奈良美智なら よしとも [1959-]

1959(昭和34)年、弘前市に生まれた奈良美智は、青森県立弘前高等学校卒業後に上京し、1981(昭和56)年、愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻に入学します。同大学大学院修士課程修了後は、ドイツに渡り(1988年)、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学、ミヒャエル・ブーテやA.R.ペンクのクラスで絵画を学びました。アカデミー修了後、1994(平成6)年にケルンに移り住んで以降、帰国するまでの約6年間は多作な期間で、《Mumps》(1996年)や《Pancake Kamikaze》(1996年)など、挑むような眼差しをもった子どもの姿を描いた奈良の代表的な作品が次々と生み出されました。また、この間、日本やヨーロッパでの個展の機会が増え、しだいにその活動に注目が集まるようになります。
2000(平成12)年、12年間におよぶドイツでの生活に終止符を打ち、帰国。翌年、新作の絵画やドローイング、立体作品による国内初の本格的な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」が横浜美術館を皮切りに国内5ヵ所を巡回します。いずれの会場でも驚異的な入場者数を記録し、美術界の話題をさらいましたが、特に作家の出身地である弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫(現弘前れんが倉庫美術館)で行われた同展は、延べ4,600名にのぼるボランティアにより運営されたもので、市民の主体的な関わりと参画の規模の大きさにおいて、展覧会の歴史上画期的なものとなりました。
2003(平成15)年、クリーブランド現代美術館など米国内5ヵ所で1997(平成9)年以後の作品による個展「Nothing Ever Happens」が開催されます。この頃、大阪のクリエイティブ・ユニットgrafとの協働により、廃材を用いた小屋を中心に展示空間を構成するインスタレーション的な性格の強い作品が増え始めます。2006(平成18)年に弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫で開催された「A to Z」展は、そのシリーズの集大成といえるもので、大小約30軒の小屋の内外に奈良自身や彼と交遊のあるアーティストたちの作品を点在させた会場は、さながら一つの街並みのような様相を呈しました。2010(平成22)年から翌年にかけて、ニューヨークのアジア・ソサエティ美術館で行われた大規模な個展「Nobody’s Fool」も好評を得、同館での過去最多の入場者数を記録しました。同年に奈良は、米文化に貢献した外国出身者をたたえるニューヨーク国際センター賞を受賞。2018(平成30)年には拠点とする栃木県那須市に、自身の私設現代アートスペース「N's YARD」が開設されました。その他、国内外の多くの美術館に作品が収蔵されています。
当館では1998(平成10)年から奈良美智作品の収蔵を始め、現在その数は170点を超えます。コレクション展では、展示替を行いつつ常時奈良の作品を展示しています。また、館の敷地には、巨大な犬の立体像≪あおもり犬≫や、自身のデザインによる建造物「八角堂」内に設置されたブロンズ像《Miss Forest / 森の子》といった、建築空間を意識して作られたモニュメンタルな作品もあります。ほかにも青森県内では、十和田市現代美術館の外壁の《夜露死苦ガール》、弘前れんが倉庫美術館の《A to Zメモリアル・ドッグ》といった奈良美智作品を見ることができます。

続いてゆく道に

≪続いてゆく道に≫
1990(平成2)年
アクリル・キャンバス
100×100cm
© Yoshitomo Nara

Mumps

≪Mumps≫
1996(平成8)年
アクリル・綿布を貼付したキャンバス
120×110cm
© Yoshitomo Nara

アオモリ・ヒュッテ1

≪アオモリ・ヒュッテ1≫
2016(平成26)年
ミクストメディア
© Yoshitomo Nara