次の展示室Dでは、プラモデルが工業製品として大きく発展した1970~80年代のボックスアート原画と、デジタル化社会が到来した1990年代から現在に至るボックスアート原画を紹介しています。
1970年代初頭にオイルショックが起こり、資材の高騰によってプラモデルの価格もはねあがり、プラモデルの購買層は次第に固定的なファンとなっていきました。高度成長期が終わり、社会そのものが停滞してくると、ボックスアートもまた受け手の感情を刺激する物語性の強いものから、モチーフを正確に再現した資料性の高いものが好まれるようになっていったのです。技法的には、筆にかわってエアブラシを用いた表現が増えたのも、この時代の大きな特徴と言えましょう。
1990年代以降は、高度情報化社会の到来によって人々の好みが細分化した時期です。さらにはプラモデルの開発現場にもデジタル技術が普及し、組み立てるだけで精密な縮小模型が完成する商品が次々と市場に送り出されていきました。
この時期のボックスアートもまた時代性を反映して、コンピュータグラフィックスによる描写が多くなってきています。
○画像左:タミヤ 1/35「ドイツタイガー1重戦車(後期生産型)」 江間浩司 1989年
タミヤは白を基調にしたパッケージ、通称「ホワイトパッケージ」と称されるボックスアートを送り出し、それまでの玩具的なスタンスから一歩抜け出した、大人も楽しめるホビーという印象を与えることに成功します。パッケージにも「デザイン」の概念が取り入れられたのです。それは社会が落ち着きを見せ、戦後文化が成熟期に入ったことも強く影響しているように思われます。そして、商品としてのプラモデルもまた、支持層の「成長」とともに大きく変化していきました。
○画像右:会場風景