アートが作るネットワークとは? ― 「キッズ・アートワールドあおもり2002」が残したもの

アートが生み出す地域との絆

黒岩恭介(青森県美術館整備推進監)

美術館建設のプレイベントとして毎年開催されている〈キッズ・アートワールド あおもり〉も今年度で三回目を迎えた。前二回は青森市内を開催地とし、ようやく市内の商店街や地元の関係者などによる、このイベントに対する認知度も高まり、ある種の期待感、あるいは活動空間の提供などの協力の意識、が醸成され、ある程度、青森市内における美術館準備活動としての役割は果たしたように思われる。といってもこのまま市内で三回四回とやれば、それだけ市民(成長するこどもたちをもちろん含むのだが)と美術館との関係が密接になり、所期の目的も十分に果たされるのだろうが、われわれは全県下を活動領域とする、県の組織なので、青森市内だけにとどまることは許されない。われわれは今回はじめて、市外に出たのであった。
さて青森市外でこの事業を展開するにあたっては、市内で展開する場合と比べて、大きくその方法論を異にする。市内においては、この事業全体はわれわれの室が担い、補助的な仕事をボランティア等にお願いすればよかった。しかし青森市を離れてやるとなると、当然のことながら、開催地域との密接な協力が必要となる。作業の役割分担等、協同体制をしかなければならない。これはわれわれにとって初めての経験なので、地域との作業の進め方は試行錯誤であり、ノウハウの獲得を志向する、実験的な意味合いもあった。またこの協同作業は、今回限りの一時的なものに限定してはならない、との思いもあった。なぜなら、今後美術館活動を全県的に展開するにあたって、こういった協同作業の積み重ねが、施設的なネットワークおよび人的ネットワークの基盤となるからである。このネットワークはその名前のとおり、地域間のネットワークであり、県との双方向のネットワークである。今回の経験に基づいて、地域で独自に美術文化をテーマにした事業を企画する場合など、県との連動、協力など、このネットワークが役に立つはずである。今回の、三戸町、田子町、南部町との協同事業は、相互に初めての経験である以上、誤解や期待はずれが、お互いにあったことと思う。そのもっとも大きな原因は、現在活躍している現役アーティストが地域を訪れて、どのような活動を展開するのか、という具体的なイメージを共有することが、はなはだ困難だったという事実につきる。実際、事業が終わってから、このようなイベントだったなら、というか内容が分かっていたなら、あーすれば良かった、こうすれば良かったという、反省が各町から寄せられたことが、そのことを端的に物語っている。これは今後われわれが他の地域でこの〈キッズ・アートワールド あおもり〉を行うにあたって、解決しておかねばならない課題となるであろう。
最後に今回特に印象に残ったことを述べておこう。それはこどもたちとアーティストとの関係である。おそらくこどもたちを相手にするのが初めての体験であったというアーティストに、それは顕著に感じられた。すなわちこどもたちがアーティストに影響を与えるという、いわば逆転現象のことを言っているのである。なるほど、アーティストは社会や歴史に影響を与える存在である。しかしこどもたちと直接交流し、創造的な協同作業を行う過程で、こどもたちの方がかえってアーティストを触発する場面が多々発生したのである。おそらくこどもたちの方はそれ以上に、アーティストとまみえることによって、深い体験をしたはずであろうけれども。この事業の醍醐味はこういったこどもたちとアーティストの相互侵犯にあるのかもしれない。



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