コレクション展2025-1
企画展「描く人、安彦良和」と関連し、漫画家/アニメーション監督・安彦良和の「原点」ともいえる1960年代という時代を映し出す様々な作品を、当館コレクションから特集展示する「空想のゲリラたち -1960年代のアートへ/から」では、澤田教一のベトナム戦争写真、成田亨の特撮美術など、社会背景と連動しつつ日本の戦後文化の最前線を切り拓いた作家たちの活動を紹介します。棟方志功展示室では「Re 板極道」と題し、棟方の自伝『板極道』の原稿と挿絵を公開します。さらに、彫刻家・今ヤヨや洋画家・橋本花といった戦前から戦後にかけて活躍した青森の女性作家たちの作品も紹介します。
お知らせ
開催概要
会場
青森県立美術館 地下1階、地下2階展示室
会期
2025年4月19日(土)~ 7月13日(日)
休館日
2025年4月28日(月)、5月12日(月)、5月26日(月)、6月9日(月)、6月23日(月)
※第2,第4月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
チケット販売
一般 700円(560円)、大学生 400円(320円)、18歳以下および高校生 無料
※( )は団体料金
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料
展示内容
展示室M, J, I, H|【特集展示】空想のゲリラたち -1960年代のアートへ/から
Imaginary Guerrilla: From/to arts of 1960s
企画展「描く人、安彦良和」と関連し、漫画家/アニメーション監督・安彦良和による創作の「原点」ともいえる1960年代に発表された様々な作品を、コレクションをもとに紹介します。科学技術が発達する一方、東西冷戦や日米安保などの形で社会と政治の間に数多の矛盾や問いが噴出し、芸術分野においても既存のジャンルに回収できないアクションや反芸術運動が浮上した1960年代。そのような時代の美術をはじめ、ベトナム戦争写真や特撮美術を紹介する本展示は、己の武器たる想像力をたずさえ社会と緊密に連携し、日本の戦後文化の最前線を切り拓いていった、いうなれば「空想のゲリラ」(山形の詩人・黒田喜夫の詩作から引用)たるアーティストたちの姿をもとに、今日の社会との向きあい方を逆照射することを試みるものです。
展示室M-J: 澤田教一による郷里・青森の小川原湖や三沢基地の様子を捉えた写真、ベトナム戦争写真
展示室I: 秋山祐徳太子、菊畑茂久馬、立石紘一による1960年代の前衛美術作品、1968年「反戦と解放展」参加依頼状(英)
展示室H: 成田亨によるウルトラQ/ウルトラマン/ウルトラセブンの宇宙人や怪獣デザイン原画(1965~67)、彫刻作品や映画『この子を残して』特撮美術のためのプラン図
展示室N, 棟方志功展示室, 展示室O|Re 板極道
Re Ban-Gokudo
1964年に刊行された棟方志功の自伝『板極道』。1903年青森市に生まれた棟方が画家を目指して上京するも、板画こそ自分の道だと進み、民藝運動の指導者や疎開先の支援者、妻チヤに支えられながら世界のムナカタと評されるほど活躍し、1959年56歳の時に初めてアメリカとヨーロッパを旅した出来事までを回想しています。
昨年3月、49年の歴史に幕を閉じた棟方志功記念館の最後の展示タイトルも「板極道」でした。奇しくもその展示開催中『板極道』の原稿と挿絵が市場に出、最終的にそれら一式を財団が購入し、今回初めて展示公開することとなりました。『板極道』の原稿は口述筆記の形式で綴られているため、原稿用紙には棟方の手による加筆修正が入れられており、作品制作と同じく筆をとったらとまらない自由奔放な棟方スタイルが見て取れます。この『板極道』の原稿が進行する1963年は、全64点からなる《東海道棟方板画》計7回の取材旅行と制作、約1か月間30回にわたる新聞連載、横幅約13mと棟方最大の板画《大世界の柵 坤-人類より神々へ》の制作、その他装幀本を多数手がけ、夏の青森旅行を断念するほど仕事に精を出した年でした。その多忙さゆえか、板画による挿絵すべてが、出来上がりが左右反転しない拓摺りで入稿されていました。
さらに、棟方が『板極道』の文章を口述筆記した際の肉声のデータも見つかりました。これは、昨年10月に記念館から青森県立美術館へ全作品と資料を移すため整理した際に発見した音声テープをデジタル化したところ『板極道』の口述筆記の内容であることが判明したものです。
本展示は、これら新収蔵・新発見の資料に加え、棟方志功記念館最後の展示を再構築(Re-build)したものです。複合的に厚みを増した展示をご覧になり、改めて『板極道』を楽しむ機会となれば幸いです。

『板極道』肉筆挿絵
墨・紙 12.5×17.0cm
棟方志功記念館蔵

『板極道』板画挿絵
木版・紙 10.5×14.0cm
棟方志功記念館蔵

『板極道』原稿 1963年
鉛筆、インク・紙 24.9×17.5cm
棟方志功記念館蔵
展示室F, G|作る人、奈良美智
NARA Yoshitomo: Feeling the materials
企画展のタイトル(「描く人、安彦良和」)に触発され、今回は「作る人、奈良美智」と題して、作家の身体性をいきいきと伝える豊かな質感を有した絵画や立体作品を展示します。また展示の中では、ご寄贈により今年から当館のコレクションに加わった奈良の若描きの油彩画《カッチョのある風景》(1979年)も展示します。本作は奈良が学生時代、アルバイトで講師を務めていた予備校の当時の教え子で画家として活躍する杉戸洋氏(現: 東京藝術大学美術学部絵画科油画教授)が収蔵していた作品で、「奈良美智: The Beginning Place ここから」で展示されて話題になったものです。

奈良美智
《カッチョのある風景》
1979年
油彩・キャンバス53.5×65.3
展示室P, Q|負けない力 ―青森の女性作家たち―: 今ヤヨ・橋本花
RESILIENCE ―Women Artists in Aomori: KON Yayo and HASHIMOTO Hana
近代以降の激しい時代の流れの中で、さまざまな困難に直面しながらも、それをしたたかに乗り越えて、芸術にかける熱い思いを貫き通す。そんな逞しさとしなやかさとをかねそなえた、決して「負けない」青森ゆかりの女性作家たちを、シリーズで紹介いたします。今回は、第二次世界大戦前から戦後にかけて活動を展開した今ヤヨと橋本花です。
展示室 L|【サポートシップ倶楽部寄贈作品】多田友充
Donation from the Aomori Museum of Art's Members: TADA Tomomitsu
青森県立美術館の活動を支援し、広く県民の美術文化の向上に寄与することを目的に2016(平成28)年に設立された「青森県立美術館サポートシップ倶楽部」から寄贈された作品を紹介いたします。今回は、2010年から、青森市浪岡の滞在制作プログラムに参加したり、弘前市にアトリエを構えたり、約9年にわたり青森県内で制作活動を展開した現代アーティスト・多田友充(ただ・ともみつ / 1979年 広島県生まれ)の作品を紹介いたします。
通年展示 アレコホール| マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画
青森県立美術館の中心には、縦・横21m、高さ19m、四層吹き抜けの大空間が設けられています。アレコホールと呼ばれるこの大きなホールには、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール(1887-1985) によるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。
青森県は1994年に、全4点から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。残る第3幕の背景画は、アメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵されていますが、現在同館から借用し、4点すべてを青森県立美術館でご覧いただくことができます。
これらの背景画は、帝政ロシア( 現ベラルーシ) のユダヤ人の家庭に生まれたシャガールが、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため亡命していたアメリカで、「バレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)」からの依頼で制作したものです。
大画面の中に「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールの本領が遺憾無く発揮された舞台美術の傑作です。
★フィラデルフィア美術館所蔵の第3幕は、長期の借用となるため、函館税関からアレコホールを保税展示場とする許可をいただいて展示しています。 アレコホールへのご入場には、コレクション展もしくは企画展の入場チケットが必要です。