アートプロジェクト こども−おとなコネクション!!

こどものためのアートプロジェクト

池田 亨(学芸員)

キッズ・アートワールドあおもりは子供を主な対象にするアートプロジェクトである。子供故に、内容や表現の形式において制約はあったのだけれども、逆に、子供を対象にするということによって、結果にこだわらず、様々な点で自由であり得た側面もあるのではないかと思っている。今回は「言葉・音・形」をテーマに、多様な表現に親しんでもらうことを主目的に落語家、詩人、音楽家などいわゆる美術家以外のジャンルのアーティストも招聘した。昨今の日本語ブームにあやかって、というわけでもないのだけれど、どこか体育会系の雰囲気の漂う朗読のすすめなどより、自発的な、からだの内側から出てくる言葉の楽しさ、表現することの喜びを大事にしたいという気持ちが根底にあったのだが、その意味では成功裡に終えられたのではないかと思う。低学年の子供たちが中心だった入船亭扇辰の落語のワークショップでは、いたずらっ子も内気な女の子も、生き生きと『寿限無』の一節を所作を交えて演ずるまでになった。また覚和歌子による詩作と朗読のワークショップも、ペンネームをつけるところからはじまり、準備された曲に詞をつけ、最後の発表にいたるまで、こどもたちの自在な発想と新鮮な言葉の使い方にむしろ圧倒されるような楽しいものとなった。また、つのだたかしによる古楽器制作と演奏のワークショップでは、一週間かけて、新進気鋭のギター製作家田邊雅啓の指導のもと、フラットリュートやミルク缶のウクレレ、ホタテ貝のカスタネットなどを仕上げた子供達が、最終日のコンサートで中世ヨーロッパの舞曲を見事に演奏した。その他のどのワークショップでもアーティストたちは、ある時は子供達の過剰なまでの自発性に当惑し、導かれながら共に作ることの喜びを味わっていたと思う。会田誠による「じょうもんしき かいじゅうの うんこ」もまた、子供のためであるからこそ実現できた企画だろうと思う。アートツアーの「成田亨が残したもの」との共同企画として、「青森、子供、怪獣」の三題噺として発想されたこのプロジェクトは、県立美術館建設現場などから持ってこられた40トンを超える粘土で巨大なうんこのオブジェをつくり、野焼きしたのち、破壊してうめもどすという企画である。むつ市スタッフや現地の高校生、一般ボランティア、さらにワークショップ参加者等あわせてのべ100人以上の労働力、2週間以上(野焼きまでいれると約2ヶ月近く)の時間をを費やし、さらには重機を駆使して遂行された。最終的には壊してしまうことのわかっているこのオブジェをつくるために、具体的な結果や利害を考えず、最大の労力と集中力をもって行われたこの壮大ないたずらは、純粋な遊戯としてのアートのもっとも美しい本質を体現していたのではないかとすら思う。アートにとっては厳しい時代である。展覧会やアートプロジェクトには、収益や文化的価値、地域の活性化など、さまざまな思惑がからみ、社会におけるアートの役割について自覚的であることを余儀なくされる。アートのもつ無償性・自由といった重要な性格がいつしか忘れらされていくような気さえする。そんな時代であるからこそ、子供のためのアートプロジェクトの意義はあるのではないだろうか。そこではなにものにも代え難い表現することの喜びという原点に立ち戻らざるを得ないからである。

特集
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