会期:2009年9月11日 (金) - 2009年12月25日 (金)

特集展示:祈りと瞑想
     1) 棟方志功の神仏
 
     2) 祈りの形、瞑想の造形
        ~小野忠弘、小坂圭二、村上善男、豊島弘尚
特別公開:パブロ・ピカソ『女の頭部、横顔』幻の第一ステート
×Aプロジェクトno.8 首藤晃:アンビヴァレント・オブジェクツ - 両義的な物体


展示のみどころ

平成21年度のコレクション展は1年を大きく前期と後期にわけ、それぞれにテーマを設けて構成しています。年間のテーマは「笑い」と「祈り」。桜やねぶたまつりなど、華やかで陽気な季節である春から夏、思いを深め、雪のなかで静かに春をまつ秋から冬にかけてと、季節の特徴と変化が鮮やかな青森の風土の中で育まれた芸術の二つの側面を軸に展示を構成していきます。
秋の特集テーマは「祈りと瞑想」。心の中の感情や情熱を外に向けて表現するだけでなく、神々に祈りをささげたり、あるいは造形を通じて、世界や宇宙に関する深い思索を伝えたり、美術作品にはそのような宗教的・哲学的な性格もあります。今回は、棟方志功の神仏をテーマにした作品、小坂圭二の独特の造形の中に深い宗教的な思索を感じさせる彫刻作品、小野忠弘や豊島弘尚、村上善男たちの宇宙的なひろがりをもった一連の作品などを展示します。これらの作品との対話は、秋にふさわしく、芸術を通じて自らの内面をのぞきこむような時間をつくってくれるでしょう。
また、この他に版画作品を特集して展示します。中でもパブロ・ピカソの『女の頭部、横顔』の第一ステートは、世界初の一般公開です。20世紀最大の巨匠といわれるピカソの若き日の繊細な精神が凝縮された傑作であるこの銅版画は「サルタンバンク・シリーズ」の一点として知られていますが、これよりも前の段階の版で摺られた、図柄が部分的に異なる作品がこの第一ステートで、現在世界に一点しか確認されていません。この他にも、海外の版画家たちの横顔を題材にした作品、「色・線・形の魅力」というテーマでまとめられた国内外の版画作品を展示しています。
コレクション以外の作家などに、青森県立美術館のA (Aomori) をかけあわせることで青森県の特性を浮かびあがらせ、新しいアートの形を発信する×A (バイエー) プロジェクト。今回は、弘前大学卒業後、青森を拠点に制作活動を行っている若手アーティスト首藤晃をとりあげます。鉄、木、ウレタンなどを素材にした首藤の作品は、見る者に原初的な生命力と精神性を強く印象づけます。リアス・アーク美術館や国際芸術センター青森での個展など、近年活躍の場をひろげ、注目をうけているアーティストです。
このほかに石井康治、成田亨、奈良美智、寺山修司の作品等もあわせて展示します。


各展示室紹介

棟方志功展示室 | 棟方志功の神仏
Munakata Shiko’s Gods and Buddha

棟方志功の作品には神仏をテーマとしたものが数多くあります。それらは仏像や仏教の経典、伝説などを題材に制作されていますが、型にとらわれることなく自由に描かれています。人間のような姿で描かれることもしばしばあり、棟方は身近な存在として神仏を捉えていたようです。それらの作品に込められているものは、あらゆるものに対し自然に湧き上がってくる祈りの心でした。
民芸運動との出会いや疎開先の富山で触れた浄土真宗など、棟方の作品制作に強い影響を与えたものは様々ありますが、棟方の宗教心は幼い頃より日々の生活の中で自然に培われたものといいます。後年、随筆や自伝の中で、正月になると掛けられた青不動の掛軸や、信心深い祖母に連れられて見たお寺の地獄の掛図、貧しい生活の中での父母の哀しい思い出などを記し、自分の身体はそのような中から湧いてきているものであり、「身から出ているもの、身から湧くもの、そういう事が、宗教だと思います。」と述べています。
そのような棟方の宗教心は板画をはじめとした数々の作品に昇華されました。今回の展示では、代表作《二菩薩釈迦十大弟子》、父母への想いを天使の姿に込めた《Angeles (A) 》などの板画作品や、板戸に描かれた静謐な倭画《御三尊像》など、祈りの想いを様々に表現した棟方の神仏作品を紹介します。「ヨロコビモ、オドロキモ、カナシミモ、湧イテクルヨウニ板画ガ湧イテ来マス。」と述べている棟方の尽きることのない祈りの表現をご覧下さい。


展示室K | 村上善男:津軽を想う
Murakami Yoshio : From Tohoku

東北の地に根をはり、東北の風土と一貫して向き合い続けた美術家村上善男(むらかみ・よしお)(1933 ? 2006) 。
1950年代後半から活動を開始し、1960年代には注射針を画面に無数貼り付けた作品、さらには計測器具、新聞、各種統計図等にあらわれる数字を構成した作品で高い評価を得た村上は、1970年代に入って気象図や貨車をモチーフにした作品へと展開し、1982年以降は弘前市を拠点に活動を続け、古文書を裏返して貼り込んだ上から、あたかも釘を打つように白い点を描き、点と点とを結ぶ「釘打図」を数多く手がけていきました。時代を追うごとにその画業は大きく展開しましたが、緻密な計算による画面構成と抑制の効いた色彩を持つ理知的な作風が、村上芸術の一貫した特徴と言えましょう。
形式的な伝統主義を越え、東北の磁場を自己に引きつけつつ、北の風土が持つ「根源性」、「普遍性」の探求を続けた村上の作品群をとおし、風土と芸術の豊かな関係性について想いをめぐらせてみてください。


豊島弘尚:故郷と宇宙、生と死をめぐる瞑想
heaven and earth, life and death

展示室Iでは、「祈りと瞑想」の一環として、豊島弘尚 (とよしま・ひろなお) を特集展示します。
故郷、八戸に伝わる独特の獅子舞である「墓獅子」をモチーフにした作品を出発点に、地上から天空の星々の世界まで、生と死をめぐって自在に往還する豊島の作品世界をご紹介します。


展示室H | 小坂圭二・小野忠弘:祈りのかたち、瞑想の造形
KOSAKA Keiji・ONO Tadahiro : Figure of Prayer, Form of Meditation

このコーナーでは、二人の作家の作品を展示します。ともに、独自の抽象的な造形の中に、世界や宇宙、神と人間といった哲学的な思索を感じさせる、「祈りと瞑想」という今回のテーマを体現するような作品を制作しました。
彫刻家の小坂圭二 (こさか・けいじ) は野辺地町出身。野辺地中学時代に教員としてきていた画家の阿部合成に教えをうけ、美術家の道を志します。1942年東京美術学校彫刻科に入学し、柳原義達に師事しましたが、翌年からラバウルに出征し、激戦地で苦渋に満ちた戦争を体験します。帰国後復学、新制作展に出品。38才で洗礼をうけ、さらに2年間のフランス留学を経て、独自の造形の宗教的な彫刻を制作しました。
弘前市出身の小野忠弘 (おの・ただひろ) は廃品を利用したジャンク・アートの第一人者として、ヴェネツィア・ビエンナーレに出品するなど、世界的にも高く評価された前衛のアーティストです。福井県の三国町に居を定め、教鞭をとるかたわら、古美術や考古学にも造詣が深く、同地の文化財審議委員などもつとめていました。今回展示するのは晩年の「BLUE」というシリーズです。様々な古物が貼り込まれた深い青の地に白いエナメルのドリッピングが自在に走り、遙かにひろがる夜の空を思わせるような雄大・深遠な印象を与え、一つ一つが異なる小宇宙を形作っています。


展示室P | パブロ・ピカソ『女の頭部、横顔』 幻の第一ステート
Pablo Picasso : Head of a Woman in Prfile, the First State

今から100年ほど前に制作された、パブロ・ピカソの銅版画作品『女の頭部、横顔』は、20世紀最大の巨匠として知られる芸術家の青春時代を象徴する傑作です。1990年頃、それまで存在を知られていなかったこの作品の第一ステートが発見されました。世界で1点しか確認されていないその貴重な第一ステートを特別公開いたします。


展示室O | ×Aプロジェクトno.8  首藤晃:アンビヴァレント・オブジェクツ -両義的な物体
SYUDO AKira : Ambivalent Objects

「× (バイ) A (エー) プロジェクト」とは、青森県立美術館のコレクションと建築空間の新たな魅力を引き出すための継続的プロジェクトです。
国内外のアーティストの作品やさまざまな創造の分野で活躍する人たちの発想など、青森県立美術館のコレクションあるいは建築空間に、新しい可能性を切り開くダイナミックな要素をかけ (×) 合わせることで、その特性と普遍性について考えます。
今回はその第8弾ということで、青森市を拠点に精力的な活動を行っている彫刻家、首藤晃 (しゅとう・あきら) の作品を紹介します。
首藤晃は1969年、北海道の江別市に生まれ。北広島市で育ち、2001年に弘前大学大学院教育学研究科美術教育専修修了後は青森を拠点に制作活動を行っています。国際芸術センター青森やリアス・アーク美術館、北網圏北見文化センター美術館での個展のみならず、北海道立函館美術館、夕張市美術館、鶴岡アートフォーラムでの企画展などにも多数参加。鉄と木を素材にした、生命のようにも、そして機械のようにも見える不可思議な彫刻作品を発表しています。


展示室Q・M | 「横顔」の魅力 /色・線・形の魅力
"Profile" / color,line,form

この展示室では、2つのテーマによる版画の特集展示を行います。
ひとつは、「横顔」の魅力です。
ピカソの『女の頭部、横顔』でも大きな魅力になっている、横顔がもつ独特の美しさをご紹介します。
もう一つのテーマは、色、線、形の魅力です。
絵は、線と色を使って形をつくることで描きます。色と線と形が織りなす豊かな世界をご紹介します。
(展示作家:クレー、マティス、カンディンスキー、恩地孝四郎 (おんち・こうしろう)、関野凖一郎 (せきの・じゅんいちろう)、高木志朗 (たかぎ・しろう))


展示室L | 石井康治:詩・季・彩 - 秋の景色 -



展示室J | 成田亨:怪獣デザインの美学

青森県出身の成田亨 (なりた・とおる)(1929 - 2002) が手がけた「ウルトラ」シリーズの怪獣デザイン原画を紹介します。
彫刻家としての感性、芸術家としての資質が反映されたそのデザインは、放映後40年がたつ現在もなお輝きを失っていません。
青森県立美術館では、「ウルトラQ」、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」に登場するヒーローやメカ、怪獣、宇宙人のデザイン原画計189点を平成11年度に一括して収集しています。
今回はその中でも人気のある《ウルトラマンイラスト》、《ウルトラマン初稿》3点、《カネゴン初稿》2点、《キングジョー初稿》等を展示します。


展示室F | 奈良美智:インスタレーション
Installation by NARA Yoshitomo

青森県弘前市出身の奈良美智 (なら・よしとも) は、弘前市の高校を卒業後、東京と名古屋の大学で本格的に美術を学び、1980年代半ばから絵画や立体作品、ドローイングなど、精力的に発表を続けてきました。青森県立美術館は、1997年から奈良美智作品の収集をはじめ、現在その数は150点を越えます。
《Hula Hula Garden》と《ニュー・ソウルハウス》という2点のインスタレーション (空間設置作品) を中心に、奈良美智の世界をご紹介します。


寺山修司:寺山修司とグラフィックデザイン
TERAYAMA Shuji and Graphic Design

1967年、寺山修司は「見世物の復権」をテーマに劇団「演劇実験室◎天井棧敷」を立ち上げ、以後の活動の拠点としていきます。天井棧敷は旧来的な演劇の制度に異議を申し立て、観客や不特定多数の人々を挑発する実験的な試みを数多く仕掛けていきました。天井棧敷は海外でも高い評価を受け、1969年のドイツ公演を皮切りに、ほぼ毎年のように海外公演が続きました。
寺山が活躍した1960 - 70年代はいわゆるアングラ文化が全盛の時代でした。高度成長によって近代化が急速に進む一方、社会的な構造と人間の精神との間に様々な歪みが生じ、そうした近代資本主義社会の矛盾を告発するかのように権力や体制を批判、従来の価値観を否定していく活動が盛んとなっていったのです。特に寺山は大衆の興味や関心をひきつける術に特異な才能を発揮しました。演劇や実験映画ではそれが顕著で、演劇、映画のあらゆる「約束事」が否定され、感情や欲望を刺激するイメージで覆い尽くされた寺山の斬新な作品は多くの人々を虜にしていきました。
このコーナーでは、アングラ文化の象徴とも言うべき寺山のポスター18点を紹介いたします。


展示室N | 特別史跡 三内丸山遺跡出土の重要文化財

縄文の表現
特別史跡三内丸山遺跡は我が国を代表する縄文時代の拠点的な集落跡です。縄文時代前期中頃から中期終末 (約5500年前-4000年前) にかけて長期間にわたって定住生活が営まれました。これまでの発掘調査によって、住居、墓、道路、貯蔵穴集落を構成する各種の遺構や多彩な遺物が発見され、当時の環境や集落の様子などが明らかとなりました。また、他地域との交流、交易を物語るヒスイや黒曜石の出土、DNA分析によるクリの栽培化などが明らかになるなど、数多くの発見がこれまでの縄文文化のイメージを大きく変えました。遺跡では現在も発掘調査がおこなわれており、更なる解明が進められています。
一方、土器や土偶などの出土品の数々は、美術表現としても重要な意味を持っています。当時の人々が抱いていた生命観や美意識、そして造形や表現に対する考え方など、縄文遺物が放つエネルギーは数千年の時を隔てた今もなお衰えず、私達を魅了し続けています。
青森県立美術館では国指定重要文化財の出土品の一部を展示し、三内丸山遺跡の豊かな文化の一端を紹介します。縄文の表現をさまざまな美術表現とあわせてご覧いただくことにより、人間の根源的な表現について考えていただければ幸いです。


アレコホール | マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の背景画

青森県は1994年に、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール (1887-1985) が制作した全4幕から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
ユダヤ人のシャガールは1941年、ナチの迫害から逃れるためにアメリカへ亡命します。バレエ「アレコ」の舞台美術は、画家がこの新大陸の地で手がけた初の大仕事でした。
1942年に初演をむかえたバレエ「アレコ」の振付を担当したのは、ロシア人ダンサーで、バレエ・リュスで活躍したレオニード・マシーン。音楽には、ピョートル・チャイコフスキーによるイ短調ピアノ三重奏曲をオーケストラ用に編曲したものが用いられ、ストーリーはアレクサンドル・プーシキンの叙情詩『ジプシー』を原作としていました。
シャガールは祖国ロシアの文化の粋を結集したこの企画に夢中になり、たくましい想像力と類いまれな色彩感覚によって、魅力あふれる舞台に仕上げたのです。

作品名 制作年 材質技法 寸法 (cm)
『アレコ』第1幕 《月光のアレコとゼンフィラ》 1942年 綿布・テンペラ 887.8×1472.5
『アレコ』第2幕 《カーニヴァル》 1942年 綿布・テンペラ 883.5×1452.0
『アレコ』第4幕 《サンクトペテルブルクの幻想》 1942年 綿布・テンペラ 891.5×1472.5
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