プロジェクト「PHASE」の関連イベントとして、今年度の参加アーティスト三名とディレクターの奈良美智氏をお招きし、座談会を10月18日(金)に開催しました。
まずは奈良氏から、このプロジェクトを企画した経緯や作家の選考基準、会場となった八角堂についてお話があり、そのあと各作家からそれぞれの展示について説明していただきました。
第一期に展示を行った宮川慶子さんは、展示タイトルにも使われている「お祈り」という言葉に込めた思いや、初めて八角堂を訪れたときの体験から八角堂に対して礼拝堂のような神聖なイメージを抱いたということ、また、やがて建物が朽ちていくという命の流れを感じ取り、そこに自分がこれまでやってきたことと交わる部分があったと話してくださいました。
第二期の伊藤早樹子さんは、八角堂内の螺旋状の階段や連続した小窓のある廊下を歩いている時に、進んでいるのに戻っているような曖昧な感覚を持ったことを紹介し、そうした建物の特徴なども取り入れながら行った展示構成の仕方などについて説明してくださいました。
また、伊藤さんにとって今回の展示は、震災を経て疑心が生まれた「土」に対する信頼を取り戻すひとつの試みでもあったということに対し、司会を務めたプロジェクト担当学芸員からは、奈良氏が震災後に「土」を求めた感覚(2011-2012年頃に制作されたブロンズ作品のための塑像制作に触れながら)となにか共通するものがあるのだろうか、という質問がなされました。
第三期の永井天陽さんは、展示にあたって始めは戸惑ったけれども、八角堂のなかでスケッチをしたりしながら多くの時間を過ごすうちに、屋内空間と屋外空間が混在する建築の構造と、自身の「metaraction」というシリーズの作品コンセプトが重なっていき、それによって八角堂自体も作品として取り込むような展示にしようと考えたといいます。
三人のお話を通して、それぞれの作家の目が捉えた八角堂という空間、そしてそれが作品にどのように取り込まれ今回の展示として出来上がっていったか、ということがよく分かったように思います。
そんなお話を受けて、奈良氏は自身が八角堂をデザインした際の意図について説明し(八角堂は奈良氏によってデザインされた当館のコミッションワークです)、各作家の視点は「ある種の核となる部分を捉えていた」と話されました。
最後に、「これからもこの三作家のことを気にとめておいてほしいのと、また美術館に来ることがあったらちらっと八角堂をのぞいていってくれれば」というお話があり、プロジェクト担当学芸員が「三人が力を振り絞って展示をしてくれたことによって、お客さんが八角堂のある南側の敷地まで回遊し、美術館自体が活性化している印象を持った」という感想を述べて、座談会は終了。
プロジェクトを通してすっかり仲の良くなった三人は、来年の「PHASE」の展示を皆で見にきます!と宣言してそれぞれの拠点へと帰っていきました。
この若い作家たち(全員大学院の一年生!)が今後どのような活動を展開していくのか、今から本当に楽しみですね。
改めて、宮川さん、伊藤さん、永井さん、八角堂での展示お疲れさまでした。
そして、座談会に参加してくださった皆さま、奈良さん、どうもありがとうございました!