演出家。1984年、青森県芸術文化奨励賞受賞。1996年、東京ジャーナル年間演劇賞受賞。編著に「パンタナル2006」、「68-72*世界革命展2008」他。主な演出作品に「OHIO」(2006年シアタートラム)「DECOY」(2007年沖縄県立美術館) 他。主な論稿に「飛び地の写真」「写真は密航する」(photographers’ gallery press 所収) 他。

 

小原真史 (こはら・まさし)
愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部人文専修卒業。多摩美術大学大学院美術学部芸術学科修了。第10回重森弘淹写真評論受賞。古屋誠一展『Aus den Fugen』キュレイター。現在、写真家・古屋誠一のドキュメンタリー映画を撮影中。

 

北島敬三 (きたじま・けいぞう)
長野県生まれ。1976年、森山大道氏らと共に自主ギャラリー「CAMP」を設立。1981年、日本写真家協会新人賞受賞。写真集『NEW YORK』刊行により、1983年、木村伊兵衛賞受賞。2007年、崩壊寸前のソ連を写したシリーズ『USSR1991』で伊奈信男賞受賞。現在は2001年に開設した自主運営ギャラリー「photographers’gallery」を拠点として、肖像写真から構成されるシリーズ『PORTRAITS』、撮影地に青森県も含まれた風景のシリーズ『PLACES』などを制作している。

関連ファイル

小島一郎 - 北を撮る -  戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」

シンポジウム:「小島一郎と北の写真」

特別上映会+トーク:「撮る場所、生きる場所」