八角堂のレモン

2011年10月7日

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八角堂のレモン

開催中の美術館南側にぎわい創出プロジェクト「the south side プロジェクト」についてお話しするシリーズ。3回目で最終の今日は、現在、八角堂の上に設置しているシンボルオブジェについてです。

美術館南側(八角堂側)のスペースの魅力を、より多くの人に知ってもらうこと、それは今春開催を予定されていながら東日本大震災の影響で中止になった「青木淳×杉戸洋 はっぱとはらっぱ」展の中心的なねらいのひとつでした。この展覧会では、青森県立美術館を設計した建築家・青木淳さんと、現代アートシーンで活躍する画家・杉戸洋さんとが、美術館内だけでなく敷地全体を使って、展示を構成することが計画されていました。その中で、八角堂にのせることを想定して二人が制作したのが、この巨大なレモンのバルーンでした。

「はっぱとはらっぱ」展では、このバルーン以外にも八角堂の背後の草原に三角屋根の小屋を建てたり、赤レンガの倉庫の上に炎型のオブジェをとりつけたり、美術館の敷地をキャンバスにみたて、視覚的なアクセントをつけながら、周囲の環境にとけこんだ美術館のあらたな風景に目を向けてもらうことが意図されていました。

上のレモンのある風景の写真は、杉戸洋さんが撮影してくれたものです。レモンのある風景をセザンヌの静物画になぞらえて語っていた杉戸さん。八角堂のレンガの赤、空の青、美術館の壁の白、林や草原の緑と色彩的バランスをとるレモンの黄の効果や、草原の斜面や美術館の建物のラインの中でレモンの有機的な形がもつ造形的な役割がうかびあがってきます。

自然の中に幾何学的な形態を見出し、キャンバス上の色彩の響き合いに注意をはらったセザンヌ。開催中の印象派展にはセザンヌの風景画が展示されています。レモンのある風景とセザンヌの風景画、どちらにも自然の中に造形美を探究する画家の思いが反映されています。

「the south side プロジェクト」も残り三日となりました。最終日にはレモンのある八角堂周辺の秋の夕暮れを楽しんでいただく、吹奏楽の演奏会や奈良美智ショートスライドショウなどのクロージングイベントも企画されておりますので、ぜひご来場ください。