三陸復興国立公園指定記念「種差 ―よみがえれ 浜の記憶」TANESASHI|Remembrance of the Shore
今年5月、「三陸復興国立公園」に指定された青森県八戸市の種差海岸は、画家や小説家、詩人など多くの芸術家をひきつけてきた名勝地です。
本展では、種差を愛した鳥瞰図絵師・吉田初三郎やこの地を舞台に傑作『道』を生み出した日本画家・東山魁夷など、ゆかりの美術家の名品や、縄文土器、仏像といった地域の文化財を展示し、種差という場所に宿る記憶を浮かび上がらせます。また、一昨年、東日本大震災で被害をうけたこの地の文化を次世代へとつなげる現代アートの形を探ります。
この展覧会を通じて、種差海岸の尽きせぬ魅力と、海とともにある暮らしの尊さが伝わることを願ってやみません。

リチャード・ロング Richard Long
1945年、イギリス・ブリストルに生まれる。世界中の山や草原、海岸を歩き、そこに残したわずかな痕跡を作品としてきたランドスケープ(景観)・アーティスト。1976年、ヴェネツィア・ビエンナーレイギリス代表。1989年、イギリスの現代芸術界で最も権威あるターナー賞を受賞。2009年、テート・ブリテン美術館で開催された大規模な回顧展「HEAVEN AND EARTH」は大きな話題をよんだ。同年に高松宮殿下記念世界大賞[彫刻部門]を受賞。

笹岡啓子 Keiko Sasaoka
1978年、広島県生まれ。「VOCA 展2008」奨励賞受賞、「日本写真協会新人賞」(2010)、「さがみはら写真新人奨励賞」(2012)を受賞し、近年もっとも注目される若手写真家の一人。写真集に『PARK CITY』(インスクリプト、2009)、『EQUIVALENT』(RAT HOLE GALLERY、2010)、『FISHING』(KULA、2012)。被災地の写真を主とした小冊子『Remembrance』を随時刊行。
開催概要
会期
2013年7月6日 (土) – 2013年9月1日 (日)
休館日
7月29日 (月)
開館時間
9:00 – 18:00 (入館は17:30まで)
観覧料
一般1,000(800)円、高大生600(500)円、小中生「夏休みこども美術館デイ」により無料
※ ( )内は前売および20名以上の団体料金
※ 心身に障がいがある方と付添者1名は無料
※ 常設展観覧料は含まれません
※ 前売券発売期間 5月3日 (金) – 7月5日 (金)
東山魁夷作品展示替え
7月6 – 28日|市川市東山魁夷記念館コレクションより『夕汀』、『道』試作、『静日』出品
[上記作品と入れ替えで]
7月30日 – 9月1日|東京国立近代美術館コレクションより『道』展示
※前売券で東山魁夷「道」の試作と本作、両方をお楽しみいただけます。
7月6日 – 28日の間に前売券でご観覧された方は、半券持参で7月30日 – 9月1日の間にもう1度ご入場いただけます。
主催
種差展実行委員会(青森県立美術館、八戸市、NHK青森放送局、デーリー東北新聞社、(公社)八戸観光コンベンション協会、種差観光協会、(公社)青森県観光連盟)
特別協賛
青森トヨペット株式会社、株式会社トヨタレンタリース青森
協賛
富士フィルムイメージングシステムズ株式会社、三菱製紙株式会社八戸工場
特別協力
ブリティッシュ・カウンシル
協力
環境省東北地方環境事務所、青い森鉄道(株)、八戸市美術館
学術協力
八戸工業大学、八戸クリニック街かどミュージアム
助成
グレイトブリテン・ササカワ財団、公益財団法人花王芸術・科学財団、公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
後援
青森県教育委員会、八戸市教育委員会、階上町、階上町教育委員会、東日本旅客鉄道(株)盛岡支社、JRバス東北(株)、南部バス(株)、十和田観光電鉄(株)、三陸鉄道(株)、岩手県交通(株)
お問合せ
種差展実行委員会(青森県立美術館内)
〒038-0021 青森市安田字近野185
Tel 017-783-3000(代表)
Fax 017-783-5244
チケット販売
前売券発売所
ローソンチケット(Lコード22145)、チケットぴあ(Pコード 765-676)
青森市:青森県立美術館、青森県立美術館ミュージアムショップ、サンロード青森、さくら野百貨店青森店、成田本店しんまち店、青森県庁消費生活協同組合、リンクステーションホール青森(青森市文化会館)、青森市勤労者互助会
弘前市:さくら野百貨店弘前店、紀伊國屋書店弘前店、日弘楽器、弘前大学生活協同組合
八戸市:さくら野百貨店八戸店、中合三春屋店、八戸ポータルミュージアムはっち
五所川原市:ELMの街
七戸町:鷹山宇一記念美術館
盛岡市:盛岡駅ビル・フェザン
展示内容
種差海岸を舞台にした東山魁夷の名作『道』
近代日本画の傑作である東山魁夷(ひがしやま・かいい)の『道』は、種差海岸を走る一本道がモデルになっています。前半期は『道』の試作を、後半期は本作を展示いたします。
青森県での同作品の展示は、八戸市美術館での「心の道」展(平成8)以来、17年ぶりの展示になります。
また、種差海岸での放牧の風景を描いた戦前の大作『凪』は、関東以北では初公開です。

東山魁夷
≪道≫
1950年
東京国立近代美術館

東山魁夷
≪凪≫
1940年
紀元二千六百年奉祝美術展
“大正の広重”吉田初三郎の愛した種差
大正から昭和にかけて、鮮やかな色彩と独特のデフォルメで全国の鳥瞰図を描き、“大正の広重”と呼ばれた吉田初三郎(1884-1955)は、そこに別荘をもつほどに種差の風光を愛しました。
八戸市の鳥瞰図はもちろん、東日本大震災で被害を受けた三陸地域の鳥瞰図を一挙公開。その中には、震災後偶然に発見された「金華山鳥瞰図原画」も含まれます。今は失われた風景を描き留める、初三郎鳥瞰図で、三陸の地域を旅していただきます。
また、吉田初三郎が種差の絶景を楽しんだ別荘兼アトリエ「潮観荘」(昭和28年焼失)が、八戸工業大学の研究と技術によって、コンピューターグラフィックスの映像でよみがえります。

吉田初三郎
八戸市鳥瞰図原画
1954年
八戸クリニック街かどミュージアム

種差海岸に建てられた
アトリエ兼別荘「潮観荘」での初三郎と
弟子たち、1938年[提供: 吉田種房]
海と暮らす人々の信仰を伝える八戸の秘仏
明治時代、廃仏毀釈によって追われた神社へ、今年140年ぶりの「里帰り」を果たして話題になった、蕪島に由来する浮木寺(八戸市鮫)の弁財天像が、蕪島神社から運ばれ、美術館で展示されます。また、漁村の人々の厚い信仰を集め、その造形美が高く評価されている常現寺(八戸市小中野)の魚藍観音立像は、寺外での公開が初めてとなります。

弁財天像
江戸時代後期[2005年修復]
総高 91.0cm
浮木寺(八戸市)[提供: デーリー東北新聞社]

魚籃観音立像
江戸時代初期
総高 32.0cm
常現寺(八戸市)
イギリスを代表するアーティスト、リチャード・ロングが歩く種差
約50年間にわたり世界中の山や草原、海岸を歩き、そこに残したわずかな痕跡を作品としてきたイギリス人のアーティスト、リチャード・ロングが種差海岸を歩き(3/28-4/3)、その体験にもとづく作品を美術館に設置。世界的なランドスケープアーティストが種差の自然と向き合って作りあげる記念碑的な作品を展示します。

2013年3月、
種差海岸を歩くリチャード・ロング
新進気鋭の写真家・笹岡啓子の撮る種差
日本写真協会新人賞(2010)、さがみはら写真新人奨励賞(2012)を受賞し、近年活躍の目覚ましい若手写真家の笹岡啓子は、昨年から断続的に種差海岸を撮影しています。さまざまな表情を見せる種差の自然を力強く写し出した新作の数々を展示。

笹岡啓子 ≪大須賀、鮫≫ 2013年
© Keiko Sasaoka