アートが作るネットワークとは ― 「キッズ・アートワールドあおもり2002」が残したもの

開催地のスタッフに聞く―〈キッズ・アートワールド〉ってなんだった?―

三戸町教育委員会社会教育課主事 寺尾 葉


正直いえば〈キッズ・アートワールド〉が三戸町にくると聞いたとき私が抱いた感想は「この人たちは(担当の方々です、ごめんなさい。)こども達に何を求めているんだろう、こどもにアートなんて分かるはずがないのに。」というものだった。アートという概念はあまりに広すぎるし、抽象的だから、こどもにアートを体験させるといわれてもピンと来なかった。所詮、私たちが普段こども対象に行っている体験活動と何ら変わりがないように思えたのだ。今でも基本的にはその考えに変わりはないけれど、キッズアートの約2週間を経験してみて新たに発見したことは多くあった。
ひとつは、ワークショップがこども達の自由な発想で成り立ち、進行していて、それはアートの基本姿勢に共通するものだということ。
二つ目は、こども達はどんな新しい経験でも、驚くほどの柔軟性でそれらを日常のものに変えてしまうこと。「経験すること」がこどもたちの未来に与える影響は、本当に計り知れないとあらためて思い知らされた。
〈キッズ・アートワールド〉で一緒に過ごしたこども達は、思いもよらない瞬間に新しい才能を垣間見せてくれた。新しい世界との出会いの副産物が才能なら、もっとたくさんの世界をこども達には知ってほしいと思う。〈キッズ〉によって世界が広がり、そこで得たことが新たな世界と発想に繋がることを願いたい。

田子町教育委員会社会教育課課長補佐 伊藤 淳

人事異動により、4月1日付社会教育課に配属になった。引継ぎで〈キッズ・アートワールド あおもり2002〉の文字が目についた。配属になったばかりの私は、経緯もわからず「〈キッズ〉って何だ?」。皆目検討がつかないまま準備を進めなければならなかった。
「こどもが芸術の世界を楽しむイベント」を田子町で???…。それも、1つのワークショップに20人もの参加者を要する。期間も8月6日から8月18日までと長期戦だ。さらには8月のお盆の真っ最中。率直に「冗談じゃない。お盆はこの地域では一大行事である。町民の意識では盆前と正月前は一番多忙な時期である。こどもたちとて例外ではない。まして、アートという分野に何人興味があるのか。」と考えた。
しかしこうした懸念はすべて、我々大人の貧困な既成概念や常識にとらわれた被害妄想的なものであったことを、後に私は認めることになる。
準備の途中で気づいた。事前の下見で田子町を訪れた作家と話し合う機会を得た時である。最初は、「この作家(ひと)は何をしようとしているのか?」と穿鑿していたのだが、話を聞いているうちに「ああ、この人は何かをしようとしているのではなく、何ができるかを模索しているのだ」と分かった。それなら私たちと同じであると安堵した。そして彼らが「キッズ」にこだわるのは「既成概念を持たないこどもの感性そのものが実はアートである」と考えるからだ、と知った。
期間中、無理矢理集めたこどもたちは周囲の不安をよそに、みごとに「アートワールド」に引き込まれていった。そして、驚くほどの「感性」を発揮して大胆な「アート」を築いていった。こどもたちと対等に向き合った「作家」たち。そして、一つの空間で一体となった「アーティストたち」から不思議なパワーと懐かしい感覚を感じたのは私だけではなかったことだろう。
忘れかけていた「遊び心」を思い出させてくれた〈キッズ・アートワールド〉。私の「夏の思い出」でした。

南部町教育委員会社会教育課 課長補佐 谷内 恭介

〈キッズ・アート・ワールドあおもり2002〉が三戸・田子・南部で開催され、当町においても、多方面で御活躍されている著名なアーティストの方々とふれあう機会を与えてくださったことに大変感謝いたしております。参加されたこども達はみな大変喜んで活動し、夏休みの良い思い出になったようです。路上観察家である林丈二氏の「私選定『南部町「観光案外」絵葉書セット』作り」では、自分達の住んでいる地域を時間をかけて歩き、身近なものを見たり、発見したりする活動を行いました。自分の生活している場所にはこんなに素敵なところがあるんだなあと、あらためて再発見するよい機会になったようです。また、料理研究家である福田里香氏の「化石フードパーティー」では、果物を使った活動を行い、県南果樹センターでのブルーベリーや桃の収穫、また、地元の農家の方々からの果物の提供もありました。それから、地域の方々を招待しての活動もあり、2日間を通して地域の人たちや特産物とのふれあいを体験することができたようです。4日間と2日間、短い期間ではありましたが、南部町の特性を上手に生かした活動をアーティストの御二人は考えて下さったようです。そして、こどもたちにとってはいつまでも心に残る、充実した時間ではなかったかと感じています。



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