今月は、図書に谷崎潤一郎の「鍵」、「瘋癲老人日記」を取り上げ、棟方志功と文学をテーマに解説しました。
棟方志功は多くの作家の詩や小説に挿絵、版画の題材、装丁本などを手掛け、その数は500冊以上あるとのことです。
その中には谷崎潤一郎の作品もあり、彼の小説も様々な画家たちが飾っていますが、なかでも棟方志功の作品を好んだようで、今回取り上げた図書の他に「歌々板画巻」、「夢の浮橋」など多数あります。
棟方と谷崎の関係は、谷崎の小説の挿絵や装丁の他、お互いの表札を書いたという話もあり、とても親しい間柄だったことが窺えます。
今回、聴講されたお客様のアンケートに、「挿絵と本の内容がすごくマッチしている。」「鍵の挿絵の版画は、すばらしいと思った。」と、いうご意見がありました。
ストーリーを具体的に描いた作品だけでなく、登場人物の心情が読み取れるような作品に、その話の世界観に引き込まれていく感覚があります。
この「鍵」、「瘋癲老人日記」も出版によっては棟方の挿絵が使用されていないものもあるので、ぜひ棟方の作品が使われている出版本を読んでみてはいかがでしょうか。
他にも、「志功の挿絵がこんなに多くあるとは思いませんでした。」と、棟方の挿絵を初めて知った方もいらっしゃいました。
棟方志功の挿絵や装丁本は、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」、草野心平の「富獄頌」など、様々あります。今回取り上げた「鍵」、「瘋癲老人日記」は市民図書館の蔵書でもあります。これを機会に棟方志功の挿絵が入った図書を検索してみるのも楽しみですね♪
次回の県美土曜ゼミは、図書に針生一郎の「修羅の画家」、テーマは「修羅の画家・阿部合成」です。今年度予定している最終の回ですので、ぜひご参加ください。