青森県立美術館は、杉本康雄が令和7年3月31日をもって館長を退任し、新たな館長に、平田オリザが就任しましたので、お知らせします。
杉本康雄は、平成27年4月に就任して以来、5期、10年間にわたって館長を務め、その間、「県民のための美術館として、県民に親しまれ、愛される」というミッション実現のため、
・シャガール「アレコ」の全4幕完全展示
・県内5つの美術館との連携とアートフェスの開催
・棟方志功、奈良美智に代表される青森県の個性豊かな芸術文化を世界に発信
・「アレコ」にバレエ舞台背景画としての命を吹き込むバレエ「アレコ」公演
と、県立美術館の運営基盤の確立とブランド力向上に取り組んで参りました。
新たに就任した平田オリザは、杉本康雄が10年間にわたって築き上げた県立美術館の運営基盤とブランド力を引継ぎ、更なるポテンシャルを生かして、青森県の芸術文化を世界に向けて発信し、子どもたちが優れた芸術を体感できる美術館を目指していきます。
氏名 平田 オリザ(ヒラタ オリザ)
1962年東京生まれ
兵庫県公立大学法人芸術文化観光専門職大学学長・劇作家・演出家・青年団主宰
1995 年『東京ノート』で第39 回岸田國士戯曲賞受賞
2006 年モンブラン国際文化賞受賞
2011 年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲
2019 年『日本文学盛衰史』で第22 回鶴屋南北戯曲賞受賞
青森県立美術館館長並びに青森県文化芸術参与に就任いたしました平田オリザです。よろしくお願い申し上げます。
青森県とのお付き合いは、故牧良介さんをはじめ、すでに35年の長きにわたります。その間、津軽半島の旧三厩村や平舘村、あるいは下北半島の佐井村まで県内各地を訪れ,公演やワークショップを行って参りました。
1995年から96年にかけては旧浪岡町に2ヶ月以上滞在、また2008年には青森市に1ヶ月近く滞在して、県内の劇団と合同の滞在型制作も行ってきました。
また2002年の八戸東高校表現科開設以来、毎年授業を担当し、コロナで遠隔となった1年を除いては22年間連続で八戸市を訪れてきました。またこの10年近くは,その前後で下北半島でも小中学校でのモデル授業を展開してきました。
宮下宗一郎知事とはむつ市長時代に初めてお目にかかり,毎年のように懇談をしてきたほか、2022年にはむつ市総合教育会議などでも同席をいたしました。
それらのご縁があって,この度、県立美術館館長の職を拝命いたしました。
美術館に限らず、公共文化施設あるいは文化政策の基本的な役割は、先人の文化芸術を受け継ぎ、発展させ、また次世代に継承していくところにあります。限られた予算の中で、これらをバランスよく続けていくことが県立美術館には求められていると考えます。
文化観光や福祉,医療など新しい隣接領域からの期待も大きいですが、まず美術館の基本的な役割を的確に遂行した上で新たな施策にも積極的に取り組んでいきたいと思います。
杉本前館長には、美術館の基礎をしっかり築いていただきました。コロナ禍で厳しい局面もあったかと思いますが、ここに来て入館者数等もⅤ字回復をしています。今後はさらに、以下の施策に重点を置き、青森県立美術館を世界に冠たるアートミュージアムとして発展させていく所存です。
青森県立美術館は、奈良美智さんという非常に強力な、そしてこれからさらに世界に名前が知れ渡っていくであろう現在進行形の美術家の作品を中心に、非常にポテンシャルのある収蔵作品を持った美術館です。
また青森県は、人口120万人の県内に当館も含めて5館の現代美術館があるという強い特色を持っています。
県内5館による連携を強め、それを観光産業と結びつけていきます。ただし観光は、ただ集客や目先の経済効果だけを競うのではなく、青森県全体のイメージを挙げていくものでなければなりません。
宮下知事からは、青森県の地理的条件からも体験格差、文化格差の解消について指示をいただいています。自然状態では経済格差や保護者の関心の度合いによって,こどもたちの間に文化体験の格差が起きてしまいます。この文化的な体験が非認知スキルの差につながり、さらには学力の差にもつながっていくというのが最近の教育統計で明らかになってきたところです。
青森県全体で文化政策と教育政策を連動させる形で、文化格差の解消に努めたいと考えます。
私個人としては、三内丸山遺跡と連携して、日本列島における芸術の起源について研究、発信をしていくことにも強い関心を持っています。
また私自身は美術が専門ではなくて、劇作家・演出家ですので、この美術館の強みを活かして、パフォーマンス部門についてさらに発展させていきたいと思っています。
美術そのものについては、非常に優秀な学芸員が揃っていますので、職員の皆さんが働きやすい職場を作っていきたいと考えています。
端的に言えば、美術館自体の機能強化と、県内外、そして国外への発信という二つの事柄をバランスよく進めていく舵取りと、そのための広告塔的な役割も私に求められていると自覚しています。
広報活動については、これまで以上に積極的に行って参りますので、是非、ご協力をいただければ幸いです。
2025年4月 平田 オリザ
撮影/室谷 心太郎
このたび私は、2025年3月31日をもって青森県立美術館長を退任することとなりました。
2015年に美術館と縁のない金融界から美術館の館長となりましたが、美術館関係者の皆様、ボランティアやご協賛企業の方々からご協力・ご支援いただき、10年間務めさせていただきました。
私が館長に就任した際に強く願った思いがあります。県民の皆様にとって、こどもから大人まで一緒に楽しめ、何度でも訪れる美術館でありたい、また、若い人たちに青森のアートの力を感じてもらうことで青森ファンを増やしたい、その思いをずっと持ち続けて活動してきました。
そのような思いが、2024年には、「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」や青森県立美術館版バレエ「アレコ」公演となって実り、成功裏に終えることができました。
青森県立美術館は、棟方志功、奈良美智、シャガールによるバレエ背景画「アレコ」など、世界に発信できる多彩なコレクションを所蔵しています。これから先は、平田新館長にバトンタッチし、この美術館を次のステップに進めていただきたいと思っています。
これまでご支援いただきました皆様に、改めて心より感謝申し上げます。
引き続き、青森県立美術館への温かなご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
2025年3月 杉本 康雄