美術館スタッフが学校へ伺って授業を行う「お出かけ講座」。
普段は小学校にお呼ばれすることが多いのですが、今回の舞台は八戸市立市川中学校。
なんと全校生徒、一斉授業です。
参加人数450人は「お出かけ講座」はじまって以来の最大数!
講座の内容は大きく分けて二つ。
一つは美術館スタッフによるスライドを使用したレクチャー、もう一つが生徒による作品プレゼンテーションです。レクチャーでは、美術館の社会的機能や学芸員の仕事等について紹介しました。中学生といえば、自身の職業についての関心が芽生えつつある時期。
展覧会をどうやって作り上げていくか、といった話は興味深かったようです。後日のアンケートでは「ひとつの展覧会を開催するのに、2、3年も前から準備しているなんて驚き」「展示されているものだけではなく、展覧会そのものが1つの作品ということを知った」「企画する力は美術の展覧会のみならず、その他にも必要な力。今回の話はいつでも頭の片隅に置いておきたい」などなど、さすがは中学生といった感想をいただきました。
一方の生徒が主役の作品のプレゼンテーションでも、中学生の真摯な姿を眼にすることができました。
作品の主題は「僕の木、私の木」「木版」「アートボックス」「オリジナルTシャツ」。
全校生徒の前でプレゼンテーションをすることは普段の活動でもないそうで、作品にコメントをする私たちも旨く行くか心配でしたが、みんな誠実に話してくれました。
中でもある女の子のバスケットボールをする自分の姿を彫った木版についてのコメントが印象的でした。「苦しい時に自分はいつもがんばれない。だからがんばれるようになりたいと思って制作しました」と語るその作品は、切実な願いの具体的な形として心に響きました。
美術館の中にいると、ある制度の中で評価された作品を学んだり鑑賞したりする機会がほとんどです。中学生の作品との出会いに、美術作品には有名無名に関わらず、創った人の思いが込められていることを改めて知らされました。アンケートに次のように書いている人もいました。
「私にとって美術とは?」(質問)
「自分の気持ちを作品を通して表現するもの」(答え)
またプレゼンテーションは創った本人だけでなく、友人・知人の作品を見ていた生徒達にとっても大変面白かったそうです。
芸術鑑賞は美術館でだけ行うものではない、というこもまた教えられた気がします。
市川中学校のみなさん、これからも作品を創ったり見たり、実りのある美術の時間を過ごしてくださいね。