遥かなるルネサンス展関連企画
信仰の旅路:Routes of Faith
2017年7月8日(土)- 9月10日(日)


旧(ふる)く人は、信じるものを求めて旅を重ねてきました。
コレクション展第二弾では、夏の企画展「遥かなるルネサンス 天正遣欧少年使節がたどったイタリア」にちなんで、「信仰」や「旅」をキーワードに作品を展示します。本展は己の信念のもとに生きた県ゆかりの美術家らの軌跡、戸来村(現・新郷村)のキリストやピラミッド伝承、小川原湖の姉妹伝説といった種々の断片をもとに構成され、ルネサンスの「豊穣なる美の世界」の裏にひそむ青森の芸術世界を旅する、道しるべの一つとなることでしょう。



  • 鳥谷幡山
    《十和田湖の図》
    紙本淡彩


信仰の旅路


通年展示


信仰の旅路

展示室N:まぼろしの地誌

戦前戦後にかけての青森。故郷を愛し、そこに「ピラミッド」や「キリストの墓」の存在を主張した日本画家がいました。名を鳥谷幡山。彼が風光明媚な故郷-十和田湖の風景から見出した上記のイメージは、強烈な土地の幻影といえます。
同じ頃、青森と東京を行き来しながら確かな技巧と造形意識をもとに、青森を写し続ける写真家がいました。名を小島一郎。その写真に焼き付けられるのは土地そのもの以上に、強固にして時に劇的な小島の眼差しが編んだ「青森」の軌跡です。
鳥谷と小島の青森。作家の土地に対する強烈な信念(=信仰)と視線により編み出されたイメージの数々は、並置されることで奇妙な共振を始めるように思われます。本章では両者の作品を「まぼろしの地誌」という言葉で束ね、鳥谷が十和田湖を描いた作品群と十和田を霊妙なテキストの数々、そして小島の作品の中から特に造形への意識を感じさせる写真作品を紹介し、青森の土地イメージのありかを問います。

出品作家:鳥谷幡山、小島一郎


棟方志功展示室(前半):世界の破れを担うのは-

1953年、十和田湖ほとりに《乙女の像》が完成しました。作者は詩人・彫刻家の高村光太郎。向き合う乙女の姿は、人と土地との調和空間を暗示しているかのようです。
高村の助手に野辺地町出身の彫刻家・小坂圭二がいます。小坂は彫刻がつくる空間に自身の信仰の「よすが」を見出しました。キリスト教的モチーフによる小坂作品からは、彫刻がつくる空間と、その背後に広がる宇宙的空間との共鳴を感じ取ることができます。加えて作品に現れる激しい線。そこには作家自身の中国やラバウル(パプアニューギニア)での戦争体験の影を見ることができます。こうして、いわば「調和と混沌」が同居する小坂作品には「信仰と戦争」という二つの極限体験の間で引き裂かれ、そして両者の裂け目(破れ目)を担う人間存在が表現されているといえます。
本章では小坂作品を軸に高村の《乙女の像》から派生した彫刻作品《手》と、小坂が師事した阿部合成のメキシコにおける土着的キリスト教に根ざした作品群を紹介します。様々な「裂け目」や「距離」をもとに、作品のひらく「空間」について考えます。

出品作家:高村光太郎、小坂圭二、阿部合成


棟方志功展示室(後半):あらゆるものに祈りを

棟方は板画の作品名に「~の柵」と付しました。「柵」は四国巡礼をする人が寺に納める札のことで、「一柵ずつ、一生の間、生涯の道標を一ツずつ、そこへ置いていく。作品に念願をかけておいていく」という思いを表したものです。この柵を置く行為は「際々無限に」続いていくと棟方は述べています。棟方にとって人生の道程は美の巡礼の旅でありました。
棟方作品には神仏を描いた作品がたくさんあります。昭和11年、京都にある陶芸家・河井寛次郎の自宅に約40日間滞在。その間、河井から禅書の講義を受け、社寺仏閣を巡るなど宗教というものを身近にし、このことが後の作品に生かされることとなりました。華厳経、観音経、般若心経の経典や、時にはキリストなどをも題材にしていきます。
棟方は描きおわると世のあらゆるもの、森羅万象に手をあわせました。それが棟方の祈りだったのです。

出品作家:棟方志功


展示室M:信仰の旅路

1987年、小坂圭二は小川原湖に伝わる姉妹の伝説に取材し、二体の彫刻を制作します。父を探して諸国をめぐる旅路の果てに「姉沼」「妹沼」に身を投げた二人。その後小川原湖に名を変える「妹沼」のほとりで小坂は何を考え、制作したのでしょうか。
旅は連鎖反応の如く人と人、人と土地をつなぐもの。小坂と阿部の弟子の一人に、若き日の成田亨がいました。二人から芸術家としての態度や技術を学んだ成田は、その信念(=信仰)を自らのデザイン画や彫刻作品に託します。
本章では小川原湖姉妹伝説に基づく小坂の彫刻像を軸に、成田のドローイング作品を展示することで、芸術家としての信念から青森の土地の姿を逆照射することを試みます。成田の仏像をモチーフにしたウルトラマンや異界のヒーローたち、鉱物や動植物を着想源とした怪獣たち。それらは悩み迷いながら自らの「信仰の旅路」を生きた芸術家自身の化身であると同時に、多様な歴史や信仰を巻き込んで存在する青森という土地の複合性そのものといえるように思われます。本展の「信仰の旅路」を通じて土地を見出す、ということ。それは今語られるものと異なる、土地にまつわる〈もう一つの〉芸術世界を旅することにつながっているのです。

出品作家:小坂圭二、成田亨、阿部合成

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通年展示

展示室F、G:奈良美智 《Puff Marshie》《Hula Hula Garden》

国内外で活躍する青森県出身の美術作家・奈良美智(1959- )は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の立体作品などで、これまで若い世代を中心に、多くの人の心をとらえてきました。
青森県立美術館では、開館前の1998年から、絵画やドローイングなど、奈良美智作品の収集を始めました。現在、170点を超えるそのコレクションの多くは、奈良が1988年から2000年まで滞在したドイツで生み出されたものです。
この展示室では、当館がほこる奈良美智の90年代のコレクションを中心に、《Puff Marshie (パフ・マーシー) 》(2006年)や《Broken Heart Bench (ブロークン・ハート・ベンチ) 》(2008年)など、作家からの寄託作品も展示しています。


アレコホール:マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画

青森県立美術館の中心には、縦・横21m、高さ19m、四層吹き抜けの大空間が設けられています。アレコホールと呼ばれるこの大きなホールには、20世紀を代表する画家、マルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。青森県は1994年に、全4作品から成るバレエ「アレコ」の舞台背景画中、第1幕、第2幕、第4幕を収集しました。
これらの背景画は、帝政ロシア(現ベラルーシ)のユダヤ人の家庭に生まれたシャガールが、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため亡命していたアメリカで「バレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)」の依頼で制作したものです。大画面の中に「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールの本領が遺憾無く発揮された舞台美術の傑作です。
残る第3幕の背景画《ある夏の午後の麦畑》は、アメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵され、長らく同館の西側エントランスに展示されていましたが、このたび同館の改修工事に伴い、4年間の長期借用が認められることになりました。青森県立美術館での「アレコ」背景画全4作品の展示は、2006年の開館記念で開催された「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」展以来です。背景画全4作品が揃ったこの貴重な機会に、あらためてシャガールの舞台美術作品の魅力をお楽しみください。

★フィラデルフィア美術館所蔵の第3幕は、長期の借用となるため、函館税関からアレコホールを保税展示場とする許可をいただいて展示しています。
展示期間:2017年4月25日 - 2021年3月頃(予定)
アレコホールへのご入場には、コレクション展もしくは企画展の入場チケットが必要です。


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