アートプロジェクト こども−おとなコネクション!!

おとなのためのアートプロジェクト

工藤健志(学芸員)


会期31日、総入場者9,280名。これが「成田亨が残したもの」の数値的結果である。会場は七戸町立鷹山宇一記念美術館。鉄道の通っていない七戸町に、県内はおろか、北海道、東北、関東、関西、四国、中国、九州各地から多くの人が集まり、さらには東アジアからの来館者もあるなど、成田亨という作家の求心力には改めて驚かされた次第。しかし、ある特定層には神様的な存在として支持を集める成田亨も、実際のところ美術家としての認知度は(一般的にも、業界的にも)かなり低く、例えウルトラマンやバルタン星人を知っていても、その生みの親が青森県出身の彫刻家であることはほとんど知られていない。「アートツアー・イン青森」という県立美術館開館に向けてのプレイベントは昨年の工藤哲巳展でスタートしたが、2回目で成田亨を取り上げたのは、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンのデザイン原画189点を所蔵する美術館として、ウルトラシリーズの造形的な基礎を作ったのが成田亨であること、そしてその造形理念がアーティストとしての高い資質に基づくものであったことを開館前にきちんと紹介しておきたかったからである。
加えて、「アートツアー・イン青森」は、単なるプレイベントではなく、県内各地でアートプロジェクトを展開していくという美術館の活動方針のテストケースとしても位置づけられている。キッズと同様、開催地と共同で企画から運営までを手がけていくのだが、毎度のように、それぞれの自治体の仕事の進め方の違いや、「アート」というものに対しての認識のズレが生じて、日頃我々がいかに狭い世界の基準で物事を考え、仕事を処理しているかを痛感させられる。それを拒否するのでなく、むしろ歓迎すべき態度こそが重要であろう。もともと、秩序維持のために価値観の多様性を否定する日本型組織社会(美術館とて例外ではない)とアーティストとは水と油の関係に近い。一般的にはその両者のせめぎ合い(自己規制も含めて)で展覧会の内容は決定されていくが、そこに第三の組織や個人が加わることで思考や価値観の幅が広がり、企画に深みが増す可能性が生まれるのだ。
むろん、広報活動の手法、来館者への対応など、鷹山宇一記念美術館から学んだことも多くあったが、「館内での活動を街へと広げたい」という我々の漠然とした提案に対して、七戸町が地元の課題として積極的に取り組み、様々な問題を乗り越えながら、商店街の古い商家「山勇」での魅力的かつサイトスペシフィックな作品展示へとつながったことの意義は何よりも大きい。
単独では為し得ないことを、それぞれの力をあわせることで乗り越え、さらに予想以上の成果を生み出せること、そして双方の経験値があがることで、今後の活動がともに広がりを持っていくこと。予算削減のための共同企画ではなく、今ここでしか成立しないプロジェクトのために…。ここに、アウトリーチ的な発想を超えたアートプロジェクトの本質があると言えよう。
入館者数から見ると、展覧会としては一応の成果を収めたと言えるかも知れない。しかし大切なのは、ノスタルジーを超えて、怪獣デザインに込められた芸術的理念と、現代文化に与えた影響の大きさを、どれだけの観客に(肯定も批判も含めて)考えてもらえたのかということ。アートプロジェクトの成果と同様に数値化できないこれら要素こそ、ほんらい「文化」と称されるべきものではなかろうか。



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