日誌

A-ism vol.11

2007年12月1日

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A-ism vol.11

A-ism vol.11

青森県立美術館をとことん楽しむ

青森県立美術館はまだ1歳。
美術館を訪れてくださるみなさんとともに、ゆっくり育てていきたいと考えています。
美術館には楽しいことがたくさんあります。いくつかのキーワードをもとに、メンバーシッププログラム会員のみなさんに「びじゅつかんのたのしみかた」を聞いてみました。

まようことを楽しむ。

青森県立美術館には入口は7つ。展示室には順路がありません。どこにどう行ったらよいのか、最初はイライラするかもしれませんが、実はここにこそ楽しみが・・・。ショッピングモールで、好きなところを選んで楽しむように、個展形式の展示室や図書館、シアターやカフェ・・・、好きなように選んで楽しむことができるようにつくられています。まずはマップとスケジュールを手に入れ、行ってみよう!歩いてみよう!

 

11月から稼働した、ユビキタスによる「展示案内システム」は、順路案内だけでなく作品の解説もしてくれるスグレモノ。なんと国内の美術館・博物館では初の導入!予約制により無料で借りることができます。 (1日20台限定)

あおもり犬と楽しむ。

奈良美智さんによるコミッションワーク (建物と一体となった作品) 「あおもり犬」。高さは8.5 メートルあります。あおもり犬は青森県立美術館の中で唯一、展示替えされない作品。いつきても楽しむことができます。このあおもり犬が2008年1月1日より展示室から写真撮影可能に!これからもあおもり犬と遊んだりできるイベントをどんどん実施していきます。お楽しみに!

 

あおもり犬にさわってみたい
要望はたくさんいただいています。しかしあおもり犬のいる屋外トレンチへの動線を開放すると展示室内の空調が乱れ、収蔵する他の作品に影響する恐れが・・・。引き続きよい方法はないか検討しています。

こどもと一緒に楽しむ。

青森県立美術館は他の美術館と違ってなにやらにぎやかな雰囲気・・・。それは、未来を担うこどもたちに、芸術に触れる機会をたくさん与えてあげるために、美術館体感プログラムや、創作ワークショップなどを積極的に行っているから。
また、絵本やお絵かき、積み木、ねんど遊びなど、親子で気軽にアートに触れられる空間「キッズルーム」「フリーアトリエ」や、授乳スペース、ベビーカーのレンタルもあります。家族揃って、またこどもだけでも安心して訪れられる美術館。静かに鑑賞したい方には少しさわがしいと感じるかもしれませんが、こうした体験がこどもたちの豊かな感性や創造力を育み、将来どのような形で発揮されて行くのか・・・みんなで楽しみにしていきましょうね。

いろんな芸術を楽しむ。

シャガールのバレエ「アレコ」の舞台背景画は、美術館の活動を象徴するコレクション。美術、演劇、映画などなど、青森県立美術館はこのバレエ「アレコ」のように、いろんな芸術の融合を試みます。
これまでも、展示室を使ってコンサートや演劇、ダンスなどのパフォーミングアーツ公演を行ってきましたが、あるひとつのテーマを美術とパフォーミングアーツで同時に表現するなど、まだまだたくさんできることはあります。美術のための施設という概念を超え、常に新しい物をみなさんに提供してまいりますのでお楽しみに。

参加して楽しむ。

美術館では、作品を鑑賞するだけでなく、「参加する」楽しさも味わうことができます。ここではいろんな「さんかのしかた」を紹介します。

演劇づくりに参加する -人と人をつなぐ-
「真白な空間は雑色なる私を包み、気付くと新たな感覚の芽生えを知る…「戯曲寺山修司論」「MIYAZAWA」で得た経験と人との出会いは私の真白な宝です。」
(安代薫さん:「戯曲寺山修司論」出演者、「MIYAZAWA」運営スタッフ)

県民の皆さんが出演者に!その名も県民参加型演劇。毎年、演劇経験の有無に関係なく様々な年齢、ご職業の方々が参加しています。とっても緊張する分、達成感は格別な様子。また、人間関係が広がったとの感想も多く寄せられています。08年度も開催予定。

 

サポートスタッフ -地域とアートをつなぐ-
「美術館は感動や発見を与えてくれるアートと地域をつなぐもの。地域に住むものとしてこの学習の場を、『来てよかった』『また来たい』とみんなに思ってもらえるよう、これからも笑顔でサポートしていきたいと思います。」
(成田英久範さん:サポートスタッフ)

仕事は、イベントやワークショップのサポート、チケット販売やパンフレット発送作業、作品資料整理など多種多様。12月には自主イベント「ミニライブ」も実施。近々08年度のスタッフ募集予定。

 

ファシリテーター -こどもと作品をつなぐ-
「「作品を一緒に見て、こどもたちがたくさん発言してくれる。それから最後に「また来るよ!」と手を振って帰って行く。とてもやりがいを感じます。」
(松山咲子さん:ファシリテーター)

「ファシリテーター」は直訳すると「理解を促す人」。授業の一環で初めて美術館に来たこどもたちに、作品の感想を聞いたり、見る視点を与えるなどし、理解を引き出す手助けをします。定期的に勉強会を実施。自主学習や、普及プログラムのサポートも。年に1回、広く県民から募集。

ワークショップに参加する

普及プログラムではこどもから大人まで、幅広い世代の方に、講師や参加者同士の交流の中で、楽しみながらアートや美術館そのものに親しんでもらいたいと考えています。

「美術館の色あそび -空色・雪色・土色」 講師:菊地敦己さん 2007年7月22日実施

当館にはオリジナルの字体があり、案内表示や主要な印刷物等に使われる色も決められています。この「決まりごと」によって美術館全体のイメージが守られるのです。それらを決めたのがアートディレクターの菊地敦己さんです。
ワークショップの参加者は幼児から高校生、大人まで幅広い年代の方々47名。まずは美術館のシンボルカラーである、空色、雪色、土色のもの (日用品やがらくた) を参加者に持ち寄ってもらいました。それらを長さ、固さ、色の濃淡など条件を変えて並べていきます。集められたものの長さを比べたり、触って固さを確かめたり、微妙な色の違いに目を凝らしたり、普段は考えないような条件で目の前にあるものと向き合っていくと、長い毛糸が偉そうに見えたり、プラスチックの空色がとてもきれいだったり、意外なことに気づき始めます。
最後に各色別に濃淡を整理しながら並べ、常設展示室に約2ヶ月間展示しました。
全てのものには用途、形、素材、色など様々な性質があります。それらを読み取り、「決まりごと」にそって整理して、伝えたい情報や求められる形を提示することはデザインの基本的な考え方の一つです。
このような情報整理の仕組みを、ワークショップと展示を通して参加者に体験してもらいました。

平成19年度常設展IV

新年元旦から始まる常設展の新たな特集テーマは、「近代版画の発展と青森」。棟方志功や関野凖一郎など、優れた版画家を輩出し、青森県は今日でも版画制作が盛んな土地です。日本の近代版画の発展の中で、青森の偉大な版画家たちが果たした重要な役割を浮き彫りにするこのコーナーでは、今純三から関野凖一郎へと受け継がれた銅版画の流れや佐藤米次郎が中心となった数々の版画誌の歩みなどを展観します。
また、小企画として開催されるのが今井俊満展。今井俊満は、日本の戦後の抽象絵画の流れを語る上では欠かせない画家です。当館は、同画家から生前に100点を超える作品の寄贈を受けました。このコレクションから今回は、長さ10メートルにも及ぶキャンバス画『武蔵野図』など、今井俊満のエネルギッシュな創作活動の一端をご紹介します。
さらに、当館のコレクションと建築空間の新たな魅力を引き出すための継続的プロジェクト「× ( バイ) A (エー) プロジェクト」第3弾では、当館に寄託されている郷土出身の写真家・小島一郎の作品に、六ヶ所村で戦後の開拓時代に撮られた貴重な写真をかけ合わせます。六ヶ所村開拓写真のほとんどは、開拓民としてその土地で暮らしていた一人のアマチュアカメラマンによって撮影されたものです。厳寒の下北や津軽などをくまなく歩き、雪原の風景や農村の人々の暮らしを撮り続けた小島一郎。被写体となった土地に極限まで迫った二人の写真によって、戦後の青森県の風景の多面性を浮かび上がらせ、写真における場所性と作家の表現の問題について考えます。

定期映画上映会 特集:美術館はヴィスコンティが好き

当館では、毎月1 回程度の定期映画上映会を実施します。美術館所蔵の映像資料を中心に、常設展示や企画展示と関係がある作品や、日常では観る機会の少ない作品などを上映する予定ですので、この機会にぜひお越しください。

1月 「山猫」
第16回 (1963年) のカンヌ映画祭で最高賞<グランプリ>に輝いた、ヴィスコンティ監督の最高傑作とされる作品『山猫』。主人公サリーナ公爵の生き様は、滅びに瀕してもなお誇り高い貴族の美学を体現する。特に、作品の後半、映画全体の三分の一を占める大舞踏会のシーンは必見。

2月 「ルートヴィヒ」
後に「狂王」「メルヘン王」と呼ばれることになる、19世紀のバイエルン国王ルートヴィヒ2 世の半生を描いた作品。理想に燃えた若き王は、望んだ愛情を得ることができず、次第に失意と孤独に飲み込まれていく・・・。
出演陣も豪華で、特に主役ヘルムート・バーガーの一世一代の名演は必見。

3月 「家族の肖像」
舞台は現代のローマ。俗世を嫌い、家族の肖像画蒐集を趣味に孤独に生きる老教授のアパルトマンに、突如騒がしい賃借人が入り込み、彼らが巻き起こす厄介ごとに老教授が巻き込まれていく様を描く。ヴィスコンティ監督が終生取り組んだ「家族」というテーマを、やや変化球で表現した晩年の名作。