2015年3月28日(土) - 5月31日(日)・4月11日(土) - 5月31日(日)
常設展

会期:2015年3月28日(土)- 5月31日(日)
※展示室G,I,K,J,Mは2015年4月11日(土)- 5月31日(日)

展示の見どころ

成田亨は美術家としてのみならず、特撮美術やデザインなど多岐にわたるジャンルで活躍しました。このジャンルを横断しながら活動するスタイルは青森県ゆかりの作家の多くに共通する要素とも言えます。2015年度の「春の常設展」では成田亨展の関連企画として、そうした青森県ゆかりの作家に焦点をあてるとともに、成田亨に影響を与えた作家等についても紹介します。



2015年3月28日(土)- 5月31日(日)


展示室H|成田亨の師:阿部合成と小坂圭二

成田亨が生涯師として尊敬しつづけたのが青森市浪岡出身の画家・阿部合成(青森市浪岡町生まれ、1910-1972年)でした。阿部合成は旧制青森中学卒業後京都絵画専門学校に学び、ひとたび帰青して野辺地中学の代用教員などをつとめたあと上京、画家として活動します。二科展に出品した出征兵士を送る人々を描いた「見送る人々」が日本人としてふさわしくないとの批判をうけ、画壇から決別、満州に出征して敗戦後シベリアに抑留され、1947年に帰国します。青森に帰ってきた直後、偶然出会った成田は阿部合成から芸術家としての誠実さと情熱を学んだと言います。阿部合成が成田亨に出会った頃の作品を含め、浪漫的な情緒と祈りに満たされた油彩画を展示します。また、新制作で活躍し、青森高校時代の成田亨に素描を教えた小坂圭二(野辺地町生まれ、1918-1992年)は、阿部の野辺地時代の教え子であり、のちに東京藝大に学び、キリスト教を主題とする作品を中心に彫刻家として独自の造形をのこしました。ここでは戦争で深く傷つき信仰を異形の造形に結晶させた小坂圭二の代表作「世界の破れを担うキリスト」他の作品を展示します。

展示室N|野沢如洋と鳥谷幡山:異端の日本画家たち

明治時代から昭和初期にかけて、西洋美術の影響をうけた新しい日本画がひろまっていく時流に背を向け、伝統的な水墨画の道を究めながらも世界を旅して個性的な作品を描いた弘前市出身の日本画家野沢如洋(弘前市出身、1865-1937年)、そして十和田湖の神秘に魅了され、生涯をその顕彰に捧げるとともに、戸来の「キリストの墓」発見などにも関わった鳥谷幡山(七戸町生まれ、1876~1966年)という2人の異端の日本画家の作品を紹介します。

展示室P、Q|立石大河亞:タイガードラマの迷宮

レッテルを貼られることを拒み、立石紘一という本名からタイガー立石、立石大河亞と改名を繰り返しつつ、油彩、彫刻といった旧来的な美術の枠組みに収まらないユニークな作品を手がけ、さらには漫画やデザイン、絵本といった分野でも活躍した立石大河亞(福岡県生まれ、1941-1998年)。表現領域は多岐にわたりましたが、時間と空間、事象や観念の集積による視覚と思考の回路が幾重にもはりめぐらされ、どこまでも「観ることの快楽」が追求されている点はすべての作品に一貫しています。立石作品をとおして、「ジャンル」という概念の曖昧さと「表現」の豊かな可能性について考えてみてください。

展示室O|寺山修司:生誕80年記念「イメージの宇宙〜映像と幻想写真〜」

寺山修司(弘前市生まれ、1935-1983年)が活躍した1960~70年代はいわゆるアングラ文化が全盛の時代でした。高度成長によって近代化が急速に進む一方、社会的な構造と人間の精神との間に様々な歪みが生じ、そうした近代資本主義社会の矛盾を告発するかのように権力や体制を批判、従来の価値観を否定していく活動が盛んとなっていったのです。特に寺山は大衆の興味や関心をひきつける術に特異な才能を発揮しました。演劇や映像作品にはそれが顕著で、演劇、映画のあらゆる「約束事」が否定され、感情や欲望を刺激するイメージで覆い尽くされた寺山の斬新な作品は多くの人々を虜にしていきました。
今回の展示では、寺山が作り出した豊かなイメージの世界を、映像、ポスター、映画のスチールパネルなど様々な作品、資料で紹介いたします。
協力:テラヤマ・ワールド、三沢市寺山修司記念館

棟方志功展示室|「倭画」の世界-花鳥風景を描く

板画家・棟方志功のもうひとつの芸業「倭画(やまとが)」の世界を紹介します。
墨絵に日本画用の絵の具で彩色した自らの肉筆画を、棟方は「倭画」と呼び表しました。板画では対象の模様化や、繊細な装飾表現で咲きほこる花々を描き表した棟方ですが、倭画では、軽やかで勢いのある筆致で、動植物のみずみずしい生命力を描き表しました。《御巨銘薫樹図》(1952年)や《鷲栖図》(1971年)など、倭画の大作を紹介します。


2015年4月11日(土)- 5月31日(日)


展示室G|安彦良和:漫画とアニメの狭間で

安彦良和(やすひこ よしかず、北海道生まれ、1947年~)は、漫画家、イラストレーター、キャラクターデザイナー、アニメーション監督として活躍する現代日本文化の代表的クリエーターのひとりです。弘前大学に籍をおいた後の1970年に上京。『機動戦士ガンダム』(1979年)でキャラクターデザインとアニメーションディレクターをつとめ、『クラッシャージョウ』(1983年)や『巨人ゴーグ』(1984年)では監督も務めつつ、並行して漫画の執筆も開始。1989年からは漫画に専念し、歴史や政治に着想を得た数々の話題作を発表していきました。2001年から連載のはじまった漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は大ヒット作となり、アニメ版の制作が決定、自ら総監督をつとめ、この春には第1作が公開されました。
今回の展示では漫画デビュー作である『アリオン』をはじめ、歴史物の代表作である『ナムジ』(第19回日本漫画家協会賞優秀賞受賞)、『ジャンヌ』、『虹色のトロツキー』、そして話題の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の漫画原稿を紹介いたします。

協力:アドシステム、サンライズ

展示室I|今和次郎:「考現学」の誕生

「考古学」に対して、"人類の現在" を観察・記録する「考現学」を提唱した今和次郎(弘前市生まれ、1888-1973年)。和次郎は民家研究に従事した後、関東大震災で灰燼と化した東京の光景を見て、「今を記録する」ことの重要性に気付き、考現学を創始しました。さらに震災直後に急ごしらえのバラック建築をペンキで装飾する「バラック装飾社」では建築家、デザイナーとして奮闘、戦後には日常生活を考察する「生活学」や「服装研究」などの新しい学問領域も開拓するなど幅広い領域で活動を行いました。その活動の根底には、都市と地方を行き交いながらさまざまな暮らしの営みを“ひろい心でよくみる”ことをとおして、これからの暮らしのかたちを、今を生きる人々とともに創造しようと模索し続けた今和次郎の生き方がありました。本コーナーでは、和次郎の活動の出発点となった民家調査から関東大震災前後の仕事を紹介することで、なぜ「考現学」が生まれたのかを考察します。
協力:工学院大学図書館

展示室K|伊藤隆介:スクリーン・プロセス

映像作家、美術家として活躍する伊藤隆介(北海道生まれ、1963- )。既存の映画を自由にコラージュする「ファウンド・フッテージ」と称される映像作品と、精巧な模型やジオラマをビデオカメラでリアルに撮影、そのライブ映像を拡大投影し、目の前の実物との関係を考える「Realistic Virtuality(現実的な仮想性)」シリーズを精力的に手がけています。さらに並行して「村雨ケンジ」名義で映画、アニメ、漫画などのメディア評論も行う伊藤ですが、文字による批評と視覚に依拠する作品の双方ともに、聖と俗、硬と軟のモチーフを自在かつ柔軟に引用しつつ、様々な切り口で「現代」という時代を浮き彫りにしていく点に伊藤の仕事の大きな特徴があります。
今回の展示は、特撮映像へのオマージュとも言える映像詩と、特撮美術に着想を得たビデオ・インスタレーションで構成し、戦後日本文化に大きな影響を与えた成田亨の仕事を客観的に検証します。

展示室J|高山良策:怪獣/幻想/シュルレアリスム

成田亨のウルトラ怪獣デザインを造形化したことで知られる高山良策(山梨県生まれ、1917-1982年)は、日本にシュルレアリスムを移植した福沢一郎に師事し、美術文化協会を舞台に画家としての活動を開始します。以降、山下菊二や中村宏らとともにシュルレアリスム的な表現に社会風刺を織り交ぜたルポルタージュ絵画を制作し、後年は、異形の人間像や不可思議なオブジェなどが画面を支配する独自の幻想絵画へと到達しました。こうした前衛画家としての高山の姿勢は、怪獣造形の仕事においても反映されているようであり、敗北者としての悲哀や愛敬にあふれたその怪獣造形は“高山怪獣”として、半世紀近い時を経た今もなお多くの人々を魅了し続けています。このコーナーでは、シュルレアリスム的な幻想性や抽象性を感じさせる絵画作品に加え、ウルトラ怪獣の関連資料をあわせて紹介します。

展示室M|馬場のぼる:ねこ!ねこ!ねこ!

馬場のぼる(三戸町生まれ、1927-2001年)は、絵本「11ぴきのねこ」シリーズの作家として知られる漫画家、絵本作家です。一冊目の『11ぴきのねこ』は1967(昭和42)年に出版された作品ですが、40年以上を経た現在もなお、多くの子どもたちに愛され続けています。昭和を代表する漫画家、横山隆一をして「馬場のぼるにはネ。『ネコ』を描かせたくない・・・あんなスゴイ猫はいかん。ばばネコは禁じ手だよ。」と言わしめた馬場のぼるを、漫画家仲間たちは敬意を表して、猫を描く名人“ネコばば”と呼んでいました。今回の展示ではねこをモチーフとした漫画原稿や東北の習俗に題材をとった絵本原画を展示するとともに、代表的な漫画や絵本の閲覧コーナーを設けます。

通年展示

展示室F|奈良美智:『A to Z Memorial Dogマスター型』『ニュー・ソウルハウス』

国内外で活躍する美術作家奈良美智(弘前市生まれ、1959 – )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、160点を超えるそのコレクションの多くは、1988年から2000年まで、奈良が滞在したドイツで制作されたものです。
この展示室では、創作ユニット・grafとのコラボレーションにより、2006年に制作した小屋の作品の一つ、《ニュー・ソウルハウス》を中心に、当館のコレクションや作家からの寄託作品を展示しています。

アレコホール|マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の背景画

青森県は1994年に、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール (1887-1985) が制作した全4幕から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
ユダヤ人のシャガールは1941年、ナチの迫害から逃れるためにアメリカへ亡命します。バレエ「アレコ」の舞台美術は、画家がこの新大陸の地で手がけた初の大仕事でした。
1942年に初演をむかえたバレエ「アレコ」の振付を担当したのは、ロシア人ダンサーで、バレエ・リュスで活躍したレオニード・マシーン。音楽には、ピョートル・チャイコフスキーによるイ短調ピアノ三重奏曲をオーケストラ用に編曲したものが用いられ、ストーリーはアレクサンドル・プーシキンの叙情詩『ジプシー』を原作としていました。
シャガールは祖国ロシアの文化の粋を結集したこの企画に夢中になり、たくましい想像力と類いまれな色彩感覚によって、魅力あふれる舞台に仕上げたのです。