特集展示 青森の色と形 part1


縄文と現代が共生し、祭りの情熱と厳冬の風雪とが混在する青森という土地には、新しい歴史を開くにふさわしい膨大な芸術文化のエネルギーが渦巻き、埋蔵されています。
 この土地のエネルギーを糧として、今和次郎や今純三、太宰治、棟方志功、小島一郎、成田亨、工藤哲巳、川島雄三、寺山修司、沢田教一、奈良美智など、多彩で傑出した芸術家たちが育っています。そして彼らもまた、既成の表現の枠組みを超え、強烈な個性によって新しい創造の最前線を切り拓きました。
 こうした風土、土着性は風景、食べもの、伝統文化などにも大きな影響を与え、その「色」と「形」の積み重ねによって青森という土地のイメージが作り上げられています。
 今回の特集ではそうした「色」と「形」をテーマに、青森の「個性」を探求します。





  • 村上善男《津軽圏、弘前、品川町胸肩神社前線釘打圖》
    1996年 青森県立美術館蔵

  • 阿部合成《自画像》
    1968年 青森県立美術館蔵

その他の展示

通年展示


特集展示 青森の色と形 part1

展示室P,Q  「赤」と「緑」


明快な四季を持つ青森県は色彩豊かな地域です。青森が有する豊かな自然や風土、さらに縄文から現代に至るエネルギーの堆積が、この地に強烈な芸術文化創造の磁場を作り出しています。自然と人間の関係、そして人の心の原点ともいうべき「心の自然」に立ち返り、既成の価値を超え、多様性豊かな表現がこの地から生み出されています。
ここでは、太陽の光のみならず様々な感情をあらわし、縄文遺物でも多用された「赤」と、八甲田、奥入瀬をはじめ青森の風景に顕著な「緑」という色彩を基調とした作品をとおして青森を考えてみたいと思います。風景画、人物画、具象画、抽象画とイメージは異なっても、その多様な「色」と「形」を見れば、青森という土地が様々な創造的源泉となっていることが読み取れるでしょう。


展示室J アヴァンギャルドの「色」と「形」

1960年代から80年代初頭にかけアングラ文化の旗手として幅広いジャンルで活躍した寺山修司(1935-1983)。柳田國男、折口信夫ら民俗学者が東北の風土に見出した、古い記憶をとどめる日本の姿や様々なフォークロア、そして自然と人間の関係・・・、寺山にとっての青森もまた、そうした示唆を与えてくれる存在であったのでしょう。ここでは、寺山が率いた「演劇実験室◎天井棧敷」の公演ポスターを紹介し、その鮮烈なイメージから、東北の風土や精神性が日本の「アヴァンギャルド」に与えた影響を振り返ります。


展示室K 佐野ぬい、村上善男、豊島弘尚

弘前市生まれの佐野ぬい (1932 - ) は、豊かな色彩とリズム感溢れる作風で知られています。岩手県生まれの村上善男 (1933 - 2006) は、岡本太郎の薫陶を受けて前衛表現を追求、1982年からは弘前市に滞在し、釘打ちをモチーフにした作品を数多く発表しました。豊島弘尚(1933 -2013) は八戸市に生まれ、郷土や北欧の風土、神話に着想を得た作品を手がけた作家です。
ここでは、北の大地を創造の源泉においた3人の作家の仕事をとおして、青森の「色」と「形」に根差した多様な芸術を紹介いたします。


     

その他の展示

展示室N,棟方志功展示室 青森を描く

棟方志功(1903-1975)は21歳のとき油絵画家を志して初めて上京しました。青森で暮らしていたころは《故郷》というものを特に意識して暮らしてはいなかったと思います。しかし、上京したことにより生活環境が変わったことで、自分の故郷というものを強く意識させられるようになったのでしょう。
棟方志功というと常に熱く郷土愛を語るという印象がありますが、ネブタに没頭する夏、色鮮やかな紅葉に彩られる秋、白一色に埋もれる冬、目に鮮やかな新緑と一斉に花開く春。このような時を繰り返し過ごすことで、棟方志功の心に強い郷土愛が生まれたのでしょう。
今回の展示では、上京したことで改めて故郷の素晴らしさを認識した棟方志功が生涯思い続けた故郷・青森を描いた作品を紹介します。


展示室O,M 馬場のぼるのスケッチ

青森県三戸町出身の漫画家、馬場のぼる(1927-2001)は、絵本『11ぴきのねこ』(こぐま社)シリーズの作者として広く知られています。一冊目の『11ぴきのねこ』は1967(昭和42)年に出版された作品ですが、来年誕生50年を迎える現在も、多くの子どもたちに愛され続けています。
馬場のぼるの作品の魅力は、読者の予想を裏切るような驚くべきオチが用意されたストーリー展開と、シンプルでありながらも生き生きとした線で表情豊かに表現された絵が、互いを補い合いながら、一つのストーリーを奏でていくところにあるといえます。文章の語り口の面白さが読者を作品世界へと導き、絵がストーリーの細部や微妙なニュアンスを語り、その作品世界をより深めていくのです。
 今回の展示では、作家のアトリエに残されていたスケッチブックを中心に紹介します。


展示室I 成田亨:異形の神々

「ウルトラQ」、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」に登場するヒーロー、怪獣、宇宙人、メカニックのデザインを手がけ、その世界観を構築した成田亨(1929-2002)。もともと美術家、彫刻家であった成田は、怪獣デザインに芸術家としての持てる力、すなわち成田が同時代の美術や西洋モダンアートから吸収した造形センスを惜しみなく怪獣デザインにつぎ込み、誰も目にしたことのない意外性を持つ形が次々に生み出され、今も変わらず愛され続けています。形そのものを創出する彫刻家の仕事をそこに認めることができるでしょう。
今回の展示では、酒呑童子の伝説に着想を得た成田彫刻の集大成である《鬼モニュメント》(1991年)をはじめとする鬼の作品と、怪獣のデザイン原画を比較して展示いたします。



通年展示

展示室F,G 奈良美智 《Puff Marshie》《Hula Hula Garden》

国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
 青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、170点を超えるそのコレクションの多くは、奈良が1988年から2000年まで滞在したドイツで生み出されたものです。
この展示室では、当館がほこる奈良美智の90年代のコレクションを中心に、《Puff Marshie (パフ・マーシー) 》(2006年)や《Broken Heart Bench (ブロークン・ハート・ベンチ) 》(2008年)など、作家からの寄託作品を展示しています。


アレコホール マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画

青森県は1994年に、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール (1887-1985) が制作した全4幕から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
ユダヤ人のシャガールは1941年、ナチの迫害から逃れるためにアメリカへ亡命します。バレエ「アレコ」の舞台美術は、画家がこの新大陸の地で手がけた初の大仕事でした。
1942年に初演をむかえたバレエ「アレコ」の振付を担当したのは、ロシア人ダンサーで、バレエ・リュスで活躍したレオニード・マシーン。音楽には、ピョートル・チャイコフスキーによるイ短調ピアノ三重奏曲をオーケストラ用に編曲したものが用いられ、ストーリーはアレクサンドル・プーシキンの叙情詩『ジプシー』を原作としていました。
シャガールは祖国ロシアの文化の粋を結集したこの企画に夢中になり、たくましい想像力と類いまれな色彩感覚によって、魅力あふれる舞台に仕上げたのです


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