アーティストの眼
会期:2017年12月16日(土)-2018年3月4日(日)


絵本『ちいさいおうち』の作者、バージニア・リー・バートンの特集展示を行う他、ガラス作家・石井康治、グラフィックデザイナー・菊地敦己、写真家・小島一郎、デザイナーとしても活躍した彫刻家・成田亨の作品等を紹介します。



  • 『ちいさいおうち』原画
    ミネソタ大学図書館カーランコレクション所蔵
    ©Aristides Burton Demetrios


  • 石井康治《樹映—冬の景》
    ガラス、宙吹き
    青森県立美術館寄託
    撮影:大堀一彦


  • 小島一郎
    津軽地方西北部
    1957-58年
    ゼラチン・シルバー・プリント
    29.6×19.6cm



通年展示


アーティストの眼

展示室N・棟方志功展示室:棟方志功のデザイン力

棟方のデザインの仕事は幅広く、ポスター、包装紙などのパッケージ、本の装幀、舞台の緞帳、着物や帯の手描き模様、陶芸の絵付けなど多方面に及んでいます。
なかでも棟方がデザインした装幀や挿絵の仕事は、生涯1000冊近くにも及んだと言われ、それはもともと棟方自身が文学に大変関心が深かったことに加えて、棟方と多くの文化人たちとの活発な交流がもたらしたものでした。装幀の仕事の転機となったのは、ひとつは戦争末期に疎開先として選んだ富山県福光(ふくみつ)町(現・南砺(なんと)市(し))にいた時期で、板木(はんぎ)の入手が困難なことから、端材を活かす苦肉の策として手摺り、手彩色、手綴じの「板画本」を制作、今では入手困難な幻の本が生まれるきっかけとなりました。もうひとつは、昭和30年代に入り、谷崎潤一郎が雑誌に連載する描き下し小説『鍵』の挿絵作家として棟方を指名したところ、小説の内容とあいまって連載当初から評判を呼び、棟方は装幀作家としても人気を得ることとなりました。
今期の展示は、デザイナーとしても優れた力を発揮した棟方の様々なデザインに関る仕事を紹介します。


展示室P:菊地敦己 ファッションブランドのためのデザイン

菊地敦己(1974- )は、青森県立美術館のVI(ヴィジュアルアイデンティティー)計画を担当するアートディレクター/グラフィックデザイナーです。美術館全体の体験をイメージとして伝達していくことを意図してデザインされたシンボルマークやロゴタイプ、サイン等は美術館の建物や周囲の環境と調和しながら独自の景色を作り出し、開館以来多くの来館者に親しまれています。
菊地は、美術やファッション、建築などの分野のグラフィックデザインを多く手がける他、グラフィックデザインそのものを考察する作品制作や発表も行っています。
今期の展示では、2つのファッションブランド「ミナ ペルホネン」「サリー・スコット」のために制作されたポスターを紹介します。


展示室Q:成田亨 怪獣デザインの美学

成田亨は、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」という初期ウルトラシリーズのヒーロー、怪獣、宇宙人、メカをデザインし、日本の戦後文化に大きな影響を与えた彫刻家兼特撮美術監督です。
武蔵野美術学校研究科に在籍していた1954年、成田は人手の足りなかった「ゴジラ」の製作に参加、そこで円谷英二と出会い、以降特撮美術の仕事も数多く手がけるようになります。1965年、東宝撮影所で円谷英二と再会し、「怪獣のデザインはすべて自分がやる」という条件のもと「ウルトラQ」の2クールから制作に参加、以降「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」までのシリーズに登場するヒーロー、怪獣、宇宙人、メカニック等のデザインを手がけます。放映に際し、「これまでにないヒーローの形を」という脚本家・金城哲夫の依頼を受けた成田は、ウルトラマンのデザインを純粋化という「秩序」のもとに構築し、対する怪獣のデザインには変形や合成といった「混沌」の要素を盛り込んでいきます。
美術家としての高い感性によってデザインされたヒーロー、怪獣は、モダンアートの成果をはじめ、文化遺産や自然界に存在する動植物を引用して生み出される形のおもしろさが特徴です。誰もが見覚えのあるモチーフを引用しつつ、そこから「フォルムの意外性」を打ち出していくというその一貫した手法からは成田の揺らぐことのない芸術的信念が読みとれるでしょう。


展示室M:小島一郎 昭和30年代の津軽と下北

大正13(1924)年、青森市大町で、玩具と写真材料を扱う商店の長男として生まれた小島一郎は、青森県立商業学校(現: 青森県立青森商業高等学校)を卒業後、出征。戦後の混乱期を経て、昭和29年頃から本格的に写真を始めます。郷土、青森に生きる人々への深い共感を、覆い焼きや複写の技法を駆使しながら、印画紙に刷り込むようにして力強く焼きつけた写真の数々は、39歳という早すぎる死の後も、展覧会や写真雑誌で取り上げられ、近年その評価は高まり続けています。
日本が高度経済成長を迎えていた昭和30年代、地方の農村から多くの人々が大都市へと流出し、長く続いてきた農村や漁村の暮しは急激な変化の波にさらされることになります。こうした時期、カメラを手に県内を歩き続けた小島の眼差しは、萱葺屋根の家、念仏講に集う人々、農作業に従事する大人たちとその傍らにいた子どもたちなどに向けられていました。そこから生み出された写真の1枚1枚が、その後しだいに姿を消すことになる農村、漁村の共同体の記念すべきポートレートとなっています。


展示室L 石井康治:詩・季・彩 - 春を待つ

「色ガラスを用いて自分のイメージを詩のような感じで作りたい。」
石井康治は、1991年、今、県立美術館が建つ場所に程近い、青森市三内に工房を構え、1996年に急逝するまで、この地で精力的にガラスの素材と技法について研究を重ね、青森の四季と風土を彩り豊かなガラス作品にうつし取っていきました。
青森の自然に魅せられた石井の制作は、ドローイングやデッサンなどで自然を写生することからはじまり、工房で熱したガラスを中空の棹に巻き取り、息を吹き込んで膨らませ、そこに選び抜いた色ガラスを溶着させ、イメージしたかたちを作りあげていきます。光と風が織りなす北国の四季から受けたインスピレーションは、繊細な感性と優れた造形感覚、そして確かな手の技に裏打ちされつつ、自然との対話、ガラスという素材との対話を通して作品に結実していったのです。
自らの創作テーマを「詩・季・彩」という言葉で語っていた石井の作品は、彼が愛した青森の四季を謳う一篇の詩のように、私たちに語りかけてきます。石井がガラスで描き上げた四季から、今回は冬をテーマに、多彩な雪の表象とともに春を待つ想いを紹介します。


展示室JIH バージニア・リー・バートン 『ちいさいおうち』をかいたひと

1942年、アメリカで出版された絵本『ちいさいおうち』。小高い丘のうえにたつ「ちいさいおうち」を主人公に、移りゆく時間の流れと広がりを見事に表現した本作は、1954年に日本でも翻訳・出版され、以来、多くの人々に愛され続けています。
この絵本の作者、バージニア・リー・バートンは、多くの名作絵本が誕生した20世紀前半のアメリカ絵本黄金期を代表する作家の一人です。バートンは、生涯に13冊の子どものための本を残しましたが、それらの作品からは、私たちが生きる世界の真の姿を生き生きとした描写によって子ども達に伝えようとする作家の強いエネルギーを感じとることができます。
一方、バートンは絵本作家としてだけでなく、デザイナーとしてテキスタイルやグラフィックの世界でも活躍しました。とりわけ、バートンが近所に住む主婦たちのために始めたデザイン教室を母体として、1941年に結成された芸術集団「フォリーコーブ・デザイナーズ」の活動は、手仕事のあたたかさと作品としての質の高さによって国際的にも知られる存在となりました。
本展示は、『ちいさいおうち』の原画を中心に、絵本のためのスケッチや「フォリーコーブ・デザイナーズ」で制作したテキスタイル、ペーパーワークの作品資料等を紹介しながら、バージニア・リー・バートンという作家の創造と発想の源泉に触れる企画です。

特別協力:公益財団法人ギャラリーエークワッド
協力:アリスティデス・デメトリアス / ミネソタ大学図書館カーランコレクション / 公益財団法人東京子ども図書館 / 宮城正枝 / 田中厚子 / 木城えほんの郷 / 教文館ナルニア国

ページトップ

通年展示

展示室F、G:奈良美智 《Puff Marshie》《Hula Hula Garden》

国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、170点を超えるそのコレクションの多くは、奈良が1988年から2000年まで滞在したドイツで生み出されたものです。
この展示室では、当館がほこる奈良美智の90年代のコレクションを中心に、《Puff Marshie (パフ・マーシー) 》(2006年)や《Broken Heart Bench (ブロークン・ハート・ベンチ) 》(2008年)など、作家からの寄託作品も展示しています。


アレコホール:マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画

青森県立美術館の中心には、縦・横21m、高さ19m、四層吹き抜けの大空間が設けられています。アレコホールと呼ばれるこの大きなホールには、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。青森県は1994年に、全4作品から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
これらの背景画は、帝政ロシア(現ベラルーシ)のユダヤ人の家庭に生まれたシャガールが、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため亡命していたアメリカで「バレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)」の依頼で制作したものです。大画面の中に「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールの本領が遺憾無く発揮された舞台美術の傑作です。
残る第3幕の背景画《ある夏の午後の麦畑》は、アメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵され、長らく同館の西側エントランスに展示されていましたが、このたび同館の改修工事に伴い、4年間の長期借用が認められることになりました。青森県立美術館での「アレコ」背景画全4作品の展示は、2006年の開館記念で開催された「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」展以来です。背景画全4作品が揃ったこの貴重な機会に、あらためてシャガールの舞台美術作品の魅力をお楽しみください。

★フィラデルフィア美術館所蔵の第3幕は、長期の借用となるため、函館税関からアレコホールを保税展示場とする許可をいただいて展示しています。
展示期間:2017年4月25日 - 2021年3月頃(予定)
アレコホールへのご入場には、コレクション展もしくは企画展の入場チケットが必要です。


ページトップ