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特集 Renewal 奈良美智展示室

画像:ニュー・ソウルハウスの改築作業風景2008年7月19日は青森県立美術館にとって記念すべき日となります。
ひとつは、開館当初から人気の高かった奈良美智展示室の「ニュー・ソウルハウス」のリニューアル。もうひとつは、当館のシンボル的存在でもある「あおもり犬」に直接触れられるようになるアプローチの開通です。
今回は、「あおもり犬」アプローチ (図1) についてご紹介します。
7番入り口横の階段を昇るとそこは実は展示室。
屋内の展示室Oというスペースから一望でき、屋外展示室と呼ばれています。今回は何も展示されていませんが、2007年常設展Ⅲの×Aプロジェクト「鈴木正治のわ」で展示スペースとして使用されました。次の展示が楽しみな空間です。
そして、ここから展示室Oを覗くと、岩井康賴氏の作品が。 (詳細は夏コレのページで。) 常設展示室の様子がちょっとのぞけちゃう、お得な空間となっています!
奥の階段を降りて、三内丸山の発掘現場をイメージしたトレンチへ、深く深く潜っていきます。「あおもり犬」にたどり着くまでの通路も、青森県立美術館の建築を体感できる、とっても面白い空間です。階段が続きますのでくれぐれも足下にはご注意下さいね!
トレンチの曲がり角を曲がると、「あおもり犬」。展示室内からの「あおもり犬」も寂しげでとても魅力的ですが、近づいてみると、また違った表情をみせてくれます。いちばんは、その大きさにびっくり!展示室内からも大きく見えていたはずなのに、近づくだけでこんなにも違うスケール感!!ぜひ皆さんも、青森県立美術館を、「あおもり犬」を体感し、いろんな表情を見つけてあげてくださいね。

画像:あおもり犬アプローチマップ
図1:あおもり犬アプローチアクセスマップ
※マップ上の矢印付き番号 (1-4) は、右の写真と対応しています。
 
  画像:あおもり犬アプローチ入り口建築風景
写真1:まだ工事中の階段
 
画像:あおもり犬アプローチから見た展示室O
写真2:展示室O
 
画像:屋外展示室
写真3:ここが屋外展示室
 
画像:あおもり犬とレンチへ続く通路
写真4:階段でトレンチへ
 

学芸員エッセイ
アーティストの“ホーム”として —奈良美智の場合—

青森県ゆかりの芸術家たちの可能性を探求しながら、郷土の文化の成熟を目指す青森県立美術館にとって、弘前市に生まれ、国内外で精力的に発表を続ける奈良美智は、常にその動向を視野に入れておきたいアーティストの一人だ。青森県立美術館では、現在、奈良美智の仕事を、三つの形で紹介している。
一つは、美術館の西側にある屋外スペースに設置された巨大な犬の立体作品「あおもり犬」。これは美術館の依頼を受けて、アーティストがこの空間のために制作したものだ。建築空間との調和によって成立するこうした作品の発注に応えるには、建築の特質やそのコンセプトを深く理解しなければならない。奈良は作品を構想する段階で、建築家の青木淳と何度も打合せ、少女の立像など、いくつかのアイデアの変遷を経た後に、この白い犬の半身像を実現するにいたった。隣県の「秋田犬」を意識した「あおもり犬」というユーモラスなネーミングは、作家本人の提案によっている。大きな身体で、静かに瞑想するような「あおもり犬」のたたずまいからは、日本古来の大仏に通じる底知れぬ包容力が感じられる。
屋外スペースにもう一つ、奈良の作品を見ることができる。レストランやミュージアムショップの裏側に位置する創作ヤードとよばれる野外空間の中央に建てられた「八角堂」。4メートルの高さの土壁の上に、八角形の煉瓦作りの構造体が、デコレーションケーキのように重なっている。螺旋状の階段を上りつめて、青天井の小さな八角形の空間に出ると、ガラスケースに収められた奈良の6点の皿型の絵、「ShallowPuddlesI/浅い水たまりI」に取り囲まれる。建築の構造自体が奈良のプランに基づいて作られているこの「八角堂」は、内部の展示物を含む建物全体が、一つの奈良の作品だ。訪れる人たちは、宗教建築を想わせる八角形の構造や、迷宮のような螺旋状の階段など、建築的演出が生み出す静謐で神秘的な空間の中で、奈良の作品とじっくりと向き合うことができる。
奈良は、近年、大阪を拠点に活動するクリエーター集団「graf (グラフ)」との協働で、廃材で造った小屋を主体としたシリーズを展開している。美術館の地下2階にはその小屋シリーズの一環をなす「ニュー・ソウルハウス」が設置されている。2005年にソウルで開催された展覧会のために制作された小屋の部材をそのまま用いて造られたこの小屋の内部には、90年代を中心とする約160点の当館の奈良美智コレクションから、作家自身のセレクションによる作品の数々が展示されている。
その「ニュー・ソウルハウス」の一部に、作家のアトリエを想わせる小さなドローイング部屋が造りつけられている。壁にはドローイングが無造作に紙テープで貼られ、机には画材やオモチャが散乱していて、あたかも、つい先ほどまで奈良がここで仕事をしていたかのようだ。「いつかまたここに奈良がもどってくるのではないか」、見る者はそんな期待を抱かずにはいられない。そして、その期待は、奈良美智というアーティストが制作を続けている限り、裏切られることはない。
この夏、「ニュー・ソウルハウス」が改築され、中に展示される作品も入れ変わる。つまり、再び奈良は、grafとともに美術館のこの場所に帰ってきて制作を続けるのだ。さらに「あおもり犬」には新たな見方を可能にする環境が整備され、将来、「八角堂」内も展示替えを行う予定だ。こうして、どれ一つとってみても完結した作品はなく、時を経るごとに新しい魅力が付け加えられていく。青森県立美術館は、奈良美智というアーティストの“ホーム”として、アーティストの歩みを追いながら、同時代の美術ならではのダイナミズムを感じさせる刺激的な展示に、これからも挑戦していく。

高橋しげみ (学芸員)

 

展覧会 夏コレ

青森の四季を描く Four Seasons in Aomori

夏のコレクション展、開催中です。
今回の特集テーマは「青森の四季を描く」。青森という土地は、季節により色彩がダイナミックに変化する美しい自然に恵まれています。こうした風土に魅せられ、多くの芸術家が青森の風土から多くのインスピレーションを得て、作品を制作しました。今展では、そのなかから4人の美術家の作品を中心に紹介します。
ガラス作家・石井康治は千葉県生まれですが、1991年から三内丸山の地に工房を構えて制作をおこない、青森の自然から得たイメージを、色ガラスという素材を用いて作品の中に留めようとした作家でした。1996年に急逝するまで、青森の自然は彼の創作の源泉でした。今回は、ご遺族により当館に寄託された150点余の作品の中から約40点の作品を紹介し、石井作品に表現された青森の自然をご覧いただきます。
その他、雪国の春を待つ心をテーマに描き続け、夢幻の世界と現実の世界のはざまを漂う独特の画風で知られる、弘前出身の日本画家・工藤甲人、真っ白な雪の世界がよく似合いそうな、青を基調とするカラフルな色面構成で知られる弘前出身の画家・佐野ぬい、ふるさと青森に対する哀しくも愛おしい想いを板画や倭画に託してユニークな世界を創り上げた、青森を代表する芸術家・棟方志功の作品などを展示。それぞれの作品から、その展示空間から、雪深い「反」の精神に培われた青森の風土を体感していただければと思います。

×Aプロジェクトno.5
岩井康賴:時と意識の景~下北尻屋岬、そして津軽追良瀬

×Aプロジェクト (バイエープロジェクト) :
当館のコレクションと建築空間の新たな魅力を引き出すための継続的プロジェクト

弘前市在住の美術家・岩井康賴が当館の展示空間と対峙します。堅実な描写とヴァルール (色価) の安定した色調に特徴を持つ絵画、不可思議な生物が空間に漂う緻密な銅版画、尻屋崎や深浦で採集された流木等を構成したレリーフ等、表現形式の幅は広いものの、一貫して自己の表現と真摯に向き合い続けてきた岩井康賴。本プロジェクトでは、近年積極的に取り組んでいるレリーフ作品を中心に空間を構成します。
太陽の日ざし、鮮やかな木々の緑、祭りの山車・・・色彩豊かな夏に向かうこの季節、作品をとおして青森の四季に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


夏のコレクション展ー青森の四季を描く
2008年6月25日 (水) - 9月21日 (日) ※9月8日 (月) 休館
詳細情報
常設展観覧料


 

展覧会 大ナポレオン展

ナポレオンという名前を聞いて思い浮かぶのはどんなイメージでしょうか。
200年ほど前のヨーロッパで活躍した有名な人物、颯爽と馬にまたがった英雄、或いは「余の辞書に不可能の文字はない」などの名ゼリフの数々、睡眠時間が一日3時間だったなどのエピソード。そして、あのパリの凱旋門をつくったのも、ルーブル美術館を整備したのもナポレオンです。今回の展覧会では、絵画、彫刻、工芸品、ナポレオン直筆の書類、さらにナポレオンのトレードマークであった帽子や当時の宮廷で女性達を美しく飾ったジュエリーなど、100点を超える展示品で、ヨーロッパ近代史の風雲児となった彼の波瀾万丈の生涯をたどります。
18世紀後半、コルシカ島に生まれたナポレオン・ボナパルトは、フランスの士官学校を出て軍人となります。折しも1789年にフランス革命が勃発。激しく揺れ動く社会情勢のなかで、いくつもの軍事的、政治的な危機を乗り越え、混乱を収める英雄として人々の支持を集めてゆき、ついに皇帝の座に就きます。他の国々の革命への攻撃からフランスを守るための戦いは、やがて革命の精神を広めるという理念の元、積極的な対外戦争へと転換してゆきますが、うち続く戦いの中でついにナポレオン常勝神話も破れ、1814年には皇帝を退位させられて、エルバ島に退きます。翌年、政治的混乱に乗じてパリに凱旋するものの、世にいう「百日天下」に終わり、今度は大西洋上の孤島セント・ヘレナ島に流され、1821年にこの地で世を去ります。
ナポレオンの名ゼリフの一つに、「それにしても私の人生は何という小説であろう!」というものがあります。彼は流刑の地で回想録の口述筆記を行い、自らの人生をまさに小説のような一大叙事詩として残しました。回想録は彼の死後出版されて大きな反響を呼び、その死から20年後、遺骸はパリへと迎えられます。
展覧会には、絵画や彫刻など、生涯の様々な時期のナポレオン像が20点程出品されています。初々しく、繊細さを秘めた青年像、アルプスを越える生気溢れる英雄、威厳に満ちた皇帝、そして運命が暗転してゆく中、一人物思いに沈む姿・・・。会場の最後には、ナポレオンのデスマスクがあります。 (デスマスクは、亡くなって間もない遺骸の顔を石膏などで型取りしたもので、西洋には古くから偉人のデスマスクを作成する事例があります。) 最後の眠りに就いた英雄の顔は、皆さんの心にどんな思いを呼び起こすでしょうか。

大ナポレオン展 -文化の光彩と精神の遺産-
2008年7月30日 (水) – 9月7日 (日) ※休館日:なし
詳細情報


 

舞台芸術 制作の現場から。

青森県日韓演劇交流事業「青森の雨」+プレ事業「青春礼讃」

青森県日韓演劇交流事業は、青森県の俳優・スタッフと韓国の劇団コルモッキルが共同で演劇を制作する事業です。制作の大まかな流れを紹介すると、青森側出演者のオーディション→顔合わせ→各国での稽古→合同稽古→青森・東京・ソウルでの上演となります。
さて、6月15日は、両国の俳優・スタッフの初顔合わせが行われました。5月に開催されたオーディションの合格者も美術館に集結。みんな、緊張と少しの不安と、そして昨日まで知らなかった人と知り合えることの喜びが入り交じった顔をしていました。脚本を担当するパク・グニョンさんからあらすじの説明があり、今回の出演者ならではの脚本を書くための取材などが行われました。その、大変気になるあらすじは・・・。
「舞台は、青森から函館までのフェリー待合室。外は嵐。それぞれの理由から出港を待っている4家族。実は、彼らは様々な家族の問題を抱えている・・・。嵐の中で、時折現れる過去の人々やエピソード。問題を抱えた彼らや彼らの心が、様々な出会いによって変化していく姿を描いていく。」というものでした。
翌日には、記者発表が行われ、パクさんや、長谷川孝治青森県立美術館舞台芸術総監督から、熱い抱負などが話されました。
今後は、パクさんの脚本をもとに各国でそれぞれ稽古が行われ、8月初旬のプレ事業「青春礼讃」 (コルモッキルの単独公演) に続いて、本格的な合同稽古が青森市で行われます。そして、本番を迎えるわけですが、その間、舞台上の登場人物達が、様々な出会いで変化していくように、参加者自身やお互いの関係も変化していくことでしょう。
両国のスタッフ・俳優が「青森の雨」をどのように仕上げていくのか、ぜひ、足をお運び頂ければ幸いです。
・・・韓国語が分からないから、不安。と言う方もご安心下さい。字幕付きの上演となります。


  • 「青春礼讃」 (劇団コルモッキル)
    2008年8月7日 (木) 14:008日 (金) 14:00/19:009日 (土) 14:00/19:00
  • 「青森の雨」 (青森公演)
    2008年8月30日 (土) 14:00/19:0031日 (日) 14:00
    ※「青森の雨」の東京公演、ソウル公演につきましては、事務局 (017-783-5243) までお問い合わせ下さい。

 

 

ラウンジ 美術館情報いろいろ

メンバーシッププログラム

コンサートやダンスアレコにもご優待!
メンバーシップ会員は、ピアノコンサートダンスアレコ日韓演劇「青森の雨」の鑑賞チケットを、一般・学生:前売料金の100円引き/ペアチケット:前売料金の200円引きにてお買い求めいただけます。
割引チケットは、事前にご予約いただき、当日美術館にお越しいただいた際に料金と引き替えでお渡しします。ご予約は美術館総合案内カウンターもしくはお電話にて承ります。

交流会開催!
会員のみなさま限定のプログラム「ミュージアム・ラウンジ」を開催します。
会員のみなさまと美術館スタッフの交流会や、バックヤードツアーも!日時は別途お知らせします。乞うご期待!

会員募集中!
特典:
常設展示がいつでも無料さまざまなイベントが特別料金に!
ショップやカフェでの5%割引会報誌のご送付
一般会員:3,000円/学生会員:2,000円/特別会員:10,000円

詳細は、メンバーシッププログラムのページ又は美術館「メンバーシッププログラム担当」まで。


キッズルーム・フリーアトリエ

「わらはんど」の積み木を入荷しました!
キッズルームに、4月にオープンした東京おもちゃ美術館のオリジナルおもちゃを開発した「わらはんど」 (あおもり木製玩具研究会) の積み木、「森の積木」と「うづくり積木」を入荷しました。
「わらはんど」のポリシーはこどもも、そしておとなになっても楽しめるおもちゃを作ること。「森の積木」は1つ1つに材料となった木の名前が刻まれていて、それぞれの木のぬくもりを感じることができるし、「うづくり積木」は青森スギをつかったシンプルな積み木で、これを思い思いにたくさん重ねて大きな作品をつくることができます。木が重なる音もからんとここち良い。さあみんなで一緒にあそぼう!