豊島弘尚とよしま ひろなお [1933-2013]

豊島弘尚は、1933(昭和8)年、青森県上北郡横浜町に生まれます。姉・豊島和子(としま かずこ/1929-2011)は日本の洋舞の黎明期から活躍した創作舞踊家として知られています。また弟には、精神科医を生業としながら演出家として活躍し、国際的な評価を得ていた劇団「モレキュラーシアター」を率いた豊島重之(としま しげゆき/1946-2019)がいます。
1940(昭和15)年、八戸市に転居、小学校から高校までを八戸市で過ごします。1953(昭和28)年、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻入学し、1956(昭和31)年には、稲葉治夫、高山尚、渡辺恂三らと「新表現主義展」結成します。1957(昭和32)年、東京藝術大学を卒業し、同年の安宅賞を受賞。1964(昭和39)年、「アンデパンダン '64展」に出品するとともに、翌年、椿近代画廊の企画展「七つの死展」に池田龍雄、岡本信治郎、針生鎮郎、馬場彬らとともに出品し、「新表現主義展」の画家として、アートシーンの最前線で存在感を放ちます。
海外の展覧会にも意欲的に出品し、1972(昭和47)年の「第4回クラコウ国際版画ビエンナーレ」で買上げ賞、1975(昭和50)年には「グラフィカ・クリエーチバ'75」(フィンランド)で特別賞を受賞します。1974-75(昭和49-50)年にかけて、文化庁在外芸術家派遣事業により、北米、北欧に滞在。北欧の自然や神話からインスピレーションを得て、装飾的なモティーフを用いながら、宇宙や生命の循環をテーマとする作品を数多く制作しています。北欧に滞在しての制作は、1987(昭和62)年から91(平成3)年にかけても行われています。
1997(平成9)年頃から展開する種子のシリーズでは、透明な極北の宇宙空間や星の世界に想像力を広げ、生命の種子を空に播き育てる意味をこめ、油彩だけでなく、銀箔、顔料、墨などを多用して、天空と地上の世界の融合をはかり、「生きるいのちのかたち」を探求しました。同シリーズの1点、《空に播く種子(父の星冠)》で第21回安田火災東郷青児美術館大賞を受賞します。
2002(平成14)年には、故郷の八戸市美術館で大規模な回顧展「北の光に魅せられて ・・・豊島弘尚展」が開催され、2006(平成18)年には、自選作品による回顧展「豊島弘尚展―熾りつづく風景」が池田20世紀美術館(静岡)で開催されます。2008(平成20)年、「両洋の眼・2008」展で河北倫明賞受賞。2012(平成24)年、始弘画廊(東京)で開催された「二十二世紀の北欧神話」が生前最後の個展となり、翌年、79歳で死去しました。
戦後の前衛美術の動向の中に身を置きつつ、故郷の風土とも密接な関係を持ち続けながら活動を展開した豊島弘尚。当館では、その生涯の活動をたどることのできる全135点の作品を収蔵しています。

複眼を持つ頭部 64-C

《複眼を持つ頭部 64-C》
1964(昭和39)年
油彩・キャンバス
162.0×130.3cm

大地(アトランティス)82-3

《大地(アトランティス)82-3》
1982(昭和57)年
油彩・キャンバス
182.0×307.0cm

もんてりうすべーげん

《もんてりうすべーげん》
2005(平成17)年
墨、岩絵具、油彩・キャンバス
194.0×259.1cm