2/20市民図書館連携企画「県美土曜ゼミ」を開催しました

2016年2月26日

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2/20市民図書館連携企画「県美土曜ゼミ」を開催しました

今回は図書に針生一郎「修羅の画家」を取り上げ、テーマを「修羅の画家・阿部合成」に開催しました。
図書「修羅の画家」の著者である針生一郎は反戦などベースに様々な評論をしている方で2010年に亡くなるまで積極的に活動していた評論家です。作中にある阿部合成の生涯の中から、今回は代表作「見送る人々」や故郷と壁画の夢、反戦画家の烙印を押され、自身の出征体験からシベリア抑留体験、親友太宰治との交友、メキシコでの飛躍から晩年の制作に至るまでをポイントにご紹介しました。
 1938年に二科展に出品し、入選した「見送る人々」では、構図にも注目しています。ヒエロニムス・ボッシュ作「十字架を運ぶキリスト」では十字架が、見送る人々では出征を見送る旗が同じような構図で描かれている。また、この作品には阿部合成の自画像も描かれており、このように群集の顔の一部に自画像を描くことは、ボッティチェリの作品にも見られる。このように西洋美術の古典的技術も引用していることが読み取れる。
 この代表作のほかにも1937年から描いている作品には、人々の暮らしの哀しさを表現したものがあり、特に人々が列をなして歩いていくという構図を好んでいたようです。
自らの出征、シベリア抑留を経て帰国後、まもなく太宰治の死の影響もあり無頼な生活からか、更に自分の想いをぶつけたような作風になっていき、1959年から2度のメキシコ滞在を経て、技法にも変化が見られるようになります。この時代の壁画運動に影響を受けたとみられ、細かい砂や石を練り込んで画面に立体感を出している作品があります。
今回の講座では、他にも太宰治の著書「千代女」、「女性」、「風のたより」の装幀や1972年の晩年の作品も画像とともにご紹介しました。

市民図書館との連携企画として予定していた全5回ですが、本講座をもって無事に終了いたしました。回を重ねるごとに参加者の方が増え、たくさんのお客様にご来場いただきました。ありがとうございます。講座終了後にいただいているアンケートには、「また市民図書館との連携企画に期待しています」との声もあり、嬉しく思うとともに、ぜひまた実現できたらなと思います。
各回で取り上げた画家にお会いしたことがある参加者の方もいて、人との繋がりも感じます。最終回では、阿部合成の明の星高校に勤務時代に美術を教わったというお客様もおり、講座の内容を懐かしみながら聞いてくださったようでした。
また、このような機会を企画したいですね♪県美土曜ゼミにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。