スタッフ日誌<39>

2008年11月21日

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スタッフ日誌<39>

スタッフ日誌。
毎月21日はアテンダントスタッフから、美術館の近況やおすすめなどをお伝えします。

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スタッフ日誌<39>

こんにちは。めっきり寒くなりましたね。冬支度はお済みですか。

突然ですが、「津軽こぎん刺し」のルーツをご存じでしょうか。
それは、遡ること藩政時代、本州の最北端に位置する青森の津軽において、綿衣の着用を禁じられた農民が、その長く厳しい冬の寒さから身を守るために必然的に生み出した、生きるための手技であったのだそうです。

当時の津軽の農民の衣服といえば、自家製の麻。
現代を生きる私たちにとって「麻」は夏の風物。
風通し良く、体温を効率よく逃がしてくれる秀れた天然素材ですが、寒い冬に「麻」では、風通しが良いどころか、凍えてしまう。
かといって「綿」を身につけては、お上よりおとがめを受けることになってしまう。
そんな八方塞がりの厳しい状況で考えついたのが「麻の布目をふさいで風を通さないようにすること」。
これが「綿の糸で麻の布目を刺していくこと」に発展し、さらに「整然と緻密に刺していくことで、保温効果はさらに増す」ということに気付く。
そしてついには私達の知る、あの美しいこぎん刺しの紋様が生まれたということです。

津軽こぎん刺しの美しさは「美」を追求して到達したものでなく、「生きぬく」ための必然によって生み出されたものだったのですね。

そんな「生きる」ことを追求した暮らしの中の手技の数々を展示する「相馬貞三と青森の民芸」は、秋のコレクション展の×A(バイエー)プロジェクトとして、12月24日まで好評開催中です。

皆さまのご来館を、心よりお待ちしております。

アテンダント 宮越